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季節話
龍神様と猫
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冬の寒さもほんの少し弱まってきた頃、いつものように畑を耕すため庭に出た龍平は特別な客様が来ていることに気が付きました。
「猫だ。」
「にゃーん。」
畑の土の上にちょこんと座ったのは野良の三毛猫でした。龍平は思わずしゃがみ込み、猫に話しかけます。
「お前どこから来たんだ?確かこの屋敷って龍神様が結界みたいなの張ってたと思うんだけど。」
「にゃー。」
「にゃー、じゃわかんないぞー。何だ?お腹減ってるのか?」
「にゃにゃにゃー。」
「はは、当たりっぽい。じゃあちょっと待ってるにゃー。」
龍平は猫の可愛さに猫語で喋ります。そして猫のご飯を持ってきてやろうと屋敷に向かうと、ゾワァッと視線を感じました。あまりの視線に思わず視線の先に振り返ると、そこにはとてもニヤニヤといやらしい顔をした龍神様がおりました。
「りゅ、龍神様いたんですか...!」
「いたなぁ。」
「見てたんですか...。」
「見てたなぁ。」
「忘れてもらうことは出来ますか...。」
「出来んなぁ。」
龍神様との問答に、龍平は膝から崩れ落ちました。屈強な肉体を持つ男性である龍平が猫と話すなど、ましてや語尾に「にゃ」を付けて話すなど恥ずかしいことこの上ありません。しかし龍神様はそれを愛いとすることは龍平にも分かっています。だからこそ龍平は膝から崩れ落ちたまま、もはやこの状況を打破する何かなどできません。
「はぁー...。もういいです。猫と喋ってましたけど何か?」
「開き直ったなぁ。」
「開き直るしか選択肢無いですからね。それより俺は猫のご飯を持ってきてやろうと思ったんですよ。屋敷に戻ります。」
「その猫はもうおらんがなぁ。」
「え?」
龍神様の言葉に畑の方を見ると、もうそこには猫はいませんでした。気まぐれな猫ですから、龍神様と話している間大人しく待っていることなどできません。
「あぁ...まあ野良猫でしたから。自由気ままに行動しますよね。」
「そうだなぁ。ちょっと待ってるにゃーと言っておいたのになぁ。」
「龍神様!」
龍平はとにかく恥で龍神様に大声を上げます。しかし龍神様はただニヤニヤと笑うだけです。さすがに腹の立った龍平は龍神様の顔を両手でガシッと持ってものすごい顔で睨みました。そして
「黙ってろにゃ。」
と、どこから出したのか分からないような低い声で静かに言いました。さすがの龍平の迫力に龍神様も「はい...。」と言ったきり、それ以上猫語について触れることはありませんでした。
「猫だ。」
「にゃーん。」
畑の土の上にちょこんと座ったのは野良の三毛猫でした。龍平は思わずしゃがみ込み、猫に話しかけます。
「お前どこから来たんだ?確かこの屋敷って龍神様が結界みたいなの張ってたと思うんだけど。」
「にゃー。」
「にゃー、じゃわかんないぞー。何だ?お腹減ってるのか?」
「にゃにゃにゃー。」
「はは、当たりっぽい。じゃあちょっと待ってるにゃー。」
龍平は猫の可愛さに猫語で喋ります。そして猫のご飯を持ってきてやろうと屋敷に向かうと、ゾワァッと視線を感じました。あまりの視線に思わず視線の先に振り返ると、そこにはとてもニヤニヤといやらしい顔をした龍神様がおりました。
「りゅ、龍神様いたんですか...!」
「いたなぁ。」
「見てたんですか...。」
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「出来んなぁ。」
龍神様との問答に、龍平は膝から崩れ落ちました。屈強な肉体を持つ男性である龍平が猫と話すなど、ましてや語尾に「にゃ」を付けて話すなど恥ずかしいことこの上ありません。しかし龍神様はそれを愛いとすることは龍平にも分かっています。だからこそ龍平は膝から崩れ落ちたまま、もはやこの状況を打破する何かなどできません。
「はぁー...。もういいです。猫と喋ってましたけど何か?」
「開き直ったなぁ。」
「開き直るしか選択肢無いですからね。それより俺は猫のご飯を持ってきてやろうと思ったんですよ。屋敷に戻ります。」
「その猫はもうおらんがなぁ。」
「え?」
龍神様の言葉に畑の方を見ると、もうそこには猫はいませんでした。気まぐれな猫ですから、龍神様と話している間大人しく待っていることなどできません。
「あぁ...まあ野良猫でしたから。自由気ままに行動しますよね。」
「そうだなぁ。ちょっと待ってるにゃーと言っておいたのになぁ。」
「龍神様!」
龍平はとにかく恥で龍神様に大声を上げます。しかし龍神様はただニヤニヤと笑うだけです。さすがに腹の立った龍平は龍神様の顔を両手でガシッと持ってものすごい顔で睨みました。そして
「黙ってろにゃ。」
と、どこから出したのか分からないような低い声で静かに言いました。さすがの龍平の迫力に龍神様も「はい...。」と言ったきり、それ以上猫語について触れることはありませんでした。
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