54 / 69
季節話
龍神様と服
しおりを挟む
これは秋の涼しさが冬の寒さに変わってきた頃。龍神様はふと疑問に思っていたことを龍平に尋ねました。
「龍平...お主、寒くはないのかぁ?」
「え?」
龍平はいつでも肩から先が出た衣類を身につけています。それは村に住んでいた頃の名残なのですが、一言で言うと見ずぼらしい布です。今龍平が住んでいるお屋敷はかなり豪華なものなので、正直なところ龍平の服はそぐわない印象を持ちます。とはいえ、龍神様も、龍平が村にいた時からの服と言うことは知っているのでその思い出に口を出すことはしないでいようと今まで言ったことはありませんでした。しかしこの肌寒い季節、さすがに龍平の体調が心配になったのでした。
「寒くは...ないですけど。」
「いや...お主がそう言うのなら信じるがぁ...。もう師走だぞぉ?人間が袖の無い服を着るには限度がある寒さだと思うのだが...。」
「うーん...まあ師走の中旬にもなれば何か羽織ろうとは思いますけど今は別に...。寒くないですよ?」
「そうなのかぁ?見ているこちらが寒そうなのだがぁ。」
龍平には自慢の筋肉があるので、冬でも寒さを感じにくく、村にいた頃も寒さが本格的なものになるまでずっと袖の無い衣服でした。昔からそうだったので村人はみな違和感も持たなかったのですが、龍神様は龍平の体調がひたすらに心配です。本人が大丈夫と言ってしまえばそれ以上言うことは出来ず、どうしたものかと考えました。
「そうだぁ、せっかくなら、私の望む服を着てくれぬかぁ?」
「望む服ですか?」
「そうだぁ。未来ではこすぷれというらしいがなぁ。」
「あぁ、そう言えば龍神様は未来が見えるんですよね。久々で忘れていました。」
「私の神力を忘れていたのかぁ...?お主、私が神であるということも忘れているのではなかろうな...。」
「そんなまさか。っはは。ところで望む服とは?」
「話を逸らしたかぁ?まあよい、ちょっと待っておれ。」
そう言うと龍神様は屋敷の奥の部屋に入っていきました。しばらく待っているとにこにこと笑顔を浮かべた龍神様が戻ってきました。
「色々持ってきたからなぁ。まずはこれは着てくれぬか?」
「これは?」
龍神様に手渡されたそれは、黒い布地の袖や裾に白いひらひらとした布が縫い付けられており、腰辺りにもひらひらの紐。そう、それはまるで
「未来のめいどふく、だぁ。」
「ふんっ!!!」
「あ゛あぁ!」
めいどふく、と言うものがどういうものか龍平には分かりませんでしたが、明らかに何か屈辱的なものであるような気がした瞬間龍平はそれをそのまま壁に叩きつけました。
「何をするのだぁ!」
「はっ!すみません。何か屈辱的なものを感じてつい...。別の服にしてもらえますか?」
「むぅ...まあ最初からこの服はほぼ諦めていたが...。じゃあこの中から好きなものを選んでくれ。」
龍神様は床に持ってきた服を並べ、龍平に見せました。未来のなーすふくやたいそうふくなどは龍平の野生の本能で回避しながら、龍平は一着の服を手に取りました。
「これにします。なんか他の服はろくなものじゃなさそうなので。」
「ひどい言い様だなぁ...。まあ良い。うむ、袖もあるし寒くはないだろう。大事にすると良い。」
「他の服はどうかと思いましたが...ありがとうございます。大事にしますね。」
龍平が手に取ったのは普段の服と見た目はそこまで変わりない袖のついた服でした。正直他の服が奇抜過ぎてそれを選ぶしかない状態でしたが、実はそれも龍神様の計算でした。こうして冬の間、龍平はこっそり背中の見えにくい部分に青い龍の刺繍の入った服を大事に着ることになったそうな。
「龍平...お主、寒くはないのかぁ?」
「え?」
龍平はいつでも肩から先が出た衣類を身につけています。それは村に住んでいた頃の名残なのですが、一言で言うと見ずぼらしい布です。今龍平が住んでいるお屋敷はかなり豪華なものなので、正直なところ龍平の服はそぐわない印象を持ちます。とはいえ、龍神様も、龍平が村にいた時からの服と言うことは知っているのでその思い出に口を出すことはしないでいようと今まで言ったことはありませんでした。しかしこの肌寒い季節、さすがに龍平の体調が心配になったのでした。
「寒くは...ないですけど。」
「いや...お主がそう言うのなら信じるがぁ...。もう師走だぞぉ?人間が袖の無い服を着るには限度がある寒さだと思うのだが...。」
「うーん...まあ師走の中旬にもなれば何か羽織ろうとは思いますけど今は別に...。寒くないですよ?」
「そうなのかぁ?見ているこちらが寒そうなのだがぁ。」
龍平には自慢の筋肉があるので、冬でも寒さを感じにくく、村にいた頃も寒さが本格的なものになるまでずっと袖の無い衣服でした。昔からそうだったので村人はみな違和感も持たなかったのですが、龍神様は龍平の体調がひたすらに心配です。本人が大丈夫と言ってしまえばそれ以上言うことは出来ず、どうしたものかと考えました。
「そうだぁ、せっかくなら、私の望む服を着てくれぬかぁ?」
「望む服ですか?」
「そうだぁ。未来ではこすぷれというらしいがなぁ。」
「あぁ、そう言えば龍神様は未来が見えるんですよね。久々で忘れていました。」
「私の神力を忘れていたのかぁ...?お主、私が神であるということも忘れているのではなかろうな...。」
「そんなまさか。っはは。ところで望む服とは?」
「話を逸らしたかぁ?まあよい、ちょっと待っておれ。」
そう言うと龍神様は屋敷の奥の部屋に入っていきました。しばらく待っているとにこにこと笑顔を浮かべた龍神様が戻ってきました。
「色々持ってきたからなぁ。まずはこれは着てくれぬか?」
「これは?」
龍神様に手渡されたそれは、黒い布地の袖や裾に白いひらひらとした布が縫い付けられており、腰辺りにもひらひらの紐。そう、それはまるで
「未来のめいどふく、だぁ。」
「ふんっ!!!」
「あ゛あぁ!」
めいどふく、と言うものがどういうものか龍平には分かりませんでしたが、明らかに何か屈辱的なものであるような気がした瞬間龍平はそれをそのまま壁に叩きつけました。
「何をするのだぁ!」
「はっ!すみません。何か屈辱的なものを感じてつい...。別の服にしてもらえますか?」
「むぅ...まあ最初からこの服はほぼ諦めていたが...。じゃあこの中から好きなものを選んでくれ。」
龍神様は床に持ってきた服を並べ、龍平に見せました。未来のなーすふくやたいそうふくなどは龍平の野生の本能で回避しながら、龍平は一着の服を手に取りました。
「これにします。なんか他の服はろくなものじゃなさそうなので。」
「ひどい言い様だなぁ...。まあ良い。うむ、袖もあるし寒くはないだろう。大事にすると良い。」
「他の服はどうかと思いましたが...ありがとうございます。大事にしますね。」
龍平が手に取ったのは普段の服と見た目はそこまで変わりない袖のついた服でした。正直他の服が奇抜過ぎてそれを選ぶしかない状態でしたが、実はそれも龍神様の計算でした。こうして冬の間、龍平はこっそり背中の見えにくい部分に青い龍の刺繍の入った服を大事に着ることになったそうな。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる