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季節話
龍神様と布団
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この日は稀にみる寒波で極寒の朝でした。いつもならとうに起きている時間になっても龍平が起きて来ないので龍神様は心配になり、龍平の寝室を覗きに来ました。
「龍平?どうしたぁ?」
「...龍神様ですか?」
龍平の声は布団の中から聞こえます。大きな筋肉を縮こまらせるように丸まっているのか、布団は外から見ても分かるくらいこんもりとしています。
「どうした龍平。具合でも悪いのかぁ?」
「具合は悪くないです。」
「ならばどうしたのだぁ。そんなに布団と仲良しになっておるなんて。」
「寒いのです。」
「はぁ?」
龍神様は神様なので寒さなど感じません。正確には感じてないことは無いですが、人間のように縮こまるようなことにはなりません。なので寒いというだけで布団から出て来ない龍平の様子には共感できません。
「龍神様と違って俺は人間なので寒いといつまでも布団から出ていたくなくなるんです。そりゃあいつものように畑仕事でもして体を動かせば温かくもなるだろうということも分かりますが、布団から出られないんです!」
「お、おう...。」
龍平の熱のこもった言い分に龍神様も思わずたじろぎます。龍平の気持ちに共感は出来ませんが言いたいことは理解出来ました。理解した上でどうしようかとしばらく考えて、龍神様は黙って部屋を後にしました。
「龍神様...?あぁ、飽きられちゃったかな。」
龍平が龍神様の行動の意図を推測していると、勢いよく扉がバーンと開けられました。そしてそこから顔を覗かせたのは布団一式を持った龍神様でした。
「あの、龍神様?その布団は?」
「私のだぁ。」
「なぜ、龍神様の布団をここに持ってきたんですか?俺たち寝室は分けていますよね、わざわざ。」
「うむ、そうだなぁ。でもお主今は別に眠いわけではなく、寒いから布団から出たくないだけであろう?それなら隣で私が横になろうと良かろう。」
「まあそうですけど...。え、ここで横になるんですか?」
「そうだあ。」
「なぜ。」
「何故って。私も龍平と同じ時間を共有したいからなあぁ。寒くて布団から出たくないなら、そんな日があっても良かろう。今日は一日布団の中でゆっくり過ごせばいい。私も隣で寝るから、お喋りでもしようじゃあないかぁ。」
龍平は龍神様の斜め上の行動に目をぱちくりとさせます。布団から出ないなど自堕落なこと、村では許されなかったからです。それがここでは許されるどころか同居人が同じ行動を取ってくれる。何ともおかしなこの光景に思わずふっと笑みをこぼします。
「いいですね。たまには。お腹減ったらどうします?」
「くはは。私は神だぞぉ。ものを浮遊させることなど造作もない。ちょっと取ってきてやるぅ。」
「はは、便利な力ですね。」
「お主のために使うのだぞぉ。」
「あーそうですか。」
「冷たいのぉ。今日の気温とどちらが冷たいかぁ。」
こうして二人はこの日一日布団から出ることなく過ごしました。そして次の日からはいつものように、いえいつも以上に畑仕事に勤しむ龍平なのでした。
「龍平?どうしたぁ?」
「...龍神様ですか?」
龍平の声は布団の中から聞こえます。大きな筋肉を縮こまらせるように丸まっているのか、布団は外から見ても分かるくらいこんもりとしています。
「どうした龍平。具合でも悪いのかぁ?」
「具合は悪くないです。」
「ならばどうしたのだぁ。そんなに布団と仲良しになっておるなんて。」
「寒いのです。」
「はぁ?」
龍神様は神様なので寒さなど感じません。正確には感じてないことは無いですが、人間のように縮こまるようなことにはなりません。なので寒いというだけで布団から出て来ない龍平の様子には共感できません。
「龍神様と違って俺は人間なので寒いといつまでも布団から出ていたくなくなるんです。そりゃあいつものように畑仕事でもして体を動かせば温かくもなるだろうということも分かりますが、布団から出られないんです!」
「お、おう...。」
龍平の熱のこもった言い分に龍神様も思わずたじろぎます。龍平の気持ちに共感は出来ませんが言いたいことは理解出来ました。理解した上でどうしようかとしばらく考えて、龍神様は黙って部屋を後にしました。
「龍神様...?あぁ、飽きられちゃったかな。」
龍平が龍神様の行動の意図を推測していると、勢いよく扉がバーンと開けられました。そしてそこから顔を覗かせたのは布団一式を持った龍神様でした。
「あの、龍神様?その布団は?」
「私のだぁ。」
「なぜ、龍神様の布団をここに持ってきたんですか?俺たち寝室は分けていますよね、わざわざ。」
「うむ、そうだなぁ。でもお主今は別に眠いわけではなく、寒いから布団から出たくないだけであろう?それなら隣で私が横になろうと良かろう。」
「まあそうですけど...。え、ここで横になるんですか?」
「そうだあ。」
「なぜ。」
「何故って。私も龍平と同じ時間を共有したいからなあぁ。寒くて布団から出たくないなら、そんな日があっても良かろう。今日は一日布団の中でゆっくり過ごせばいい。私も隣で寝るから、お喋りでもしようじゃあないかぁ。」
龍平は龍神様の斜め上の行動に目をぱちくりとさせます。布団から出ないなど自堕落なこと、村では許されなかったからです。それがここでは許されるどころか同居人が同じ行動を取ってくれる。何ともおかしなこの光景に思わずふっと笑みをこぼします。
「いいですね。たまには。お腹減ったらどうします?」
「くはは。私は神だぞぉ。ものを浮遊させることなど造作もない。ちょっと取ってきてやるぅ。」
「はは、便利な力ですね。」
「お主のために使うのだぞぉ。」
「あーそうですか。」
「冷たいのぉ。今日の気温とどちらが冷たいかぁ。」
こうして二人はこの日一日布団から出ることなく過ごしました。そして次の日からはいつものように、いえいつも以上に畑仕事に勤しむ龍平なのでした。
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