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一学期

BLの話題で盛り上がれるのが真の仲良し

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 今日も帰り道。隣を歩く緒方優羽は、ちょっとニヤニヤしながら歩く。この顔は、昨日何か面白い漫画もしくはアニメを見て、その感想を僕に言わんとしてる顔だ。受けて立とう。

「聞いてよ、西山くん!昨日読んだ、どエロイBLが性癖にドストライクだったんだよ!」

前言撤回、前言撤回!受けて立たない!受けて立てない!さすがに他人の性癖を受け止めてあげる度量は俺にはないし、同性とならまだしも、異性とそういう話を出来る人間じゃない。一刻も早く引いてほしいけど、引いてくれないんだろうな。一応抵抗はするけど。

「えーっと、緒方さん?そういう話はあんまり男の人としない方が良いと思うのですが。」

「西山くんにならいいよ。」

急にデレないでほしい、男はそういうの弱いんだから。自分にだけっていう甘いセリフに、なんでも言うこと聞いてあげたくなっちゃうんだから。

「えー...あー、俺そもそもBLとかよくわかんないんだけど、何?エロいシーンとかあるの?」

「あるよ!何ならBLはエロを追求するためにあるんだよ!例外もあるけど。」

例外もあるなら、その例外の作品に今の言い方はだいぶ失礼だと思う。あー、なんとか話題を変えたかったけど、俺の方から話聞く姿勢に入ってしまった。もうこれは腹をくくって、話に付き合うしかない。

「へぇ...。でもそんなエロいシーンとか、見るの抵抗ないの?」

「ないよ?BLはほぼエロ本みたいなものだからね。BL読むってことは、そう言うことだから。例外もあるけど。」

だから、その言い方だと例外に、以下略。というか、高校生の男女がエロいエロいって連呼するのはあんま良くないと思う。BLからは逃げられないだろうけど、エロからくらいは話をそらしたい。

「あー、あの、BLって、少女漫画というか、ノーマルな恋愛ものと何か違うの?というか、BLじゃないといけない理由って...?」

「少女漫画はイライラするけど、BLになればイライラしない。」

「なんという暴論。」

そうだった。以前彼女は少女漫画に遺憾の愚痴を吐き散らしたばかりだった。というか、なんで少女漫画だとイライラするものがBLになるとイライラしないんだ。相手が男か女かくらいの違いしかないように思うけど、違うのか。

「他にもあるよ。BLだと強姦が萌えポイント!対女だと犯罪になるのが、対男だと萌えになるの、いいよね。」

「いや男相手だろうが相手が苦痛に思った場合は強姦、性犯罪になるし、何ならそのケースで最近ニュースになってるのよく見るよ。」

「嘘!」

「嘘じゃない、本当。だてに学年主席として世の情勢を知るために、ニュースみたり新聞読んだりしてないよ。」

「なんということだ...。私が萌えていたものが現実世界では犯罪になる...だと!?やはり現実世界は私には合わない。二次元こそ至高...!」

何か言いだした。自分の信じていたものが根底から覆されたとき、人はこんなにも中二臭くなってしまうのか。いや、彼女が特殊なだけか。

「ふー...気を取り直してBLのいいところだけど。」

「続けるんだ。」

「続けるよ!自分の信じたものが壊された衝撃よりも、布教をしたい欲求の方が強いからね!で、BLのいいとこだけど、供給の多いところ!これはやっぱ推しポイントだと思うんだよ。」

「供給が多い...?え、まさか現実世界で男同士で馬鹿騒ぎしてるのを見て、BLに脳内変換できるとかそういうこと?腐女子は妄想が得意だって聞くけど。」

「違う。それなら抱き着いたり平気でする百合の方が供給多いし、それに私、二次元特化型だからナマモノは苦手なの。」

今おそらくオタクワードであろう理解不能な単語が一気に飛び出して、半分くらい何言ってんのか分かんなかった。オタクって特有の言語使うんだな。オタク語が話せる人は日本語と合わせてバイリンガルでいいんじゃないか?

「青い鳥をやってる人とかなら、検索かけただけですぐ出てくるんだよ!自分好みのエロい画像が!ほら、男の人だって、毎回違ったオカズを探すの大変でしょ?動画ならお金とかいるし。でもBLは検索ひとつでいくらでも出てくるから。これは供給過多でしょ!」

なんで最終的に猥談に戻ってくるんだ、せっかく話そらせてたのに。というか、仮にもJKがオカズとか言うな。それに、なんで全人類が二次元を愛していると思ってるんだ。そうじゃない人だっているだろ。とりあえず事を荒立てないように、返事は曖昧に返すことにする。

「あー...はいはい、そうだね。」

「生返事だなー。」

「普通の男子高校生は女子高生と猥談なんてしたくないんだよ。緒方さんはなんて言うか、恥じらいないの?」

「?西山君以外とはこんな話しないよ。」

緒方さんは、こういうこと本当に何でもないかのようにさらっと言う。正直ドキッとしなくもないから、本当にやめてほしい。本当に。

「あ、もう交差点かー。残念。じゃあね、また明日。」

「ああ、うん。バイバイ。」

緒方さんは俺と別れてすたすたと歩きだした。俺と歩いている時よりも何倍も速く。俺は、彼女のそういったちょっとしたところに、本当に勘弁してほしいと思ってる。けど同時に、俺も自転車を押して歩いたりしてるから、お互い様かな、なんて思ったりもする。
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