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季節話
龍神様と黒髪
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夏の暑さが少し落ち着いてきたころのお話。龍平の住む龍神様の屋敷に小さな来訪者がやって来ました。
「りゅうへーい、久しぶりー!」
「えっ、モグラ君?」
龍平がモグラと呼ぶ少年は龍神様の友で、可愛いらしい見た目をしていますがこれでも龍神様に匹敵するほどの力を持つ、れっきとした神様です。
「えっと、今日は何をしに?」
「悪戯をしに来たよ~!」
「帰ってもらえる?」
以前同じように悪戯をしに屋敷を訪れた時、龍平は衣服を縮められ、龍神様とひと悶着あったのでモグラの悪戯には身構えるものがあるのです。
「辛辣なことを言わないでよ~。今日はね、ちょっと試したいこともあるんだ!」
「前科があるので...。それで、試したいこととは?」
「うん。僕の力ってものの大きさを変えることでしょ?応用したら長さを変えることも出来ないかな~って思って!」
「長さ?」
「うん!家の柱にしようと思った木が少し短いとか、赤ん坊のおしめにしようと思った布が少し短いとかってことが僕の村であってね。長さが変える力もあればより村を豊かにしてあげられるんじゃないかと思って!」
龍平はモグラの言葉に、村のことを本気で思い遣る心遣いを感じました。そしてそんなまっすぐな言葉を聞いてしまったがばかりに、龍平はモグラが一番に発した「悪戯しに来た」という言葉について考えることをやめてしまっていました。
「そっか...。俺で良ければその試したいこと?も協力するよ。」
「本当!?わーい!じゃあ早速!」
モグラがそう言った瞬間、龍平の耳にも掛からないほどの短い黒髪が、まるで美しい女性のものかの様に背中までさらりと伸びました。
「えっ、髪が!?」
「わーい成功だ!じゃあ僕帰るね!」
「えっ!?待って!?戻して!?」
「うーん...なるほど、無理だね!」
「無理とは!?」
「さっきも言ったと思うけど、僕の新しい力を試したかったんだよ。試して分かったけど、長くすることは可能でも元に戻すのは出来ないみたい。龍平のおかげで僕の力について分かってきたよ!ありがとうね!」
「それはどういたしまして...って、え!?じゃあ戻せないってこと!?」
「そうなる!じゃあ僕帰るね!付き合ってくれてありがと~!」
「えっ!?モグラくん!!」
モグラは嵐の様に悪戯するだけすると去っていきました。その場に置き去りにされた龍平はしばらく動くことが出来ず、その場に突っ立っていました。そこに、
「りゅ、龍平かぁ?お主ここで何をしておる...というか、その髪はモグラの悪戯かぁ?ふむ、黒くて長い髪も、龍平は似合うぞぉ。愛い印象より、美しいという印象になったなぁ。」
返ってきた龍神様がやって来ました。龍神様は龍平の一風変わった姿を見て、卑下することなくいつものように愛を告げます。しかしその言葉を聞く龍平の様子はいつもと違いました。
「龍神様...。」
「むぅ?どうした龍平、そんなに力なく項垂れおって。」
「...髪の毛、切っていただけませんか...?」
龍平はその後、背中まで伸びた髪を龍神様に「勿体ない」と言われながらも切ってもらい、やっといつもの様子に戻りました。そしてその後、モグラから「長くすることも出来るなら短くすることも出来るから、元に戻すんじゃなくて短くすればよかったって気づいたよ」という文が送られて来て白目をむくのでした。
「りゅうへーい、久しぶりー!」
「えっ、モグラ君?」
龍平がモグラと呼ぶ少年は龍神様の友で、可愛いらしい見た目をしていますがこれでも龍神様に匹敵するほどの力を持つ、れっきとした神様です。
「えっと、今日は何をしに?」
「悪戯をしに来たよ~!」
「帰ってもらえる?」
以前同じように悪戯をしに屋敷を訪れた時、龍平は衣服を縮められ、龍神様とひと悶着あったのでモグラの悪戯には身構えるものがあるのです。
「辛辣なことを言わないでよ~。今日はね、ちょっと試したいこともあるんだ!」
「前科があるので...。それで、試したいこととは?」
「うん。僕の力ってものの大きさを変えることでしょ?応用したら長さを変えることも出来ないかな~って思って!」
「長さ?」
「うん!家の柱にしようと思った木が少し短いとか、赤ん坊のおしめにしようと思った布が少し短いとかってことが僕の村であってね。長さが変える力もあればより村を豊かにしてあげられるんじゃないかと思って!」
龍平はモグラの言葉に、村のことを本気で思い遣る心遣いを感じました。そしてそんなまっすぐな言葉を聞いてしまったがばかりに、龍平はモグラが一番に発した「悪戯しに来た」という言葉について考えることをやめてしまっていました。
「そっか...。俺で良ければその試したいこと?も協力するよ。」
「本当!?わーい!じゃあ早速!」
モグラがそう言った瞬間、龍平の耳にも掛からないほどの短い黒髪が、まるで美しい女性のものかの様に背中までさらりと伸びました。
「えっ、髪が!?」
「わーい成功だ!じゃあ僕帰るね!」
「えっ!?待って!?戻して!?」
「うーん...なるほど、無理だね!」
「無理とは!?」
「さっきも言ったと思うけど、僕の新しい力を試したかったんだよ。試して分かったけど、長くすることは可能でも元に戻すのは出来ないみたい。龍平のおかげで僕の力について分かってきたよ!ありがとうね!」
「それはどういたしまして...って、え!?じゃあ戻せないってこと!?」
「そうなる!じゃあ僕帰るね!付き合ってくれてありがと~!」
「えっ!?モグラくん!!」
モグラは嵐の様に悪戯するだけすると去っていきました。その場に置き去りにされた龍平はしばらく動くことが出来ず、その場に突っ立っていました。そこに、
「りゅ、龍平かぁ?お主ここで何をしておる...というか、その髪はモグラの悪戯かぁ?ふむ、黒くて長い髪も、龍平は似合うぞぉ。愛い印象より、美しいという印象になったなぁ。」
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「...髪の毛、切っていただけませんか...?」
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