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季節話
龍神様とみかん
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冬を感じる風も吹き始めた頃、龍平と龍神様は屋敷の部屋でぬくぬくと座っておりました。
「はぁ~外も大分寒くなってきましたし、部屋の中は温かくて心が落ち着きますね。」
「そうだのう。未来ではこたつという暖房器具で温まるそうだぞぉ。」
「こたつ...ですか?どんなものです?」
「ふむ...やってみるかのう。」
龍神様はそう言うと、机の上に布団を広げ、その上から木の板を置きました。現代で言うところのこたつの完成です。
「ほぉ...これがこたつですか。布団をかぶせるとは...。」
「本当はこの中にひーたーが入っているのだが...まあいいだろう。」
「確かに、温かい空気が留まってあったかくなる気がしますね。」
「だろう。む、そうだ、こたつと言えばあれだなぁ。ちょっと待っておれ。」
「あれ?」
龍神様は一度席を外したかと思うとすぐに戻ってきました。手には橙色の果実を山盛りに持っています。」
「これは...みかんですか?」
「そうだぁ。未来ではこたつに入ってみかんを食べるのが日本人の冬の過ごし方だぁ。」
「へぇ...未来ではそんな風習があるんですね。」
「どれ、剥いてやったぞ。ほれ。」
「いや自分で食べれるんで。」
龍神様にあーんと口元まで向けられたみかんを指でつまむと、龍平はひょいと口に放りました。そのみかんはとても甘く、思わず顔がほころぶ龍平です。あーんを断られた龍神様はすこしばかり落ち込みましたが、龍平の顔を見てもう満足です。
「龍平も私に剥いてくれんかぁ?」
「自分で剥けばいいでしょう...と言いたいところですけど、まあ今は気分がいいので剥いてあげますよ。...はい剥けた。どうぞ。」
「あーんは...」
「しないですね。手で取って下さい。」
「むぅ。だが龍平が剥いてくれただけでも嬉しいぞぉ。...む、甘くておいしいのぉ。」
龍神様と龍平はしばらくみかんを食べ進めていましたが、ふと龍神様がみかんの皮をいじり始めました。
「何しているんです?」
「ふはは、みかんの皮で文字でも作ろうかと...ほれ、出来たぞぉ。」
「なになに...あいしてって何言わすんですか!」
「むぅ、読んでみろと言えば私に愛の言葉を言ってくれるかと思ったのだがぁ。」
龍平に『愛してる』と言ってもらうことは今までも散々試して失敗に終わっていますが、文字を呼んでもらう体でならと試した龍神様。しかしその作戦も失敗に終わりました。
「全くくだらない。俺、十分温まったので畑行ってきますよ。体動かしてきます。」
「そうかぁ。では愛する龍平のために温まる汁物でも作って待っているとしよう。」
「はいはい、汁物はありがたくいただきますよ。」
そう軽口を叩いて外に出て行った龍平。龍平が今まで座っていたところに落ちているみかんの皮が故意か偶然か、ハート型になっていたことには龍平も龍神様も気づいていないのでした。
「はぁ~外も大分寒くなってきましたし、部屋の中は温かくて心が落ち着きますね。」
「そうだのう。未来ではこたつという暖房器具で温まるそうだぞぉ。」
「こたつ...ですか?どんなものです?」
「ふむ...やってみるかのう。」
龍神様はそう言うと、机の上に布団を広げ、その上から木の板を置きました。現代で言うところのこたつの完成です。
「ほぉ...これがこたつですか。布団をかぶせるとは...。」
「本当はこの中にひーたーが入っているのだが...まあいいだろう。」
「確かに、温かい空気が留まってあったかくなる気がしますね。」
「だろう。む、そうだ、こたつと言えばあれだなぁ。ちょっと待っておれ。」
「あれ?」
龍神様は一度席を外したかと思うとすぐに戻ってきました。手には橙色の果実を山盛りに持っています。」
「これは...みかんですか?」
「そうだぁ。未来ではこたつに入ってみかんを食べるのが日本人の冬の過ごし方だぁ。」
「へぇ...未来ではそんな風習があるんですね。」
「どれ、剥いてやったぞ。ほれ。」
「いや自分で食べれるんで。」
龍神様にあーんと口元まで向けられたみかんを指でつまむと、龍平はひょいと口に放りました。そのみかんはとても甘く、思わず顔がほころぶ龍平です。あーんを断られた龍神様はすこしばかり落ち込みましたが、龍平の顔を見てもう満足です。
「龍平も私に剥いてくれんかぁ?」
「自分で剥けばいいでしょう...と言いたいところですけど、まあ今は気分がいいので剥いてあげますよ。...はい剥けた。どうぞ。」
「あーんは...」
「しないですね。手で取って下さい。」
「むぅ。だが龍平が剥いてくれただけでも嬉しいぞぉ。...む、甘くておいしいのぉ。」
龍神様と龍平はしばらくみかんを食べ進めていましたが、ふと龍神様がみかんの皮をいじり始めました。
「何しているんです?」
「ふはは、みかんの皮で文字でも作ろうかと...ほれ、出来たぞぉ。」
「なになに...あいしてって何言わすんですか!」
「むぅ、読んでみろと言えば私に愛の言葉を言ってくれるかと思ったのだがぁ。」
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「全くくだらない。俺、十分温まったので畑行ってきますよ。体動かしてきます。」
「そうかぁ。では愛する龍平のために温まる汁物でも作って待っているとしよう。」
「はいはい、汁物はありがたくいただきますよ。」
そう軽口を叩いて外に出て行った龍平。龍平が今まで座っていたところに落ちているみかんの皮が故意か偶然か、ハート型になっていたことには龍平も龍神様も気づいていないのでした。
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