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季節話
龍神様と元日
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「改めて、あけましておめでとうございます、龍神様。」
「うむ、あけましておめでとう龍平。今年もよろしくぅ。」
年も明け、龍神様と龍平は屋敷に戻ってきました。村も大事な実家ですが、それでも龍神様の屋敷もとても居心地が良いと感じている龍平です。決して口に出しては言いませんが。
「ところで龍平よ、一緒に暮らし始めて丸一年以上経ったのぉ。」
「まあ、そうですね。」
「そろそろ婚姻を...」
「お断りします。」
「食い気味だなぁ...。」
何となく言われるのではないかと身構えていた龍平は龍神様の言葉に食い気味に断ります。しかし、龍神様とて断られるのだろうと思っていたので何も驚きはありません。
「まあ、愛する者の嫌がることなどしないわぁ。龍平が歩み寄ってくれるまで私は待つぞぉ。」
「へぇ、俺が死ぬまで待ってくれるんですか。龍神様は長命だから確かにそれくらいすぐですね。」
「龍平、お主死ぬまで歩み寄らないつもりかぁ。...まあいい。多くは望まん。一緒にこの屋敷にいてくれるだけで満足だと思うことにしよう。」
「随分欲がないんですね。」
「お主が言うのか。」
今年の龍平は龍神様にもズバズバ切り込みます。この龍平の冷たい物言いも歩み寄っているからこそなのですが、龍神様には伝わりません。
それなら今年の抱負にしようぞぉ。今年の抱負は龍平に歩み寄ってもらえる良き男になると!」
「いえ、男になるという時点で何かが違うような...。いえ、人様の抱負を否定してはいけませんね。」
「龍平は今年の抱負はないのか?」
「俺の抱負ですか?」
「そうだぁ。なんでもよいぞぉ。私の嫁にしてもらう、というものなら今からでも大歓迎だぁ。」
「それだけは無いです。」
龍平は龍神様の言葉をぴしゃりと捨てると、しばらく考えて、ちらっと龍神様の顔を見ました。そして小さな声で、
「少しは素直に気持ちを伝える、でしょうか。」
と言いました。しかしその声はあまりにも小さく風の音に掻き消されるほどでした。
「なんだぁ?龍平、お主今なんと言ったぁ?」
「二度は言いません!それに抱負はあまり口に出して言わない方がいいでしょうし。じゃあ俺畑行ってきますから!」
龍平はそれだけ言うと畑に走っていきました。ところで、龍神様は腐っても神様、五感は人間より優れているので、当然龍平の小さな声も聞こえていました。しかし龍平があえて小さな声で言った言葉をしっかり聴き取れているのはいかがなものか?と思い、あえて聞こえないふりをしたのでした。
「早速素直でないではないかぁ。...ふふ。」
新年早々すれ違うようですれ違わない2人は、また今年も仲良く過ごすのです。
「うむ、あけましておめでとう龍平。今年もよろしくぅ。」
年も明け、龍神様と龍平は屋敷に戻ってきました。村も大事な実家ですが、それでも龍神様の屋敷もとても居心地が良いと感じている龍平です。決して口に出しては言いませんが。
「ところで龍平よ、一緒に暮らし始めて丸一年以上経ったのぉ。」
「まあ、そうですね。」
「そろそろ婚姻を...」
「お断りします。」
「食い気味だなぁ...。」
何となく言われるのではないかと身構えていた龍平は龍神様の言葉に食い気味に断ります。しかし、龍神様とて断られるのだろうと思っていたので何も驚きはありません。
「まあ、愛する者の嫌がることなどしないわぁ。龍平が歩み寄ってくれるまで私は待つぞぉ。」
「へぇ、俺が死ぬまで待ってくれるんですか。龍神様は長命だから確かにそれくらいすぐですね。」
「龍平、お主死ぬまで歩み寄らないつもりかぁ。...まあいい。多くは望まん。一緒にこの屋敷にいてくれるだけで満足だと思うことにしよう。」
「随分欲がないんですね。」
「お主が言うのか。」
今年の龍平は龍神様にもズバズバ切り込みます。この龍平の冷たい物言いも歩み寄っているからこそなのですが、龍神様には伝わりません。
それなら今年の抱負にしようぞぉ。今年の抱負は龍平に歩み寄ってもらえる良き男になると!」
「いえ、男になるという時点で何かが違うような...。いえ、人様の抱負を否定してはいけませんね。」
「龍平は今年の抱負はないのか?」
「俺の抱負ですか?」
「そうだぁ。なんでもよいぞぉ。私の嫁にしてもらう、というものなら今からでも大歓迎だぁ。」
「それだけは無いです。」
龍平は龍神様の言葉をぴしゃりと捨てると、しばらく考えて、ちらっと龍神様の顔を見ました。そして小さな声で、
「少しは素直に気持ちを伝える、でしょうか。」
と言いました。しかしその声はあまりにも小さく風の音に掻き消されるほどでした。
「なんだぁ?龍平、お主今なんと言ったぁ?」
「二度は言いません!それに抱負はあまり口に出して言わない方がいいでしょうし。じゃあ俺畑行ってきますから!」
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「早速素直でないではないかぁ。...ふふ。」
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