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季節話
龍神様と服
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これは秋の涼しさが冬の寒さに変わってきた頃。龍神様はふと疑問に思っていたことを龍平に尋ねました。
「龍平...お主、寒くはないのかぁ?」
「え?」
龍平はいつでも肩から先が出た衣類を身につけています。それは村に住んでいた頃の名残なのですが、一言で言うと見ずぼらしい布です。今龍平が住んでいるお屋敷はかなり豪華なものなので、正直なところ龍平の服はそぐわない印象を持ちます。とはいえ、龍神様も、龍平が村にいた時からの服と言うことは知っているのでその思い出に口を出すことはしないでいようと今まで言ったことはありませんでした。しかしこの肌寒い季節、さすがに龍平の体調が心配になったのでした。
「寒くは...ないですけど。」
「いや...お主がそう言うのなら信じるがぁ...。もう師走だぞぉ?人間が袖の無い服を着るには限度がある寒さだと思うのだが...。」
「うーん...まあ師走の中旬にもなれば何か羽織ろうとは思いますけど今は別に...。寒くないですよ?」
「そうなのかぁ?見ているこちらが寒そうなのだがぁ。」
龍平には自慢の筋肉があるので、冬でも寒さを感じにくく、村にいた頃も寒さが本格的なものになるまでずっと袖の無い衣服でした。昔からそうだったので村人はみな違和感も持たなかったのですが、龍神様は龍平の体調がひたすらに心配です。本人が大丈夫と言ってしまえばそれ以上言うことは出来ず、どうしたものかと考えました。
「そうだぁ、せっかくなら、私の望む服を着てくれぬかぁ?」
「望む服ですか?」
「そうだぁ。未来ではこすぷれというらしいがなぁ。」
「あぁ、そう言えば龍神様は未来が見えるんですよね。久々で忘れていました。」
「私の神力を忘れていたのかぁ...?お主、私が神であるということも忘れているのではなかろうな...。」
「そんなまさか。っはは。ところで望む服とは?」
「話を逸らしたかぁ?まあよい、ちょっと待っておれ。」
そう言うと龍神様は屋敷の奥の部屋に入っていきました。しばらく待っているとにこにこと笑顔を浮かべた龍神様が戻ってきました。
「色々持ってきたからなぁ。まずはこれは着てくれぬか?」
「これは?」
龍神様に手渡されたそれは、黒い布地の袖や裾に白いひらひらとした布が縫い付けられており、腰辺りにもひらひらの紐。そう、それはまるで
「未来のめいどふく、だぁ。」
「ふんっ!!!」
「あ゛あぁ!」
めいどふく、と言うものがどういうものか龍平には分かりませんでしたが、明らかに何か屈辱的なものであるような気がした瞬間龍平はそれをそのまま壁に叩きつけました。
「何をするのだぁ!」
「はっ!すみません。何か屈辱的なものを感じてつい...。別の服にしてもらえますか?」
「むぅ...まあ最初からこの服はほぼ諦めていたが...。じゃあこの中から好きなものを選んでくれ。」
龍神様は床に持ってきた服を並べ、龍平に見せました。未来のなーすふくやたいそうふくなどは龍平の野生の本能で回避しながら、龍平は一着の服を手に取りました。
「これにします。なんか他の服はろくなものじゃなさそうなので。」
「ひどい言い様だなぁ...。まあ良い。うむ、袖もあるし寒くはないだろう。大事にすると良い。」
「他の服はどうかと思いましたが...ありがとうございます。大事にしますね。」
龍平が手に取ったのは普段の服と見た目はそこまで変わりない袖のついた服でした。正直他の服が奇抜過ぎてそれを選ぶしかない状態でしたが、実はそれも龍神様の計算でした。こうして冬の間、龍平はこっそり背中の見えにくい部分に青い龍の刺繍の入った服を大事に着ることになったそうな。
「龍平...お主、寒くはないのかぁ?」
「え?」
龍平はいつでも肩から先が出た衣類を身につけています。それは村に住んでいた頃の名残なのですが、一言で言うと見ずぼらしい布です。今龍平が住んでいるお屋敷はかなり豪華なものなので、正直なところ龍平の服はそぐわない印象を持ちます。とはいえ、龍神様も、龍平が村にいた時からの服と言うことは知っているのでその思い出に口を出すことはしないでいようと今まで言ったことはありませんでした。しかしこの肌寒い季節、さすがに龍平の体調が心配になったのでした。
「寒くは...ないですけど。」
「いや...お主がそう言うのなら信じるがぁ...。もう師走だぞぉ?人間が袖の無い服を着るには限度がある寒さだと思うのだが...。」
「うーん...まあ師走の中旬にもなれば何か羽織ろうとは思いますけど今は別に...。寒くないですよ?」
「そうなのかぁ?見ているこちらが寒そうなのだがぁ。」
龍平には自慢の筋肉があるので、冬でも寒さを感じにくく、村にいた頃も寒さが本格的なものになるまでずっと袖の無い衣服でした。昔からそうだったので村人はみな違和感も持たなかったのですが、龍神様は龍平の体調がひたすらに心配です。本人が大丈夫と言ってしまえばそれ以上言うことは出来ず、どうしたものかと考えました。
「そうだぁ、せっかくなら、私の望む服を着てくれぬかぁ?」
「望む服ですか?」
「そうだぁ。未来ではこすぷれというらしいがなぁ。」
「あぁ、そう言えば龍神様は未来が見えるんですよね。久々で忘れていました。」
「私の神力を忘れていたのかぁ...?お主、私が神であるということも忘れているのではなかろうな...。」
「そんなまさか。っはは。ところで望む服とは?」
「話を逸らしたかぁ?まあよい、ちょっと待っておれ。」
そう言うと龍神様は屋敷の奥の部屋に入っていきました。しばらく待っているとにこにこと笑顔を浮かべた龍神様が戻ってきました。
「色々持ってきたからなぁ。まずはこれは着てくれぬか?」
「これは?」
龍神様に手渡されたそれは、黒い布地の袖や裾に白いひらひらとした布が縫い付けられており、腰辺りにもひらひらの紐。そう、それはまるで
「未来のめいどふく、だぁ。」
「ふんっ!!!」
「あ゛あぁ!」
めいどふく、と言うものがどういうものか龍平には分かりませんでしたが、明らかに何か屈辱的なものであるような気がした瞬間龍平はそれをそのまま壁に叩きつけました。
「何をするのだぁ!」
「はっ!すみません。何か屈辱的なものを感じてつい...。別の服にしてもらえますか?」
「むぅ...まあ最初からこの服はほぼ諦めていたが...。じゃあこの中から好きなものを選んでくれ。」
龍神様は床に持ってきた服を並べ、龍平に見せました。未来のなーすふくやたいそうふくなどは龍平の野生の本能で回避しながら、龍平は一着の服を手に取りました。
「これにします。なんか他の服はろくなものじゃなさそうなので。」
「ひどい言い様だなぁ...。まあ良い。うむ、袖もあるし寒くはないだろう。大事にすると良い。」
「他の服はどうかと思いましたが...ありがとうございます。大事にしますね。」
龍平が手に取ったのは普段の服と見た目はそこまで変わりない袖のついた服でした。正直他の服が奇抜過ぎてそれを選ぶしかない状態でしたが、実はそれも龍神様の計算でした。こうして冬の間、龍平はこっそり背中の見えにくい部分に青い龍の刺繍の入った服を大事に着ることになったそうな。
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