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季節話
龍神様と大晦日
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龍神様と暮らし始めて、初めての大晦日。龍平は大変悩んでおりました。と言うのも、
「龍平ぃ!年越しだぞぉ!?新しい年の始まりだぞぉ!?神と共に過ごした方がご利益あると思わんかぁ!?」
そう、龍平は普段は龍神様の屋敷で暮らしているとはいえ、村に自分の居場所はあるのです。家族はいないとはいえ、家族同様に大事にしている村民がいます。そんな家族のような人と一緒に年越しを過ごしたいと思うのはごく普通のこと。しかしそれを良しとしないのが龍神様でした。龍神様にとって龍平は嫁、つまりは家族です。龍平同様家族と共に過ごしたいと思うのもまたごく普通のことでした。
「龍神様...俺も村の人と過ごしたいんですよ。」
「むぅ、そんなの分かっておるわぁ。だがそれでも私は龍平と共に過ごしたいのだぁ。年が明けてから村へ帰るのでは駄目なのかぁ?」
「それを言うなら、年が明けてから帰ってくるのでは駄目なのですか?」
「むぅ!龍平ぃ~。」
同じことの繰り返し。埒が飽きません。本当は龍平も龍神様も、お互いがお互いの気持ちをちゃんと分かっています。分かってますがだとしても、お互いどうしても譲れないのです。
「私は年が明けて、龍平に一番にあけましておめでとうと言いたいのだぁ。」
「俺は年が明けるまで村のみんなとゆっくり過ごしたいのです。」
「むぅぅぅ埒が明かんなぁ。」
「どちらかが折れるしかないのでしょうが...あ。そうだ。」
どちらの意見も相反するのであれば、どちらかが折れるしかありません。どうしたものかと悩んでいましたが、ふと龍平はとある案を思いつきました。
「龍神様も一緒に村に来てはどうですか?」
「私が、村にぃ?」
「はい。守るべき村の民と触れ合ってはいけないと言った決まりでもあるのですか?もぐら君は村の子どもとしょっちゅう一緒に遊んでいるみたいですが。」
「いや、村の者と触れ合ってはいけない決まりなどない。ただ神として、引くべき一線を引いていただけだぁ。」
「それなら、大晦日くらい、その一線、踏み越えてもいいのでは?」
龍神様と一緒に村に行く。これなら龍平は年が明けるまで村の人とゆっくり過ごせますし、龍神様は年が明けて一番に龍平にあけましておめでとうを言えます。今まで何度も龍平は村に帰っていましたが、龍神様は一度も村に来たことはありませんでした。それ自体特に疑問にも思っていませんでしたが、大晦日くらい、神様が村に降りてもいいはずです。
「むぅ...確かにそうだな。しかし私が行って、村の人は良く思わないのではないだろうかぁ?」
「はは。今まで村に帰っていたのは村の人に龍神様は村を守っておられると、誤解を解くためだと言ったでしょう?今の村に龍神様を邪険に扱う者なんていませんよ。もしいても、村で一番腕っぷしの強いのは俺です。俺が龍神様を守って差し上げますよ。」
龍神様は、実のところ少し怖かったのです。村を守っていたとはいえ要らぬ誤解を生んでいたことも知っていました。それで自分が人間たちに畏怖される存在だと、目の当たりにすることが。しかし、龍平はそんな龍神様を守ると宣言しました。龍神様にとってそれは心を動かすとても大きな一言でした。
「...そうだな。私も一緒に村に行くとしよう。」
「おお。決めて下さいましたか。」
「龍平の親代わりの人にご挨拶もしたいしなぁ。」
「それはいつもお世話になってます的な挨拶ですよね?」
「もちろん結婚の挨拶だぁ。」
「やっぱり一緒に行くのやめようかな...。」
「むぅすまん龍平冗談だぁ。さ、一緒に行こう。」
「全く...。では行きましょうか。」
大晦日。龍平と龍神様はそろって村に降りました。龍神様の心配も杞憂で、龍平の言った通り龍神様を邪険に扱うものはいませんでした。それでも少し緊張しいな龍神様の隣にはずっと龍平が付いておりました。そして年が明けて、最初に龍平にあいさつをしたのはもちろん龍神様でした。
「龍平ぃ!年越しだぞぉ!?新しい年の始まりだぞぉ!?神と共に過ごした方がご利益あると思わんかぁ!?」
そう、龍平は普段は龍神様の屋敷で暮らしているとはいえ、村に自分の居場所はあるのです。家族はいないとはいえ、家族同様に大事にしている村民がいます。そんな家族のような人と一緒に年越しを過ごしたいと思うのはごく普通のこと。しかしそれを良しとしないのが龍神様でした。龍神様にとって龍平は嫁、つまりは家族です。龍平同様家族と共に過ごしたいと思うのもまたごく普通のことでした。
「龍神様...俺も村の人と過ごしたいんですよ。」
「むぅ、そんなの分かっておるわぁ。だがそれでも私は龍平と共に過ごしたいのだぁ。年が明けてから村へ帰るのでは駄目なのかぁ?」
「それを言うなら、年が明けてから帰ってくるのでは駄目なのですか?」
「むぅ!龍平ぃ~。」
同じことの繰り返し。埒が飽きません。本当は龍平も龍神様も、お互いがお互いの気持ちをちゃんと分かっています。分かってますがだとしても、お互いどうしても譲れないのです。
「私は年が明けて、龍平に一番にあけましておめでとうと言いたいのだぁ。」
「俺は年が明けるまで村のみんなとゆっくり過ごしたいのです。」
「むぅぅぅ埒が明かんなぁ。」
「どちらかが折れるしかないのでしょうが...あ。そうだ。」
どちらの意見も相反するのであれば、どちらかが折れるしかありません。どうしたものかと悩んでいましたが、ふと龍平はとある案を思いつきました。
「龍神様も一緒に村に来てはどうですか?」
「私が、村にぃ?」
「はい。守るべき村の民と触れ合ってはいけないと言った決まりでもあるのですか?もぐら君は村の子どもとしょっちゅう一緒に遊んでいるみたいですが。」
「いや、村の者と触れ合ってはいけない決まりなどない。ただ神として、引くべき一線を引いていただけだぁ。」
「それなら、大晦日くらい、その一線、踏み越えてもいいのでは?」
龍神様と一緒に村に行く。これなら龍平は年が明けるまで村の人とゆっくり過ごせますし、龍神様は年が明けて一番に龍平にあけましておめでとうを言えます。今まで何度も龍平は村に帰っていましたが、龍神様は一度も村に来たことはありませんでした。それ自体特に疑問にも思っていませんでしたが、大晦日くらい、神様が村に降りてもいいはずです。
「むぅ...確かにそうだな。しかし私が行って、村の人は良く思わないのではないだろうかぁ?」
「はは。今まで村に帰っていたのは村の人に龍神様は村を守っておられると、誤解を解くためだと言ったでしょう?今の村に龍神様を邪険に扱う者なんていませんよ。もしいても、村で一番腕っぷしの強いのは俺です。俺が龍神様を守って差し上げますよ。」
龍神様は、実のところ少し怖かったのです。村を守っていたとはいえ要らぬ誤解を生んでいたことも知っていました。それで自分が人間たちに畏怖される存在だと、目の当たりにすることが。しかし、龍平はそんな龍神様を守ると宣言しました。龍神様にとってそれは心を動かすとても大きな一言でした。
「...そうだな。私も一緒に村に行くとしよう。」
「おお。決めて下さいましたか。」
「龍平の親代わりの人にご挨拶もしたいしなぁ。」
「それはいつもお世話になってます的な挨拶ですよね?」
「もちろん結婚の挨拶だぁ。」
「やっぱり一緒に行くのやめようかな...。」
「むぅすまん龍平冗談だぁ。さ、一緒に行こう。」
「全く...。では行きましょうか。」
大晦日。龍平と龍神様はそろって村に降りました。龍神様の心配も杞憂で、龍平の言った通り龍神様を邪険に扱うものはいませんでした。それでも少し緊張しいな龍神様の隣にはずっと龍平が付いておりました。そして年が明けて、最初に龍平にあいさつをしたのはもちろん龍神様でした。
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