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季節話
龍神様と帽子
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夏の日差しが猛威を振るう日のこと。いつも通り畑仕事に向かおうとするも暑さでなかなか屋敷からの一歩が踏み出せないでいる龍平でした。
「あ、あつい...。うぅ、この日差しの下に行くのはそこそこ勇気がいるぞ。」
しばらく葛藤していた龍平でしたが、ようやく覚悟を決めて畑の方に向かいました。暑さには参るものですが、それが生み出す恩恵には嬉しさを感じるもの。龍平もその例外ではなく、畑に生い茂る緑の葉の中に実った赤く輝くトマトやキラキラとした水滴がついたキュウリを見つけると目を輝かせました。
「おお!美味しそうなのがなってる!これは今日の夕餉にしよう。もぎたては旨そうだ...!」
一度気分が高まると暑さも一瞬忘れます。龍平は実っている夏野菜たちを夢中で収穫していき、どれほどの時間が経ったでしょう。しばらくすると龍平の視界が一瞬ふらっと歪みました。
「あ、あれ?めまいかな。今一瞬...。」
そう口にしたとき、龍平の視界が先ほど一瞬歪んだものとは違い、完全に真っ暗になりました。一瞬にして体の均衡を崩した龍平が思わず膝をつきそうになったところ、がっしりとした腕が龍平の体を受け止めました。
「うぇ!?あ、龍神様。」
「あ、じゃないだろう。こんなに日差しが強いのだから帽子くらい被れ。」
龍神様はそう言うと龍平の頭につばの広い麦わら帽子をポンとかぶせました。頭が日差しから守られたことによって少し涼しくなった龍平は体を起こし、しっかりとした筋肉によって自身の体を支えました。
「ありがとうございます。帽子被るとちょっと楽ですね。」
「そりゃあそうだろう。未来では地球温暖化が進み、クーラーや日傘がないと命の危険があるほどだぁ。」
「へぇ...未来は大変ですね。くーらー?が何かは分かりませんが。それより龍神様、見て下さい!立派な夏野菜がこんなに実ってましたよ!」
龍平は先ほどまで収穫していた野菜の入った加護を龍神様に見せます。
「ほぉ...旨そうではないかぁ。今夜は冷やし中華にでもするか。」
「ひやしちゅうか?」
「未来の食べ物だ。夏にぴったりで旨いのだぞぉ。」
「なんというか、未来の美味しい食べ物をこの時代に食べてしまうの、ちょっと背徳感ありますね。」
「くはは、細かいことは気にするなぁ。」
龍神様は未来の見える神力を使って美味しい料理の作り方を調べてはたまに龍平に振舞っていました。あまりにこの話を広げてしまうと時代の流れに支障をきたしてしまうかもしれないので、美味しい未来の料理を食べていることは2人の秘密です。
「じゃあ収穫も出来ましたし、そろそろ屋敷に戻りましょうか。」
「そうだなぁ。」
収穫を終えた2人は屋敷に戻り、野菜が大量に入った加護をどさっと床に置きました。そして龍平は被っていた帽子を取ります。
「ふう...帽子は涼しいですけど、ちょっと蒸れますね。髪の毛が汗でべたべただ。」
「む、龍平...なんと色っぽい姿だぁ。私が欲情する前に早く風呂に入るがいい。」
「え、急に何ですか。汗で髪がしっとりしてるのが色っぽいことになるんですか?はぁ...。まあ龍神様が自分を律しているうちに、言われた通り風呂に入ってきますよ。」
「うむ、その間に夕餉を作っておこう。」
龍平の身を案じた行為の最後には、欲情するところまでが一連の流れ。もはや慣れた龍平は言われた通り風呂に入り汗を流した後、龍神様の作った美味しい未来の料理を食べてご満悦なのでした。そして美味しい料理を食べてご満悦な龍平の顔を龍神様が愛おしく眺めるまでが一連の流れなのです。
「あ、あつい...。うぅ、この日差しの下に行くのはそこそこ勇気がいるぞ。」
しばらく葛藤していた龍平でしたが、ようやく覚悟を決めて畑の方に向かいました。暑さには参るものですが、それが生み出す恩恵には嬉しさを感じるもの。龍平もその例外ではなく、畑に生い茂る緑の葉の中に実った赤く輝くトマトやキラキラとした水滴がついたキュウリを見つけると目を輝かせました。
「おお!美味しそうなのがなってる!これは今日の夕餉にしよう。もぎたては旨そうだ...!」
一度気分が高まると暑さも一瞬忘れます。龍平は実っている夏野菜たちを夢中で収穫していき、どれほどの時間が経ったでしょう。しばらくすると龍平の視界が一瞬ふらっと歪みました。
「あ、あれ?めまいかな。今一瞬...。」
そう口にしたとき、龍平の視界が先ほど一瞬歪んだものとは違い、完全に真っ暗になりました。一瞬にして体の均衡を崩した龍平が思わず膝をつきそうになったところ、がっしりとした腕が龍平の体を受け止めました。
「うぇ!?あ、龍神様。」
「あ、じゃないだろう。こんなに日差しが強いのだから帽子くらい被れ。」
龍神様はそう言うと龍平の頭につばの広い麦わら帽子をポンとかぶせました。頭が日差しから守られたことによって少し涼しくなった龍平は体を起こし、しっかりとした筋肉によって自身の体を支えました。
「ありがとうございます。帽子被るとちょっと楽ですね。」
「そりゃあそうだろう。未来では地球温暖化が進み、クーラーや日傘がないと命の危険があるほどだぁ。」
「へぇ...未来は大変ですね。くーらー?が何かは分かりませんが。それより龍神様、見て下さい!立派な夏野菜がこんなに実ってましたよ!」
龍平は先ほどまで収穫していた野菜の入った加護を龍神様に見せます。
「ほぉ...旨そうではないかぁ。今夜は冷やし中華にでもするか。」
「ひやしちゅうか?」
「未来の食べ物だ。夏にぴったりで旨いのだぞぉ。」
「なんというか、未来の美味しい食べ物をこの時代に食べてしまうの、ちょっと背徳感ありますね。」
「くはは、細かいことは気にするなぁ。」
龍神様は未来の見える神力を使って美味しい料理の作り方を調べてはたまに龍平に振舞っていました。あまりにこの話を広げてしまうと時代の流れに支障をきたしてしまうかもしれないので、美味しい未来の料理を食べていることは2人の秘密です。
「じゃあ収穫も出来ましたし、そろそろ屋敷に戻りましょうか。」
「そうだなぁ。」
収穫を終えた2人は屋敷に戻り、野菜が大量に入った加護をどさっと床に置きました。そして龍平は被っていた帽子を取ります。
「ふう...帽子は涼しいですけど、ちょっと蒸れますね。髪の毛が汗でべたべただ。」
「む、龍平...なんと色っぽい姿だぁ。私が欲情する前に早く風呂に入るがいい。」
「え、急に何ですか。汗で髪がしっとりしてるのが色っぽいことになるんですか?はぁ...。まあ龍神様が自分を律しているうちに、言われた通り風呂に入ってきますよ。」
「うむ、その間に夕餉を作っておこう。」
龍平の身を案じた行為の最後には、欲情するところまでが一連の流れ。もはや慣れた龍平は言われた通り風呂に入り汗を流した後、龍神様の作った美味しい未来の料理を食べてご満悦なのでした。そして美味しい料理を食べてご満悦な龍平の顔を龍神様が愛おしく眺めるまでが一連の流れなのです。
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