龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様とのど自慢

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  忙しなかった元日から時は経ち、龍平と龍神様はまたのんびりと日々を過ごしておりました。これは龍平がいつものように畑を耕している時のことです。

「ふんふんふん~ん」

龍平はいつもの慣れた作業の中、無意識のように鼻歌を歌っていました。

「龍平、その歌はなんだぁ?」

「え?歌?」

「今歌っていただろう?」

「え、ああ。何も考えずに口ずさんでいましたね…。」

「オリジナルソングと言うやつかぁ。」

「おりじ…?」

未来の視える龍神様の現代言葉は龍平には通じません。

「まぁ気にするなぁ、自分で作った歌という意味だなぁ。それにしても龍平、お主の歌声は良いなぁ。」

「え?そうですか?ありがとうございます。」

「寝る前に枕元で子守唄を歌って欲しいなぁ。」

「嫌ですよ。」

龍神様の素直な言葉に気を良くしたのも束の間、龍平はいつもの冷ややかな声で龍神様の願いを却下します。

「つれないのぉ。」

「そういえば龍神様はどうなのですか?歌、上手いのですか?」

「私かぁ?どれ、聞いていよ。」

そう言うと龍神様は低く張りのある、それでいて柔らかく惚れ惚れするような歌声で1曲歌い上げました。

「う、わぁ。上手いですね!?」

「腐っても神だからなぁ。」

「ちなみに先程の曲はなんという曲ですか?」

「国歌だ。」

「国歌!?」

龍平様はそれはそれは素敵な歌声で日本の国歌を歌い上げていました。

「もう一度歌おうかぁ?『き~み~が~よ~は~』」

「いや聞いても分からないのでいいです!それ未来の歌でしょう!?」

「くははは。もっと未来のジェーポップの方が良かったかのぉ。」

「いやそれも分かりませんから!」


  何だかんだ言う龍平ですが、龍神様の美しい歌声に見惚れてしまったのは事実。その夜は「ちょっと眠れない」だの「人の声が聞きたい」など適当な言い訳をつけて龍神様に子守唄を歌ってもらいました。
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