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季節話
龍神様と波
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これは夏の暑さも厳しくなってきた頃。龍神様と龍平は、村の近くの海へやって来ていました。
「あ~!久々の海だ~!村にいた頃は海産物を取りにたまには行っていたんだけどな~!」
「そうなのか?ではお主泳げるのかぁ?」
「えぇ。泳ぎは得意ですよ。それが何か?」
「むぅ…。泳げない龍平に抱きつかれることを想定していたのだがぁ…。」
「仮に泳げなくてもそんな行動は取らないので安心してください。」
今日海にやって来たのは暑さを凌ぐためであり、海産物を取るためでした。決して龍神様と逢瀬を共にするためではありません。
「さ、早く海へ入りましょう。龍神様は一応水神様ですから泳げますよね?」
「当たり前だぁ。仮に龍平が溺れても助けてやるから安心するといい。」
「それはどうも。」
龍平はそう言うとザブンと海に入りました。水は冷たいですが気温の暑さと相まってとても気持ち良いです。思わず海産物を取りに来た目的を忘れるところです。
「あぁ~気持ちいい~。」
「龍平、何も急ぐことは無い。せっかく来たのだから少し泳いできたらどうだぁ?」
「確かに、久々に来たのですからそうしましょうか。龍神様はどうしますか?」
「私はここで龍平を見ているぅ。」
「ああそうですか。」
龍平は龍神様の言葉に甘え、沖の方へ泳いでいくことにしました。ところが、龍平は久々の海の気持ちよさに、どんどんと浜辺から離れていきます。
「龍平ー?その辺にしておけー。あまり遠くへ行くと危ないぞー。」
「だいじょーぶですよー!」
龍平は龍神様の言葉に耳を貸さず、どんどん沖の方へ行きます。そしてそこに、大きな波がやって来ました。
「え!?ちょっ…!」
龍神様が恐れていた通り、龍平は高い波に為す術なく飲まれてしまいました。
「龍平!」
様子を見ていた龍神様は血相を変え慌てて海に入ります。海を舐めては行けない。どんなに泳ぎになれていても命を落とす可能性は十分にある。龍神様はただ龍平の無事を祈りながら龍平の元へ急ぎましたが、そこに龍平の姿はありません。
「龍平!?龍平!?」
名を呼んでみますが返事はありません。波に飲まれ沖へ流されてしまったのか、溺れて沈んでしまったのか、龍神様の頭に良くない考えがよぎります。そんな不安を振り切るように大声で龍平の名をもう一度呼んだ時、
「龍神様?なんでそこにいるんですかー?」
浜辺の方から龍平の声が聞こえました。龍平は泳ぎが得意という言葉通り、波に飲まれても冷静に浜辺へ向かって泳ぎ、何事も無かったように浜辺に戻っていたのでした。
「龍平!お主!無事だったか!」
「え?ええ。」
龍神様は慌てて浜辺へ戻ります。そして龍平の体に触れ、無事を確認します。
「心配したのだぞ!」
「それはすみません。でも俺泳ぎは得意って言ったじゃないですか。」
「泳ぎが得意でも海は危ないのだ!」
「すみません…。」
龍神様の必死の表情に龍平は思わず素直に謝ります。心配させたのに変わりは無いことを分かっているからです。
「まあ無事で良かったがなぁ。さ、それじゃあ海産物を取りに行くかぁ。」
「はい。あ、龍神様。」
「なんだぁ?」
「俺の事、心配ならちゃんと見ててくださいね。さっきも、ちゃんと見ててくれればすぐ気づけたんですから。」
「…!うむ!分かった!」
龍平は龍神様の持つ未来視の力のことを言ったつもりでしたが、何か勘違いした龍神様にこの日一日中ずっと見つめられ続けた龍平でした。
「あ~!久々の海だ~!村にいた頃は海産物を取りにたまには行っていたんだけどな~!」
「そうなのか?ではお主泳げるのかぁ?」
「えぇ。泳ぎは得意ですよ。それが何か?」
「むぅ…。泳げない龍平に抱きつかれることを想定していたのだがぁ…。」
「仮に泳げなくてもそんな行動は取らないので安心してください。」
今日海にやって来たのは暑さを凌ぐためであり、海産物を取るためでした。決して龍神様と逢瀬を共にするためではありません。
「さ、早く海へ入りましょう。龍神様は一応水神様ですから泳げますよね?」
「当たり前だぁ。仮に龍平が溺れても助けてやるから安心するといい。」
「それはどうも。」
龍平はそう言うとザブンと海に入りました。水は冷たいですが気温の暑さと相まってとても気持ち良いです。思わず海産物を取りに来た目的を忘れるところです。
「あぁ~気持ちいい~。」
「龍平、何も急ぐことは無い。せっかく来たのだから少し泳いできたらどうだぁ?」
「確かに、久々に来たのですからそうしましょうか。龍神様はどうしますか?」
「私はここで龍平を見ているぅ。」
「ああそうですか。」
龍平は龍神様の言葉に甘え、沖の方へ泳いでいくことにしました。ところが、龍平は久々の海の気持ちよさに、どんどんと浜辺から離れていきます。
「龍平ー?その辺にしておけー。あまり遠くへ行くと危ないぞー。」
「だいじょーぶですよー!」
龍平は龍神様の言葉に耳を貸さず、どんどん沖の方へ行きます。そしてそこに、大きな波がやって来ました。
「え!?ちょっ…!」
龍神様が恐れていた通り、龍平は高い波に為す術なく飲まれてしまいました。
「龍平!」
様子を見ていた龍神様は血相を変え慌てて海に入ります。海を舐めては行けない。どんなに泳ぎになれていても命を落とす可能性は十分にある。龍神様はただ龍平の無事を祈りながら龍平の元へ急ぎましたが、そこに龍平の姿はありません。
「龍平!?龍平!?」
名を呼んでみますが返事はありません。波に飲まれ沖へ流されてしまったのか、溺れて沈んでしまったのか、龍神様の頭に良くない考えがよぎります。そんな不安を振り切るように大声で龍平の名をもう一度呼んだ時、
「龍神様?なんでそこにいるんですかー?」
浜辺の方から龍平の声が聞こえました。龍平は泳ぎが得意という言葉通り、波に飲まれても冷静に浜辺へ向かって泳ぎ、何事も無かったように浜辺に戻っていたのでした。
「龍平!お主!無事だったか!」
「え?ええ。」
龍神様は慌てて浜辺へ戻ります。そして龍平の体に触れ、無事を確認します。
「心配したのだぞ!」
「それはすみません。でも俺泳ぎは得意って言ったじゃないですか。」
「泳ぎが得意でも海は危ないのだ!」
「すみません…。」
龍神様の必死の表情に龍平は思わず素直に謝ります。心配させたのに変わりは無いことを分かっているからです。
「まあ無事で良かったがなぁ。さ、それじゃあ海産物を取りに行くかぁ。」
「はい。あ、龍神様。」
「なんだぁ?」
「俺の事、心配ならちゃんと見ててくださいね。さっきも、ちゃんと見ててくれればすぐ気づけたんですから。」
「…!うむ!分かった!」
龍平は龍神様の持つ未来視の力のことを言ったつもりでしたが、何か勘違いした龍神様にこの日一日中ずっと見つめられ続けた龍平でした。
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