66 / 69
季節話
龍神様とみかん
しおりを挟む
冬を感じる風も吹き始めた頃、龍平と龍神様は屋敷の部屋でぬくぬくと座っておりました。
「はぁ~外も大分寒くなってきましたし、部屋の中は温かくて心が落ち着きますね。」
「そうだのう。未来ではこたつという暖房器具で温まるそうだぞぉ。」
「こたつ...ですか?どんなものです?」
「ふむ...やってみるかのう。」
龍神様はそう言うと、机の上に布団を広げ、その上から木の板を置きました。現代で言うところのこたつの完成です。
「ほぉ...これがこたつですか。布団をかぶせるとは...。」
「本当はこの中にひーたーが入っているのだが...まあいいだろう。」
「確かに、温かい空気が留まってあったかくなる気がしますね。」
「だろう。む、そうだ、こたつと言えばあれだなぁ。ちょっと待っておれ。」
「あれ?」
龍神様は一度席を外したかと思うとすぐに戻ってきました。手には橙色の果実を山盛りに持っています。」
「これは...みかんですか?」
「そうだぁ。未来ではこたつに入ってみかんを食べるのが日本人の冬の過ごし方だぁ。」
「へぇ...未来ではそんな風習があるんですね。」
「どれ、剥いてやったぞ。ほれ。」
「いや自分で食べれるんで。」
龍神様にあーんと口元まで向けられたみかんを指でつまむと、龍平はひょいと口に放りました。そのみかんはとても甘く、思わず顔がほころぶ龍平です。あーんを断られた龍神様はすこしばかり落ち込みましたが、龍平の顔を見てもう満足です。
「龍平も私に剥いてくれんかぁ?」
「自分で剥けばいいでしょう...と言いたいところですけど、まあ今は気分がいいので剥いてあげますよ。...はい剥けた。どうぞ。」
「あーんは...」
「しないですね。手で取って下さい。」
「むぅ。だが龍平が剥いてくれただけでも嬉しいぞぉ。...む、甘くておいしいのぉ。」
龍神様と龍平はしばらくみかんを食べ進めていましたが、ふと龍神様がみかんの皮をいじり始めました。
「何しているんです?」
「ふはは、みかんの皮で文字でも作ろうかと...ほれ、出来たぞぉ。」
「なになに...あいしてって何言わすんですか!」
「むぅ、読んでみろと言えば私に愛の言葉を言ってくれるかと思ったのだがぁ。」
龍平に『愛してる』と言ってもらうことは今までも散々試して失敗に終わっていますが、文字を呼んでもらう体でならと試した龍神様。しかしその作戦も失敗に終わりました。
「全くくだらない。俺、十分温まったので畑行ってきますよ。体動かしてきます。」
「そうかぁ。では愛する龍平のために温まる汁物でも作って待っているとしよう。」
「はいはい、汁物はありがたくいただきますよ。」
そう軽口を叩いて外に出て行った龍平。龍平が今まで座っていたところに落ちているみかんの皮が故意か偶然か、ハート型になっていたことには龍平も龍神様も気づいていないのでした。
「はぁ~外も大分寒くなってきましたし、部屋の中は温かくて心が落ち着きますね。」
「そうだのう。未来ではこたつという暖房器具で温まるそうだぞぉ。」
「こたつ...ですか?どんなものです?」
「ふむ...やってみるかのう。」
龍神様はそう言うと、机の上に布団を広げ、その上から木の板を置きました。現代で言うところのこたつの完成です。
「ほぉ...これがこたつですか。布団をかぶせるとは...。」
「本当はこの中にひーたーが入っているのだが...まあいいだろう。」
「確かに、温かい空気が留まってあったかくなる気がしますね。」
「だろう。む、そうだ、こたつと言えばあれだなぁ。ちょっと待っておれ。」
「あれ?」
龍神様は一度席を外したかと思うとすぐに戻ってきました。手には橙色の果実を山盛りに持っています。」
「これは...みかんですか?」
「そうだぁ。未来ではこたつに入ってみかんを食べるのが日本人の冬の過ごし方だぁ。」
「へぇ...未来ではそんな風習があるんですね。」
「どれ、剥いてやったぞ。ほれ。」
「いや自分で食べれるんで。」
龍神様にあーんと口元まで向けられたみかんを指でつまむと、龍平はひょいと口に放りました。そのみかんはとても甘く、思わず顔がほころぶ龍平です。あーんを断られた龍神様はすこしばかり落ち込みましたが、龍平の顔を見てもう満足です。
「龍平も私に剥いてくれんかぁ?」
「自分で剥けばいいでしょう...と言いたいところですけど、まあ今は気分がいいので剥いてあげますよ。...はい剥けた。どうぞ。」
「あーんは...」
「しないですね。手で取って下さい。」
「むぅ。だが龍平が剥いてくれただけでも嬉しいぞぉ。...む、甘くておいしいのぉ。」
龍神様と龍平はしばらくみかんを食べ進めていましたが、ふと龍神様がみかんの皮をいじり始めました。
「何しているんです?」
「ふはは、みかんの皮で文字でも作ろうかと...ほれ、出来たぞぉ。」
「なになに...あいしてって何言わすんですか!」
「むぅ、読んでみろと言えば私に愛の言葉を言ってくれるかと思ったのだがぁ。」
龍平に『愛してる』と言ってもらうことは今までも散々試して失敗に終わっていますが、文字を呼んでもらう体でならと試した龍神様。しかしその作戦も失敗に終わりました。
「全くくだらない。俺、十分温まったので畑行ってきますよ。体動かしてきます。」
「そうかぁ。では愛する龍平のために温まる汁物でも作って待っているとしよう。」
「はいはい、汁物はありがたくいただきますよ。」
そう軽口を叩いて外に出て行った龍平。龍平が今まで座っていたところに落ちているみかんの皮が故意か偶然か、ハート型になっていたことには龍平も龍神様も気づいていないのでした。
15
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる