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季節話
龍神様と木
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いつものように龍神様はどこかへ出かけ、その帰りを屋敷で待っていた時のことでした。ふと庭を見ると、黒髪の美しい美女が庭の木の前に立っていたのです。
「え...って、あ、蛇神様?」
「龍平よ、久しいな。」
その女性は蛇神様、龍神様の母親でした。龍平の声にしとやかに微笑みました。
「蛇神様はなぜここに?龍神様なら出掛けていますが。」
「ふふ、理由などないわ。ただ何となく来たくなったのよ。邪魔だというなら帰るがな。」
「邪魔だなんて!とんでもない!それにしても、なぜ屋敷に入らないのですか?そこには木しかありませんが...。」
「あぁ、私は木と対話出来るのでな。少し会話をしておったのじゃ。」
蛇神様は心の声を聞くことが出来る能力を持っています。以前龍平も蛇神様に心を読まれ恥ずかしい思いをしたのですが、この力の応用で植物とも対話が出来るのでした。
「へぇ...木と対話できるなんてすごいですね。木はなんと言っていますか?」
「この間龍平がぶつかってきて痛かったと言っているぞ。」
「あ、こないだよろけた時...すみません。」
「ふふ、木も笑っておる。怒ってはいないようじゃの。」
蛇神様は見た目は慎ましやかな美人ではありますが、内面は悪戯好きな少女のようなところがあります。そんな人柄もあってか、神様でありながら龍平はあまり物怖じせず他愛もない話が出来ています。
「普段の生活などお主らに聞いても答えてくれぬからな。植物に聞く方が早いわい。それにしても...龍平は全然絆されておらんな。」
「え。」
「龍神があんなに愛を囁いても『あーはいはい』とは。冷たいというか、ここまで行くとあっぱれと言うか。」
「あ、い、いや違っ...わないけど!ちょっと、恥ずかしいんでやめて下さい!」
「ん?『実はたまに照れて顔赤くしてたりするのバレたらどうしよう?』?ほぉ!見えないところで照れているのか、脈はありそうじゃな。」
「勘弁してください!」
龍平はついに羞恥に耐え切れず屋敷内に逃げ込みました。蛇神様は悪戯好きな面もありつつ、下世話なところもあります。母親として子どもの恋路を応援するような、茶化すような、楽しむようなものですが、当人である龍平はたまったものではありません。
「でもまぁ...何だかんだ幸せそうじゃな。これからも2人のこと見守ってやっててくれ。」
蛇神様の言葉に、風も吹いていないのに木が揺れました。まるで「任せて」とでも言うように揺れた木に、蛇神様は優しく微笑みました。
「え...って、あ、蛇神様?」
「龍平よ、久しいな。」
その女性は蛇神様、龍神様の母親でした。龍平の声にしとやかに微笑みました。
「蛇神様はなぜここに?龍神様なら出掛けていますが。」
「ふふ、理由などないわ。ただ何となく来たくなったのよ。邪魔だというなら帰るがな。」
「邪魔だなんて!とんでもない!それにしても、なぜ屋敷に入らないのですか?そこには木しかありませんが...。」
「あぁ、私は木と対話出来るのでな。少し会話をしておったのじゃ。」
蛇神様は心の声を聞くことが出来る能力を持っています。以前龍平も蛇神様に心を読まれ恥ずかしい思いをしたのですが、この力の応用で植物とも対話が出来るのでした。
「へぇ...木と対話できるなんてすごいですね。木はなんと言っていますか?」
「この間龍平がぶつかってきて痛かったと言っているぞ。」
「あ、こないだよろけた時...すみません。」
「ふふ、木も笑っておる。怒ってはいないようじゃの。」
蛇神様は見た目は慎ましやかな美人ではありますが、内面は悪戯好きな少女のようなところがあります。そんな人柄もあってか、神様でありながら龍平はあまり物怖じせず他愛もない話が出来ています。
「普段の生活などお主らに聞いても答えてくれぬからな。植物に聞く方が早いわい。それにしても...龍平は全然絆されておらんな。」
「え。」
「龍神があんなに愛を囁いても『あーはいはい』とは。冷たいというか、ここまで行くとあっぱれと言うか。」
「あ、い、いや違っ...わないけど!ちょっと、恥ずかしいんでやめて下さい!」
「ん?『実はたまに照れて顔赤くしてたりするのバレたらどうしよう?』?ほぉ!見えないところで照れているのか、脈はありそうじゃな。」
「勘弁してください!」
龍平はついに羞恥に耐え切れず屋敷内に逃げ込みました。蛇神様は悪戯好きな面もありつつ、下世話なところもあります。母親として子どもの恋路を応援するような、茶化すような、楽しむようなものですが、当人である龍平はたまったものではありません。
「でもまぁ...何だかんだ幸せそうじゃな。これからも2人のこと見守ってやっててくれ。」
蛇神様の言葉に、風も吹いていないのに木が揺れました。まるで「任せて」とでも言うように揺れた木に、蛇神様は優しく微笑みました。
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