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名探偵の娘
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ここはこの国唯一の幼小中高大一貫の私立学校、『暁学園』。幼稚園児から大学生までが一つの敷地内に通う全国的にも珍しい学園。それぞれキャンパスは決められており、南西が幼稚園、そこから時計周りに北西が小学校、北東が中学校、南東が高等学校になっており、この四つのキャンパスが囲む中央に大学のキャンパスがある。それぞれのキャンパスに入り口はあるものの、南に大きな正門があるためほとんどの生徒はそこから入り、大学のキャンパスを通って自分の通うキャンパスへ向かう。キャンパスを決められているとはいっても基本どの校舎にも入ることは自由で、大学校舎に幼稚園児がいることもよくある。
そんな暁学園、大学校舎一階の角に少し不思議なサークルがある。
これはそのサークルに在籍する生徒と、そこに訪れる同じく生徒たちの話。
「ねぇぇぇぇ木霊ちゃん、暇だよぉぉぉ。」
「暇なら課題のレポートやったらどうですか。あるんでしょ。」
ここは暁学園大学キャンパスの校舎一階の角、コペルニクスサークル。元は学園のために奉仕活動をするボランティア活動をしていたそうですが、このソファで寝転んで課題が面倒くさいと駄々をこねる先輩がサークル長になってからは一度もボランティアなんてしていません。
「なんでレポートなんてしなくちゃいけないのさ!めんどくさい!ボクは勉強するために大学に入ったんじゃないんだぞ!」
「大学は学びたいと志願するものだけが入学するところですよ。勉強したくないなら中退すればいいんじゃないですか?」
このしつこくレポート課題から逃れようとしているボクっ子先輩は要天馬。実は彼女、父親はこの国じゃ知らない人はいないレベルの有名人、名探偵の要翼なのです。警察も手こずる難解な事件をいくつも解決し、その謝礼金をすべて施設等に寄付をするという頭も人間も出来た男性、それが彼女の父親ですが、ソファに寝転んでクッションに顔をうずめる彼女の姿からは本当に血のつながりがあるのか疑問に思ってしまいます。
「はあぁぁぁぁぁあ、木霊ちゃんがうるさいからレポートしようかなー。面倒だなー。」
先輩はそう言うとやっとソファに座りなおしてパソコンを開きます。私はやっとか、と思いつつ自分のレポート課題を進めます。
私の名前は白輝木霊。要天馬の一つ下の後輩です。先輩とはこの学園の小学校の頃からの関係で、昔はある程度敬意をもって過ごしていましたが、今はもう敬意などありません。敬語は使っていますが、使ってるだけです。言いたいことも忖度無しで言うようにしているのですが、それが逆に先輩は接しやすいそうです。
「よおぉぉぉぉしおっけー!!出来た!」
数分後、先輩は開放感からか大きな声を上げました。私は「うるさいですよ」といいつつ先輩のパソコンをちらりと見ると、そこそこの分量でそこそこの内容のものが書きあがっていました。先輩は基本的に面倒くさがりでサボりたがりですが、やらなければならないことはしっかりし、なおかつ取り掛かると集中力が途切れることはありません。つまりやれば出来るタイプ。最初から文句言わずやり始めればいいのですが。
「じゃあ漫画読も。こないだ読んだとこもっかい読みたかったんだよね~。」
もう一つ、先輩を語る上で忘れてはいけないのがオタクであること。先輩は親が有名ということもあり、昔から知らない人に話しかけられたりしてストレスを感じることが多かったらしく、それらを発散するために始めたのが推し活だそうで、今では漫画やアニメが生きがいなんだそう。
プルルルル
先輩が漫画を開きかけたタイミングで先輩のスマホが鳴りました。先輩はすぐに出ると楽しそうに話しだします。会話の内容からして例の父親からのようでした。
電話を切ると、
「今日のご飯すき焼きなんだって、らっきー。」
と私に笑顔を向けます。先輩は家族と本当に仲が良く、外面だけとかそんなこともなく、こういうちょっとした仕草から仲の良さが伝わってきます。
「先輩、本当に家族と仲いいですよね。親が有名だとコンプレックスとか感じそうなものですけど。」
「ん~?そりゃボクも昔はそれなりにコンプレックスだったよ。でもさ、漫画がボクを変えてくれる。」
そう言うと先輩は私に一冊の漫画を渡し、布教するかのように話し出します。
「これ、おすすめ『暗殺教室』!この中にこんなセリフがある。”学歴や肩書なんて関係ない。どぶ川に住もうが清流に住もうが前に泳げば魚は美しく育つのです” 一文字一句同じってわけじゃないけどこんな感じの言葉。親がなんだって関係ないんだよ。名探偵の娘だろうがただの要天馬だろうが関係ない。ボクはボクらしく生きるよ。お父さんがただのサラリーマンだろうが超有名名探偵だろうが、お父さんのことが大好きだからそう接する、それだけ。」
先輩はアニメや漫画にすぐ影響される。でもそれが確実に自分の人生に良い方向に影響を与えて、今の先輩がいる。私はこの面倒くさがりでオタクで、すぐ影響されて自分の”好き”にまっすぐな先輩が結構好きなのです。
そんな暁学園、大学校舎一階の角に少し不思議なサークルがある。
これはそのサークルに在籍する生徒と、そこに訪れる同じく生徒たちの話。
「ねぇぇぇぇ木霊ちゃん、暇だよぉぉぉ。」
「暇なら課題のレポートやったらどうですか。あるんでしょ。」
ここは暁学園大学キャンパスの校舎一階の角、コペルニクスサークル。元は学園のために奉仕活動をするボランティア活動をしていたそうですが、このソファで寝転んで課題が面倒くさいと駄々をこねる先輩がサークル長になってからは一度もボランティアなんてしていません。
「なんでレポートなんてしなくちゃいけないのさ!めんどくさい!ボクは勉強するために大学に入ったんじゃないんだぞ!」
「大学は学びたいと志願するものだけが入学するところですよ。勉強したくないなら中退すればいいんじゃないですか?」
このしつこくレポート課題から逃れようとしているボクっ子先輩は要天馬。実は彼女、父親はこの国じゃ知らない人はいないレベルの有名人、名探偵の要翼なのです。警察も手こずる難解な事件をいくつも解決し、その謝礼金をすべて施設等に寄付をするという頭も人間も出来た男性、それが彼女の父親ですが、ソファに寝転んでクッションに顔をうずめる彼女の姿からは本当に血のつながりがあるのか疑問に思ってしまいます。
「はあぁぁぁぁぁあ、木霊ちゃんがうるさいからレポートしようかなー。面倒だなー。」
先輩はそう言うとやっとソファに座りなおしてパソコンを開きます。私はやっとか、と思いつつ自分のレポート課題を進めます。
私の名前は白輝木霊。要天馬の一つ下の後輩です。先輩とはこの学園の小学校の頃からの関係で、昔はある程度敬意をもって過ごしていましたが、今はもう敬意などありません。敬語は使っていますが、使ってるだけです。言いたいことも忖度無しで言うようにしているのですが、それが逆に先輩は接しやすいそうです。
「よおぉぉぉぉしおっけー!!出来た!」
数分後、先輩は開放感からか大きな声を上げました。私は「うるさいですよ」といいつつ先輩のパソコンをちらりと見ると、そこそこの分量でそこそこの内容のものが書きあがっていました。先輩は基本的に面倒くさがりでサボりたがりですが、やらなければならないことはしっかりし、なおかつ取り掛かると集中力が途切れることはありません。つまりやれば出来るタイプ。最初から文句言わずやり始めればいいのですが。
「じゃあ漫画読も。こないだ読んだとこもっかい読みたかったんだよね~。」
もう一つ、先輩を語る上で忘れてはいけないのがオタクであること。先輩は親が有名ということもあり、昔から知らない人に話しかけられたりしてストレスを感じることが多かったらしく、それらを発散するために始めたのが推し活だそうで、今では漫画やアニメが生きがいなんだそう。
プルルルル
先輩が漫画を開きかけたタイミングで先輩のスマホが鳴りました。先輩はすぐに出ると楽しそうに話しだします。会話の内容からして例の父親からのようでした。
電話を切ると、
「今日のご飯すき焼きなんだって、らっきー。」
と私に笑顔を向けます。先輩は家族と本当に仲が良く、外面だけとかそんなこともなく、こういうちょっとした仕草から仲の良さが伝わってきます。
「先輩、本当に家族と仲いいですよね。親が有名だとコンプレックスとか感じそうなものですけど。」
「ん~?そりゃボクも昔はそれなりにコンプレックスだったよ。でもさ、漫画がボクを変えてくれる。」
そう言うと先輩は私に一冊の漫画を渡し、布教するかのように話し出します。
「これ、おすすめ『暗殺教室』!この中にこんなセリフがある。”学歴や肩書なんて関係ない。どぶ川に住もうが清流に住もうが前に泳げば魚は美しく育つのです” 一文字一句同じってわけじゃないけどこんな感じの言葉。親がなんだって関係ないんだよ。名探偵の娘だろうがただの要天馬だろうが関係ない。ボクはボクらしく生きるよ。お父さんがただのサラリーマンだろうが超有名名探偵だろうが、お父さんのことが大好きだからそう接する、それだけ。」
先輩はアニメや漫画にすぐ影響される。でもそれが確実に自分の人生に良い方向に影響を与えて、今の先輩がいる。私はこの面倒くさがりでオタクで、すぐ影響されて自分の”好き”にまっすぐな先輩が結構好きなのです。
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