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季節話
龍神様と浴衣
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夏真っ盛りの暑い夜、龍平は少しでも暑さを和らげるためにと龍神様が用意した浴衣を着て縁側に座っておりました。
「はぁ~、毎日暑いですけど夜は少しは涼しいですかね。」
「今足元に氷を置いたからなぁ。」
「いつの間に!?」
「くはは、ほら、扇いでやろう。どうだぁ?涼しいかぁ?」
「はい、涼しいですよ。」
縁側に座った龍神様は隣に座る龍平をうちわであおぎます。氷のおかげで冷えた涼しい風が龍平の頬をそよそよと撫で、龍平は心地よさそうに目を瞑ります。
「気持ちよさそうな顔をするなぁ。どれ、身体にも扇いでやろう。そのまま目を瞑っておれぇ。」
「え、いや目は開けますよ。」
「なんだ、目を閉じた愛い顔を眺めていようと思ったのに。」
「目開けてないと貴方何するか分かりませんからね。」
「むぅ。」
龍神様は少し口をとがらせますが、すぐにふふっと笑みをこぼすと龍平の体に向け扇ぎました。すると扇いだ風が龍平の来ている浴衣のすそをふわっと巻き上がらせました。龍神様はすぐに龍平の表情を見ましたが、龍平は気づいている様子はありません。
「りゅ、龍平、どうだぁ涼しいかぁ?」
「え?涼しいですよ?どうしたんですか声上ずらせて。」
「い、いいやいいや、なんでもないぞぉ。」
「そうですか?」
龍平と会話しながらも龍神様の目はちらりと見える龍平のはだけた足元に向けられています。龍神様が扇ぎながらも龍平のたくましい筋肉のついた足を見ていると、龍平が柔らかい口調で口を開きました。
「龍神様、改めて浴衣、ありがとうございます。これのおかげ...それから龍神様が扇いでくださるので暑くてたまらない夏も今はあまり嫌いじゃないです。俺に尽くしてくれて、ありがとうございますね。龍神様の嫁になるつもりはありませんが感謝はしてますよ。」
龍平の言葉を聞いた龍神様は軽く言葉を失うと、ぎゅっと目を瞑りました。そしてゆっくり目を開けると、龍平の方を見ていつもと同じようにおどけた口調で話します。
「嫁になるつもりはないとはっきり言いおったな、龍平よ。だが感謝の言葉は伝わったぞぉ。こちらこそいつも愛い顔を見せてくれて感謝しておるぞぉ。」
「俺は普通の顔をしてるだけです。」
「くはは、では普通の顔が愛いということだなぁ。...お、龍平よ、浴衣の裾がはだけておるぞぉ。」
「え?あ、本当だ。」
龍神様は龍平が裾を直すのを一瞬名残惜しく見ましたが、一時期の背徳的な嬉しさよりこれからもずっと隣で感じる幸せを選んだ選択に後悔はないのでした。
「はぁ~、毎日暑いですけど夜は少しは涼しいですかね。」
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「くはは、ほら、扇いでやろう。どうだぁ?涼しいかぁ?」
「はい、涼しいですよ。」
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「気持ちよさそうな顔をするなぁ。どれ、身体にも扇いでやろう。そのまま目を瞑っておれぇ。」
「え、いや目は開けますよ。」
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「むぅ。」
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「え?涼しいですよ?どうしたんですか声上ずらせて。」
「い、いいやいいや、なんでもないぞぉ。」
「そうですか?」
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「龍神様、改めて浴衣、ありがとうございます。これのおかげ...それから龍神様が扇いでくださるので暑くてたまらない夏も今はあまり嫌いじゃないです。俺に尽くしてくれて、ありがとうございますね。龍神様の嫁になるつもりはありませんが感謝はしてますよ。」
龍平の言葉を聞いた龍神様は軽く言葉を失うと、ぎゅっと目を瞑りました。そしてゆっくり目を開けると、龍平の方を見ていつもと同じようにおどけた口調で話します。
「嫁になるつもりはないとはっきり言いおったな、龍平よ。だが感謝の言葉は伝わったぞぉ。こちらこそいつも愛い顔を見せてくれて感謝しておるぞぉ。」
「俺は普通の顔をしてるだけです。」
「くはは、では普通の顔が愛いということだなぁ。...お、龍平よ、浴衣の裾がはだけておるぞぉ。」
「え?あ、本当だ。」
龍神様は龍平が裾を直すのを一瞬名残惜しく見ましたが、一時期の背徳的な嬉しさよりこれからもずっと隣で感じる幸せを選んだ選択に後悔はないのでした。
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