龍神様の住む村

世万江生紬

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季節話

龍神様とばれんたいん

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 「龍平、ちょこれいとを食べないかぁ?」

「ちょこれいと?とは何ですか?」

龍神様は不自然にもじもじとしながら龍平に話しかけますが、龍平はちょこれいとが何か分からずぽかんとしています。

「ちょこれいと、というのは西洋のお菓子だなぁ。甘くておいしいのだぁ。どうだ?食べないかぁ?」

「はぁ...何なのかはまだ分かりませんが、龍神様が俺に危険なものを食べさせたりはしないでしょうし、頂きます。」

「龍平...そんな無意識に私のことを信頼して...私も愛しているぞぉ。」

「なっ!どうしてそうなるんですか。そんなこと言うなら食べませんよ!」

龍平は顔を赤くして叫びます。龍神様はその顔を見てまた口に出しそうになりましたが、龍平にちょこれいとを食べてもらうため、我慢します。

「じゃあ、はい、食べるがいい。」

「何か企んでそうなのが怖いですね...。」

龍平は訝しみながらもちょこれいとを一口食べたその瞬間、目を輝かせ、龍神様に向かって高ぶった声で伝えました。

「何ですかこれ!すごく甘くておいしいです!」

「むふふふ...。」

「なんでそんな気持ち悪く笑うんですか。」

「気持ち悪いとは失礼だなぁ。だがまぁ事実かぁ。龍平が今日、私のちょこれいとを受け取り、食べてくれたことが嬉しくてのぉ。」

「?どういうことですか?」

「今日はな、未来ではばれんたいんと言われておってのぉ。好いた者にちょこれいとを贈る風習があるのだぁ。だから今日、ちょこれいとを龍平に贈り、龍平はそれを食べた。これほど嬉しいことはないぞぉ。」

「ふうん。そうなのですね。」

「お主何か反応薄くないかぁ?」

龍神様は、てっきり龍平が未来の風習を伝えられないままちょこれいとを食べさせられたことに怒るか、くだらないと呆れるものと思っていたので少し拍子抜けしました。

「だって、龍神様、俺に毎日のように...その、愛してるだの愛いだの言うじゃないですか。さすがにちゃんと伝わってます。俺がそれに答えるかは別問題ですけどね!?嫁になったと認めたわけでもないですし!でも、そんな龍神様がせっかく作ってくれたちょこれいと、食べたこともない存在も知らないものですけど、食べないわけにはいかない、と思うくらいには龍神様のことをおもっていますよ。」

「龍平...抱きしめて良いか?」

「真顔で真剣に言うのやめて下さい。嫌です。」


 龍平と龍神様はこの後二人で仲良くちょこれいとを食べましたが、龍平と手をつなごうと龍神様が伸ばした手は、龍平の鍛え抜かれた筋肉による回避動作で華麗にかわされたのでした。
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