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季節話
龍神様と空
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これは夏の暑さも和らぎ、秋を感じ始めた頃。
「うわー、畑に蜻蛉がすごいことに…。」
龍平がいつものように畑を耕そうと庭に出ると、畑の周りを大量の蜻蛉が飛んでいました。
「これはすごい数だのぉ。」
「少し走ったら顔に蜻蛉が直撃してしまいますよ。」
「む、そうなったら龍平の愛い顔に傷がついてしまうかもしれんな。どれ、追い払うか。」
龍神様はそういうとおもむろにに右手を掲げました。そしてしばらくすると蜻蛉はまるでとこからか集合の合図を聞き取ったかのように畑から離れていきました。
「おお、こんなことも出来るんですね、龍神様。」
「くはは。惚れたか?」
「いえ全く。」
「愛いやつめ。」
「話噛み合ってます?」
龍平は龍神様を軽く小突きながらふと、思ったことを口に出しました。
「そういえば龍神様は空が飛べるんですか?」
「むぅ?そりゃあ飛べるが?どうかしたのか?」
「あぁ、いえ。蜻蛉が自由に空を飛んでいたもので。俺もあんな風に飛べたらな、と思いまして。龍神様が飛べるなら、こう、俺を抱えて一緒に飛ぶとか出来るんですか?」
「くはは。もちろんだ、どれ!」
「わっ!」
言うが早いか龍神様は龍平をお姫様抱っこするとフワッとそのまま上空に浮き上がりました。
「わっ!高っ!屋敷があんな下に!」
「くはは、怖いか?」
「少し…というか、抱き抱え方はこれしか無かったんですか?」
「私に身を預けろ、龍平ぃ。」
「うわ、何か屈辱を感じます。」
「何でだぁ!」
龍神様は腕の中にいる龍平の顔を見ていると、ふと魔が差しました。ニヤリと笑って龍平に向かって口を開きます。
「龍平…ここで私がこの手を離したら、お主はどうなるだろうな?」
「?そりゃ落ちるでしょう。」
「いくらお主でも耐えられないか。」
「当たり前でしょう。こんなに高いんですから落ちたら死にます。」
「む、むぅ。」
龍神様は龍平の思っていたものとは違う反応に少し困惑します。この状況でこのような意地悪を言えば多少は狼狽えたり混乱したりするものですが、龍平はケロッとしてただ質問に応答するだけなのです。
「りゅ、龍平よ。私は今意地の悪いことを言った自覚はあるのだがなぜお主はそんなに平静でいられる。仮に私が言った通りにこの手を離したり…」
「しないでしょう?」
龍平は「何を言っているのだろう?」とでも言いたいような顔で龍神様を見ます。その顔に龍神様は思わず口元が緩みます。
「くはは。そうだなぁ。絶対にせんわそのような事。龍平よ、ただ真上に浮き上がるだけではつまらないだろう。少し空を散歩でもするか。」
「おぉ!いいですね!」
そして2人は夕日によって赤くなった空をしばらくの間散歩していたのでした。
「うわー、畑に蜻蛉がすごいことに…。」
龍平がいつものように畑を耕そうと庭に出ると、畑の周りを大量の蜻蛉が飛んでいました。
「これはすごい数だのぉ。」
「少し走ったら顔に蜻蛉が直撃してしまいますよ。」
「む、そうなったら龍平の愛い顔に傷がついてしまうかもしれんな。どれ、追い払うか。」
龍神様はそういうとおもむろにに右手を掲げました。そしてしばらくすると蜻蛉はまるでとこからか集合の合図を聞き取ったかのように畑から離れていきました。
「おお、こんなことも出来るんですね、龍神様。」
「くはは。惚れたか?」
「いえ全く。」
「愛いやつめ。」
「話噛み合ってます?」
龍平は龍神様を軽く小突きながらふと、思ったことを口に出しました。
「そういえば龍神様は空が飛べるんですか?」
「むぅ?そりゃあ飛べるが?どうかしたのか?」
「あぁ、いえ。蜻蛉が自由に空を飛んでいたもので。俺もあんな風に飛べたらな、と思いまして。龍神様が飛べるなら、こう、俺を抱えて一緒に飛ぶとか出来るんですか?」
「くはは。もちろんだ、どれ!」
「わっ!」
言うが早いか龍神様は龍平をお姫様抱っこするとフワッとそのまま上空に浮き上がりました。
「わっ!高っ!屋敷があんな下に!」
「くはは、怖いか?」
「少し…というか、抱き抱え方はこれしか無かったんですか?」
「私に身を預けろ、龍平ぃ。」
「うわ、何か屈辱を感じます。」
「何でだぁ!」
龍神様は腕の中にいる龍平の顔を見ていると、ふと魔が差しました。ニヤリと笑って龍平に向かって口を開きます。
「龍平…ここで私がこの手を離したら、お主はどうなるだろうな?」
「?そりゃ落ちるでしょう。」
「いくらお主でも耐えられないか。」
「当たり前でしょう。こんなに高いんですから落ちたら死にます。」
「む、むぅ。」
龍神様は龍平の思っていたものとは違う反応に少し困惑します。この状況でこのような意地悪を言えば多少は狼狽えたり混乱したりするものですが、龍平はケロッとしてただ質問に応答するだけなのです。
「りゅ、龍平よ。私は今意地の悪いことを言った自覚はあるのだがなぜお主はそんなに平静でいられる。仮に私が言った通りにこの手を離したり…」
「しないでしょう?」
龍平は「何を言っているのだろう?」とでも言いたいような顔で龍神様を見ます。その顔に龍神様は思わず口元が緩みます。
「くはは。そうだなぁ。絶対にせんわそのような事。龍平よ、ただ真上に浮き上がるだけではつまらないだろう。少し空を散歩でもするか。」
「おぉ!いいですね!」
そして2人は夕日によって赤くなった空をしばらくの間散歩していたのでした。
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