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季節話
龍神様と蜜蜂
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春の陽気が感じられるようになってきた頃、いつものように畑仕事をしようと外に出た龍平は腕になにか違和感を感じました。
「ん?なんだ?」
不思議に思って見てみると、違和感を感じた腕に1匹の蜜蜂が止まっていたのでした。
「あ、蜂か。」
龍平はどうしたものかと思ったものの、村にいた頃から無視など慣れっこ。暫く動きを止め、自然に離れてくれることを期待して待っていました。しかし、そんな悠長に待っていられないと言った声が1つ。
「龍平!!腕に!腕に蜂が止まっているではないかぁ!」
「うるさいですね…。」
龍神様でした。隆平に辛辣な言葉をかけられているものの、龍神様が声を上げるのも無理はありません。蜂とは一般的に人間を刺します。愛する者に危害が加えられるのを危惧するのは当然のことです。
「龍平はどうしてそう落ち着いていられるのだ!蜂が今にもお主の腕を刺そうとしているのだぞ!?」
「村にいた頃はよく刺されていましたから何も…。それにコイツは蜜蜂ですよ。特に毒とかありませんし。」
「そういう問題ではないだろう!」
龍神様はそう言うと、ついにいても立っても居られなくなったのか、神の力を使って蜜蜂を捕らえると近くに咲いていた花の上に乗せてやりました。
「はぁ…。隆平よ。お主はこれくらい大丈夫と思うような事だとしても、私は愛するものがどんな些細な怪我をするのも嫌なのだぁ。分かってくれまいか。」
「…分かりました。」
さすがの龍平も、ここまで素直に自分の身を案じてくれる相手の言葉を無下には出来ず、素直に応じます。
「ところで龍平よ。まだ刺されてはいなかったのだなぁ?」
「え?いや…。」
隆平の歯切れの悪い答えを聞き、龍神様は龍平の腕をバッと掴みます。そして小さく刺された跡が残っていることに気づきました。
「さ…刺されているでは無いかぁ!」
「いや…えー、なんかすみません。」
「むぅ…いやすまん、龍平に怒っても無意味なことよ…。それにしても気に入らんのだぁ。」
「気に入らない、とは?」
「私以外のものが龍平の体に跡を残すなど、許せるわけ無かろう!」
「…真意はそれですか。」
龍平の身を案じてくれていると思っていたから素直に応じていたもの。それが愛ゆえの歪んだ嫉妬となれば話は別です。龍平は真顔に戻ると憤っている龍神様を尻目に、無言で畑仕事に戻りました。
「ん?なんだ?」
不思議に思って見てみると、違和感を感じた腕に1匹の蜜蜂が止まっていたのでした。
「あ、蜂か。」
龍平はどうしたものかと思ったものの、村にいた頃から無視など慣れっこ。暫く動きを止め、自然に離れてくれることを期待して待っていました。しかし、そんな悠長に待っていられないと言った声が1つ。
「龍平!!腕に!腕に蜂が止まっているではないかぁ!」
「うるさいですね…。」
龍神様でした。隆平に辛辣な言葉をかけられているものの、龍神様が声を上げるのも無理はありません。蜂とは一般的に人間を刺します。愛する者に危害が加えられるのを危惧するのは当然のことです。
「龍平はどうしてそう落ち着いていられるのだ!蜂が今にもお主の腕を刺そうとしているのだぞ!?」
「村にいた頃はよく刺されていましたから何も…。それにコイツは蜜蜂ですよ。特に毒とかありませんし。」
「そういう問題ではないだろう!」
龍神様はそう言うと、ついにいても立っても居られなくなったのか、神の力を使って蜜蜂を捕らえると近くに咲いていた花の上に乗せてやりました。
「はぁ…。隆平よ。お主はこれくらい大丈夫と思うような事だとしても、私は愛するものがどんな些細な怪我をするのも嫌なのだぁ。分かってくれまいか。」
「…分かりました。」
さすがの龍平も、ここまで素直に自分の身を案じてくれる相手の言葉を無下には出来ず、素直に応じます。
「ところで龍平よ。まだ刺されてはいなかったのだなぁ?」
「え?いや…。」
隆平の歯切れの悪い答えを聞き、龍神様は龍平の腕をバッと掴みます。そして小さく刺された跡が残っていることに気づきました。
「さ…刺されているでは無いかぁ!」
「いや…えー、なんかすみません。」
「むぅ…いやすまん、龍平に怒っても無意味なことよ…。それにしても気に入らんのだぁ。」
「気に入らない、とは?」
「私以外のものが龍平の体に跡を残すなど、許せるわけ無かろう!」
「…真意はそれですか。」
龍平の身を案じてくれていると思っていたから素直に応じていたもの。それが愛ゆえの歪んだ嫉妬となれば話は別です。龍平は真顔に戻ると憤っている龍神様を尻目に、無言で畑仕事に戻りました。
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