27 / 69
季節話
龍神様と露天風呂
しおりを挟む
龍神様と龍平が暮らす屋敷は二人で暮らすには広すぎるくらいの敷地、二人で食べきれないほどの野菜が作れる畑、二人で管理するのは骨が折れるほどの緑が生い茂っています。そんな龍神様の土地に、また新たな自然の恵みが生まれました。
「龍平、こっちに来てみろぉ。」
「なんですかー?」
龍神様に呼ばれるがまま裏庭に来た龍平の目の前には、ほかほかと湯気の上がる白濁の温泉が構えて居りました。
「えっ!?温泉!?昨日までこんなの無かったのに!」
「くはは、当然だぁ。今しがた掘り出したのだからな。」
「なぜ!」
「そりゃぁ、龍平と共に入りたかったからだなぁ。」
「さ、埋め立てますかな。良い鍛錬になりそうだ。」
龍平は自慢の筋肉をモリッと起こすと袖をまくり、温泉を埋め立てる準備は万全とばかりに意気揚々と温泉に向かって歩き出しました。
「ま、待て待て待て龍平よぉ。分かった、悪かった。一緒に入るのは諦めようぞぉ。埋め立てたいというのであればそうしても構わん。だがせめて一度くらいは入ってくれ。これでも龍平の体を癒してほしいという気持ちに嘘はないのだぁ。」
「...別に疑ってなんていませんよ。確かに一度も入らずに埋め立ててしまうのは勿体ないですし、一人でなら入りますよ。」
「おお、では早速、」
「でも俺の前に龍神様です。」
「なにぃ?」
龍平は龍神様に顔をぐっと近づけ、有無を言わせぬ強い口ぶりでまっすぐに言います。
「これ掘り起こすの、大変だったでしょう?神の力を使えば大したことないのかもしれませんが、お疲れな龍神様が先に体を癒してください。」
「龍平...。」
「それに、俺の後に龍神様が入るとなると、何か変なこと考えそうで嫌です。」
「龍平お主私を何だと思っておるぅ。そのような変態な真似をするものか。」
龍神様は気を悪くしたように少し怒って言います。でも龍神様は龍平を本気で怒ることは無いので、心の中では怒ってなどいません。そしてそれを龍平も分かっているので、遠慮なく本心もとい冗談も言えます。
「冗談です。さ、入ってください、一緒には入りませんが背中くらいは流しますよ。」
「なっ!それは本当か龍平。ならばそのまま...」
「あ、なんかやましいこと考えてそうなのでやっぱりやめます。」
「龍平ぃ!」
結局この日、龍神様は一人で露天風呂に入り龍平も一人で入りました。龍平が入っている間、欲求に抗えず覗いてしまった龍神様ですがあっさり龍平に気づかれてしまい、次の日にはせっかく掘り出した露天風呂を埋め立てられてしまったそうな。
「龍平、こっちに来てみろぉ。」
「なんですかー?」
龍神様に呼ばれるがまま裏庭に来た龍平の目の前には、ほかほかと湯気の上がる白濁の温泉が構えて居りました。
「えっ!?温泉!?昨日までこんなの無かったのに!」
「くはは、当然だぁ。今しがた掘り出したのだからな。」
「なぜ!」
「そりゃぁ、龍平と共に入りたかったからだなぁ。」
「さ、埋め立てますかな。良い鍛錬になりそうだ。」
龍平は自慢の筋肉をモリッと起こすと袖をまくり、温泉を埋め立てる準備は万全とばかりに意気揚々と温泉に向かって歩き出しました。
「ま、待て待て待て龍平よぉ。分かった、悪かった。一緒に入るのは諦めようぞぉ。埋め立てたいというのであればそうしても構わん。だがせめて一度くらいは入ってくれ。これでも龍平の体を癒してほしいという気持ちに嘘はないのだぁ。」
「...別に疑ってなんていませんよ。確かに一度も入らずに埋め立ててしまうのは勿体ないですし、一人でなら入りますよ。」
「おお、では早速、」
「でも俺の前に龍神様です。」
「なにぃ?」
龍平は龍神様に顔をぐっと近づけ、有無を言わせぬ強い口ぶりでまっすぐに言います。
「これ掘り起こすの、大変だったでしょう?神の力を使えば大したことないのかもしれませんが、お疲れな龍神様が先に体を癒してください。」
「龍平...。」
「それに、俺の後に龍神様が入るとなると、何か変なこと考えそうで嫌です。」
「龍平お主私を何だと思っておるぅ。そのような変態な真似をするものか。」
龍神様は気を悪くしたように少し怒って言います。でも龍神様は龍平を本気で怒ることは無いので、心の中では怒ってなどいません。そしてそれを龍平も分かっているので、遠慮なく本心もとい冗談も言えます。
「冗談です。さ、入ってください、一緒には入りませんが背中くらいは流しますよ。」
「なっ!それは本当か龍平。ならばそのまま...」
「あ、なんかやましいこと考えてそうなのでやっぱりやめます。」
「龍平ぃ!」
結局この日、龍神様は一人で露天風呂に入り龍平も一人で入りました。龍平が入っている間、欲求に抗えず覗いてしまった龍神様ですがあっさり龍平に気づかれてしまい、次の日にはせっかく掘り出した露天風呂を埋め立てられてしまったそうな。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる