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双子と片割れの存在
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「死んでみろよ、意地でも止めてやるから。」
俺は昨日双子にそう言った。死にたいなら死ねばいい、でも俺は死なせたくないから死なせない。そんな小学生みたいな思考に双子は一瞬毒気を抜かれたようだった。けどその後、
「じゃあ死なせてもらう。止められるとは思えないけど。」
「許可はもらいましたから。これで懸念なく死ねます。」
なんて突っぱねた。双子は俺がからかってると、「本気で死のうなんてどうせ考えてないんだろうな」って思ってるとか思ってんだろう。
でも俺は本気で死にたいと思う気持ちが分かる、だから、双子のことも本気で死なせない。
「ドスン!!!!」
俺が朝ごはんの用意をしていた時、双子に用意した部屋から大きな音がした。俺はようやくか、と思いつつ双子の部屋に向かうと双子は床に倒れていた。
「「いたたた...。」」
俺は倒れている双子に向けて声をかける。
「よう、いいお目覚めだな。」
「アンタ...なにしたんだよ、ボクたちのシーツに...!」
陽人が俺をキッと睨む。その目は少し涙がにじんでいて、落ちたのが余程痛かったのか、はたまた俺に対する怒りが涙に現れているのかは分からなかったが、俺に上目遣いで睨んできている様子に少し優越感を感じた。
「何って、ちょっと切り込みを入れただけだよ。昨日の晩お前たちがちゃんと寝たのを確認した後な。この部屋には柱はあるけどロープとかひもは無い。なら首を吊るにはシーツを使うしかないからな。お前らがシーツ使って首吊るだろうなっていうのは分かってた。だからあらかじめ切れ目入れておいて、ある程度重みがかかると破ける様にしてたんだよ。切れ目、気づかなかったんだな。」
「そこまで読んでて優雅にオレたちが失敗するのを待ってたってことですか...。」
「言ったはずだ。俺はお前たちを死なせない。意地でも止めてみせる。分かったら早く着替えて飯食うぞ。ちなみに、餓死されても困るから昨日は許したけど今日からは必ず飯は食ってもらう。拒否するなら手足縛って口移しで食わせる。嫌なら食え。」
「「...はい。」」
そこからは怒涛の日々だった。俺の仕事は在宅ワークで家から出なくてよかったことも幸いし、一日中双子を監視した。お風呂に入りに行った時には手首切ったりしてたし、トイレに行った隙に首吊ろうとするし、隙あらばベランダから飛び降りようとした。そしてそれを俺はすべて止めた。あえてやらせて、死なない程度のところで止めた。そうしないと死にたい気持ちが報われないから。
そんな生活が二週間ほど経った頃、俺は常々思っていた疑問を双子にぶつけた。
「なんでお前らは二人一緒に死のうとするんだ?」
双子は毎回必ず二人で死のうとしてた。一人だったなら成功していたかもしれない自殺も、二人一緒だったから止められたことが何度もある。そしてなによりどちらか一人を連れて外出しても、もう片方はおとなしく家で待っていた。その間に死のうとすれば絶対に成功していたのに。
「ボクたち二人はいつも一緒なの。死ぬときも、二人で一緒。」
「先にどちらかが逝って、それを追いかけたりもしない。それは二人一緒じゃないから。」
俺には分からないが、この二人にはこの二人なりの芯があるんだろう。お互いにとってお互いが必要で大切な存在。それは見てても分かる。分かるけど、
「じゃあなんでお互いが生きる希望にならないんだよ。」
お互いが大事な存在なら、その大事な存在のために生きていこうとか思えるものじゃないんだろうか。お互いがそう思っていたら死にたがりなんてならないだろうし。
「どっちでもいいんだよ。」
「どっちでも、いい?」
「生きていても、死んでいても、どっちでもいいんです。でも二人とも同じじゃないといけない。だから陽人が死ぬならオレも死ぬし、陽人が生きるならオレも生きるんです。」
「でもボクたちには生きていたいと思える理由が何もないの。だから『二人で一緒に死にたい』の。」
なるほどな。何となくわかった気がする。簡単に言えば、どちらか片方でも生きていたいと思える何かがあれば二人とも生きる選択肢を選ぶ。片割れの存在は死を選ぶ足枷でもあり、生を選ぶ希望でもあるわけだ。今は希望に思えないだけで。
「じゃあさ、俺のために生きてくんない?って言ったら、生きてくれる?」
「「はあ?」」
「いや、俺だってお前らの保護者なんだから、お前らのことは大事なわけよ。だから、感情的にも死んでほしくないと思う。それが理由じゃダメ?俺のこと信じてくんねぇ?」
「「...出来るわけない。」」
「え。」
「「人を信じるなんて出来るわけない!」」
「大事な人だから、なに!」
「オレたちはもう!どんな人だって信じられないんですよ!だって!」
「「お父さんとお母さんは!信じてた大事な人に殺されたんだから!」」
俺は昨日双子にそう言った。死にたいなら死ねばいい、でも俺は死なせたくないから死なせない。そんな小学生みたいな思考に双子は一瞬毒気を抜かれたようだった。けどその後、
「じゃあ死なせてもらう。止められるとは思えないけど。」
「許可はもらいましたから。これで懸念なく死ねます。」
なんて突っぱねた。双子は俺がからかってると、「本気で死のうなんてどうせ考えてないんだろうな」って思ってるとか思ってんだろう。
でも俺は本気で死にたいと思う気持ちが分かる、だから、双子のことも本気で死なせない。
「ドスン!!!!」
俺が朝ごはんの用意をしていた時、双子に用意した部屋から大きな音がした。俺はようやくか、と思いつつ双子の部屋に向かうと双子は床に倒れていた。
「「いたたた...。」」
俺は倒れている双子に向けて声をかける。
「よう、いいお目覚めだな。」
「アンタ...なにしたんだよ、ボクたちのシーツに...!」
陽人が俺をキッと睨む。その目は少し涙がにじんでいて、落ちたのが余程痛かったのか、はたまた俺に対する怒りが涙に現れているのかは分からなかったが、俺に上目遣いで睨んできている様子に少し優越感を感じた。
「何って、ちょっと切り込みを入れただけだよ。昨日の晩お前たちがちゃんと寝たのを確認した後な。この部屋には柱はあるけどロープとかひもは無い。なら首を吊るにはシーツを使うしかないからな。お前らがシーツ使って首吊るだろうなっていうのは分かってた。だからあらかじめ切れ目入れておいて、ある程度重みがかかると破ける様にしてたんだよ。切れ目、気づかなかったんだな。」
「そこまで読んでて優雅にオレたちが失敗するのを待ってたってことですか...。」
「言ったはずだ。俺はお前たちを死なせない。意地でも止めてみせる。分かったら早く着替えて飯食うぞ。ちなみに、餓死されても困るから昨日は許したけど今日からは必ず飯は食ってもらう。拒否するなら手足縛って口移しで食わせる。嫌なら食え。」
「「...はい。」」
そこからは怒涛の日々だった。俺の仕事は在宅ワークで家から出なくてよかったことも幸いし、一日中双子を監視した。お風呂に入りに行った時には手首切ったりしてたし、トイレに行った隙に首吊ろうとするし、隙あらばベランダから飛び降りようとした。そしてそれを俺はすべて止めた。あえてやらせて、死なない程度のところで止めた。そうしないと死にたい気持ちが報われないから。
そんな生活が二週間ほど経った頃、俺は常々思っていた疑問を双子にぶつけた。
「なんでお前らは二人一緒に死のうとするんだ?」
双子は毎回必ず二人で死のうとしてた。一人だったなら成功していたかもしれない自殺も、二人一緒だったから止められたことが何度もある。そしてなによりどちらか一人を連れて外出しても、もう片方はおとなしく家で待っていた。その間に死のうとすれば絶対に成功していたのに。
「ボクたち二人はいつも一緒なの。死ぬときも、二人で一緒。」
「先にどちらかが逝って、それを追いかけたりもしない。それは二人一緒じゃないから。」
俺には分からないが、この二人にはこの二人なりの芯があるんだろう。お互いにとってお互いが必要で大切な存在。それは見てても分かる。分かるけど、
「じゃあなんでお互いが生きる希望にならないんだよ。」
お互いが大事な存在なら、その大事な存在のために生きていこうとか思えるものじゃないんだろうか。お互いがそう思っていたら死にたがりなんてならないだろうし。
「どっちでもいいんだよ。」
「どっちでも、いい?」
「生きていても、死んでいても、どっちでもいいんです。でも二人とも同じじゃないといけない。だから陽人が死ぬならオレも死ぬし、陽人が生きるならオレも生きるんです。」
「でもボクたちには生きていたいと思える理由が何もないの。だから『二人で一緒に死にたい』の。」
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「じゃあさ、俺のために生きてくんない?って言ったら、生きてくれる?」
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「いや、俺だってお前らの保護者なんだから、お前らのことは大事なわけよ。だから、感情的にも死んでほしくないと思う。それが理由じゃダメ?俺のこと信じてくんねぇ?」
「「...出来るわけない。」」
「え。」
「「人を信じるなんて出来るわけない!」」
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