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第4話
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「あ、アイツらって男同士で...」
「付き合ってるけど何か?あ、恋人いない人には恋人の存在を公言できる喜びは分かんないか。」
「はぁっ!?」
3年生の10月にもなれば大分偏見の目が薄くなる、というか話題性が薄くなってきている。でも未だに俺たちのことをひそひそ笑うやつはいる。でもあの日大泣きして千晶に慰めてもらった俺はだいぶ意地の悪い返事が出来るまでになった。こっちを傷つけるんなら傷つけ返されても文句は言えまい。
「奈月、大分容赦ない言い方出来る様になったんだね。」
「お、幸だ。幸の言い方参考にしてるんだけど、結構辛辣になったでしょ。」
「ちょっと、聞き捨てならないんだけど。」
幸は俺たちが付き合いだして、偏見の目の中心にいた時からずっと俺たちの見方でいてくれる。いや、正確に言えば見方でいてくれるというよりは、いい意味で興味を持っていない。2年の秋頃、やたら面倒くさい絡まれ方をしたことがあった。
『お前らさ、何で男同士なの?やっぱどっちもホモ?』
『マジで?あ、でも確かにどっちも顔はいいもんなー。』
『じゃあ顔で選んだって?うっわ、ホモで面食い?引くわー。』
『アンタら自分の顔面偏差値低いからってひがむなよ。』
俺たちが面倒くさいなと黙っていた時、割り込んできたのは幸だった。幸は腕組みをして小首をかしげながらいちゃもんを付けていた相手にそう言うと、相手は幸の圧倒的顔面偏差値に面食らうしかないようだった。
『んだよ!こいつらが気持ちわりぃって話だろうが!』
『気持ち悪い具体的内容が出て来ないから顔の話してたんでしょ?じゃあそれって、2人が気持ち悪いんじゃなくて2人のことひがんでるだけじゃん。幸せそうなやつが憎いからいちゃもん付けるって、どんな通り魔だよって話。』
『~!もう行こうぜ!』
幸は相手に完全なる論破をかますと俺たちには目もくれずスタスタと歩いて行った。その時俺は、幸は俺たちをかばうためでも助けるためでもなくただ自分にとって目についたから口を出したまでなんだと気づいた。今まで俺たちに気持ち悪いと、ありえないと言う人も多くいたけど逆に擁護してくれる人も少数だけどいた。けどその少数人は本当に俺たちのことを祝福してくれているのか実際のところは良く分からなかった。でも幸は、本当に自分の気持ちの赴くままに言葉を発する人で媚びるわけでも否定するわけでもない。それがこの時の俺にとってどこかものすごくありがたかった。
「奈月?」
「あ、ごめん。幸にはホントに感謝してるんだぜー?」
「ふーん。じゃあジュース奢ってよ。」
「嘘、そういう返しするの?」
「奈月、奢ってあげれば?」
「千晶までー!」
俺は千晶と幸と、今は心から笑っていられる。大好きな人と一緒にいられて、何も言わずに隣にいてくれる友人といられて、何も不安なことなんてない。でもそんなときもそろそろ終わりだ。10月にもなればほとんどの人は進路が決まり、大学受験が終わった人すら出てくる。高校を卒業すれば今のようにはいかないし、周りの空気もまた一からやり直しだ。それに千晶がこの先の進路についてどう考えているか俺はまだ知らない。これからも一緒にいられるのか、離れてしまうのか、話し合わなきゃいけないと分かってはいるんだけど、どこか怖くて切り出せなかった。でもいい加減話さないと、2人の将来について。
「付き合ってるけど何か?あ、恋人いない人には恋人の存在を公言できる喜びは分かんないか。」
「はぁっ!?」
3年生の10月にもなれば大分偏見の目が薄くなる、というか話題性が薄くなってきている。でも未だに俺たちのことをひそひそ笑うやつはいる。でもあの日大泣きして千晶に慰めてもらった俺はだいぶ意地の悪い返事が出来るまでになった。こっちを傷つけるんなら傷つけ返されても文句は言えまい。
「奈月、大分容赦ない言い方出来る様になったんだね。」
「お、幸だ。幸の言い方参考にしてるんだけど、結構辛辣になったでしょ。」
「ちょっと、聞き捨てならないんだけど。」
幸は俺たちが付き合いだして、偏見の目の中心にいた時からずっと俺たちの見方でいてくれる。いや、正確に言えば見方でいてくれるというよりは、いい意味で興味を持っていない。2年の秋頃、やたら面倒くさい絡まれ方をしたことがあった。
『お前らさ、何で男同士なの?やっぱどっちもホモ?』
『マジで?あ、でも確かにどっちも顔はいいもんなー。』
『じゃあ顔で選んだって?うっわ、ホモで面食い?引くわー。』
『アンタら自分の顔面偏差値低いからってひがむなよ。』
俺たちが面倒くさいなと黙っていた時、割り込んできたのは幸だった。幸は腕組みをして小首をかしげながらいちゃもんを付けていた相手にそう言うと、相手は幸の圧倒的顔面偏差値に面食らうしかないようだった。
『んだよ!こいつらが気持ちわりぃって話だろうが!』
『気持ち悪い具体的内容が出て来ないから顔の話してたんでしょ?じゃあそれって、2人が気持ち悪いんじゃなくて2人のことひがんでるだけじゃん。幸せそうなやつが憎いからいちゃもん付けるって、どんな通り魔だよって話。』
『~!もう行こうぜ!』
幸は相手に完全なる論破をかますと俺たちには目もくれずスタスタと歩いて行った。その時俺は、幸は俺たちをかばうためでも助けるためでもなくただ自分にとって目についたから口を出したまでなんだと気づいた。今まで俺たちに気持ち悪いと、ありえないと言う人も多くいたけど逆に擁護してくれる人も少数だけどいた。けどその少数人は本当に俺たちのことを祝福してくれているのか実際のところは良く分からなかった。でも幸は、本当に自分の気持ちの赴くままに言葉を発する人で媚びるわけでも否定するわけでもない。それがこの時の俺にとってどこかものすごくありがたかった。
「奈月?」
「あ、ごめん。幸にはホントに感謝してるんだぜー?」
「ふーん。じゃあジュース奢ってよ。」
「嘘、そういう返しするの?」
「奈月、奢ってあげれば?」
「千晶までー!」
俺は千晶と幸と、今は心から笑っていられる。大好きな人と一緒にいられて、何も言わずに隣にいてくれる友人といられて、何も不安なことなんてない。でもそんなときもそろそろ終わりだ。10月にもなればほとんどの人は進路が決まり、大学受験が終わった人すら出てくる。高校を卒業すれば今のようにはいかないし、周りの空気もまた一からやり直しだ。それに千晶がこの先の進路についてどう考えているか俺はまだ知らない。これからも一緒にいられるのか、離れてしまうのか、話し合わなきゃいけないと分かってはいるんだけど、どこか怖くて切り出せなかった。でもいい加減話さないと、2人の将来について。
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