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お前の心中
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あいつは知らない、自分が過ごしてきた彼女たちとの日々を。
あいつは知らない、あいつのいない間の彼女の姿を。
その事実が、とても気味がよく感じられたが、自分はそこまで鬼でもないので、あいつに伝えたいと思う。
あいつがいなかった日々を。
もし今このノートを読んでいるのが、あいつじゃなく、彼女――それか、妹だったら、あいつにこのノートを見せてやってほしい。
あと、茶色のノートと、黒のやつも。特に黒のほうは念入りに見せてやってくれ。
あいつの焦った顔が目に浮かぶだけで、顔も心も笑顔になる。
*****
家に帰ると、來さんが心配そうな顔をして待っていた。僕は彼女に「勝手に飛び出してしまってごめんなさい」とあやまった。
記憶を取り戻すための活動は、來さんの提案で今日はしないことになった。
僕は部屋にもどり、玲央のノートを読み返した。
何度も読み返した内容のはずなのに、新たな発見が次々出てくる。これは、僕が変われた証なのだろうか。
だが、ノートを読んでいくうちに、僕の中で疑問が膨らんでいった。
だって、あまりにも玲央の性格が、思っていることが。
――來さんが話していたこととかけ離れている。
前呼んだときには、混乱していて気にならなかったことだ。表面上は普通の人間が書いたように取り繕われた文章の端々から、違和感。
彼女は、玲央のことをチャラくて女遊びの激しい人間だと言っていた。だが、優しいところもあるのだと。
でも、このノートを読む限り、彼にそんな印象は受けない。
むしろ、彼は自分に厳格で、女遊びなどしない、真面目な人間に思える。
どういうことなのだろうか。玲央が周りに見せていた姿は、本当ではなかったということか。
僕はノートを閉じ、引き出しを開けた。ノートを勢いよく投げ入れると、かたっという軽い音が聞こえた。
おかしい。この分厚い作りなら、こんな薄い板にぶつけたみたいな音がするはずはない。
僕は怪しく思い、引き出しの下の部分をなでた。奥まで撫でて、その壁に変な感触があることに気づく。襖の取っ手のようにへこんでいる。僕はそこに指を当て、左にスライドさせた。
壁が横に動く感覚があった。僕はその引き出しの扉の向こうに手を伸ばした。そこに、出っ張った感覚がある。これは、取っ手だ。
僕はそれを握り、上に引っ張った。
かこっという軽快な音とともに、板が上に上がる。
僕は板の端に指をかけ、持ち上げた。
どうやら、この引き出しは二段構造になっていたらしい。
引き出しの下に、先ほどまで僕が読んでいたノートとは別の、真っ黒なノートが入っている。
僕はそれをつかみ、開いた。
汚い文字で書きなぐられている内容に、目を走らせる。
そうだ、まずは、彼女との出会いについて語ろうか。
彼女との第一印象は最悪だった。俺は遊び人のチャラ男を演じていたし、彼女は優しい人間を装っていた。
同族嫌悪というものだろうか。俺には、彼女のことがとても気持ち悪く思えた。
彼女への印象が変わったのは、彼女と会って三か月ほどたったころだ。
妹が家に彼女を呼んだときに、妹に電話がかかってきて、二人きりになったことがあった。
その時、彼女は妹に優しい笑みを浮かべて手を振った後、ぞっとするほど無表情になったのだ。それは一瞬だったが、俺の目にははっきりと、鮮烈に映った。
「なあ、君って、あの優しい笑みって演技だったんだろ」
そのほころびが苛立たしくて、思わず俺がそう指摘すると、彼女は焦りも、ごまかしもせず、しけた顔で、言ったのだ。
「ええ、そうね」
その堂々とした態度に、俺は強くあこがれた。強い人だと思った。
本当の自分を見せるなんて怖いこと、俺にはできなかったから。本当の自分を見せて嫌われたら、どうする?
だから、必死に演技をしたし、クズになって保険を掛けた。
この瞬間、俺は俺にはできないことをやってのける彼女に、強くひかれた。
次は妹のことについて語ろう。
彼女が産まれたとき、俺はとてもうれしかった。俺の周りには俺の才能しか見ていない大人しかいなかったから、純粋である妹の存在は、俺に救いをもたらした。
でも、成長した彼女は才能しか見ない大人たちに汚されそうになっていた。無視され、存在を消されていた。
だから、俺は彼女を認識し、存在させた。
彼女がいないと、俺は心を折られ、大人たちの意のままの人形になってしまいそうだったから。
俺は、自分の為に彼女を利用した。
彼女は俺のことをしたい、それからは俺の後ろをてくてくとかわいくついてくるようになった。
そこに書かれていたのは、神代 玲央の本音だった。茶色のノートにはみじんも書かれていない、本当の気持ち。
書きなぐられていた文字には、彼の自己否定と、遥さんや來さんへの愛情がこれでもかというほど込められていた。
僕はそれを夢中で読んだ。
そして、最後のページにたどり着く。僕は、汚い文字に見入った。
俺のことを、皆チャラくて、でも、優しい人間だと思っているだろう。
でも違うのだ。それは、俺が演じていたキャラクターに過ぎないのだ。
俺は、そんな好ましい人間じゃない。
本当の俺は、醜くて汚い人間だ。
君たちの笑顔を見るたび、明るい声を聴くたび、俺は恥ずかしかった。純粋な君たちを、キャラクターを演じてだますたび、罪悪感で心臓がねじくれそうになった。
そんな素晴らしいもの、俺に向ける必要なんてない。
俺のことなど、好きにならないでくれ。
なあ、君たちは、俺がどうしてチャラ男を演じているのか知っているか?
知っているはずないよな。
妹は、俺がチャラ男になることで評判を落とし、妹への評価を上げようとしていた、なんて考えているみたいだが、そんなことはない。妹は、そんなことしなくても素晴らしい人間だ。
俺がチャラ男になった理由は、君たちに保険を掛けるためだ。
もし、本当の自分をさらけ出して、嫌われてしまったら、俺はきっと生きる希望を失う。
君たちが幸せになるためには俺のもとから離れていったほうがいいのに、こんなことを願ってしまうなんて、俺は本当にどうしようもない人間だ。
ごめんなさい。俺が産まれなければ、君たちがこんなことになることはなかった。妹は努力家だから、きっと認められていたし、彼女は心中なんてすることはなかった。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
こんなことをした俺を、どうか許さないでくれ。
あと、來。
このノートを読んでいるのが君なら。
――俺のことを忘れてくれ。
僕は、ノートを握り締め、そして、地面にたたきつけた。
「ふざけるなっ!」
頭が燃え上がって、はちきれそうだった。
僕は、こんなやつのために消えてしまおうとしていたのか。こいつはなにもわかってない。
こいつは、勘違いをしている。自分を価値のない人間だと思っている。
そんなはずないのに。
……本当に望まれているのは、お前なのに!
心の中にどうしようもないむなしさが広がって、僕はしゃがみこんだ。
頭の中に、最後に見た玲央の顔が思い浮かんだ。
あいつは、笑っていた。
あいつは、なぜ笑っていたのか、その答えが今ならわかる。
あいつは、あいつは――。
僕は床にこぶしを叩きつけた。
「ふざ、けるなぁっ……!」
來さんが、どんな気持ちでお前を待っているのか、お前は分かっているのか!
生まれて初めて、お前に存在を認められた時、どれだけ嬉しかったか!
僕の耳に、妖艶な笑みを浮かべて、愛を語った彼女の声がよみがえる。
『兄さんは、私の救世主なの』
……そうだ。來さんは、こんなやつでも、大好きで、待っているんだ。
玲央がたとえどんな奴でも、僕は消えなきゃいけない。
來さんに、玲央を返すために。
僕は冷たいまなざしでノートをにらみ、立ち上がった。窓の外は、いつの間にか暗く染まっている。雪は降っていなかった。
そろそろ寝なくちゃいけない。
僕は寝る準備をして、ベッドの中にもぐりこんだ。
目を開くと、目の前には真っ白い空間が広がっていた。周囲も同じで、陰影すらなく、どこまで空間が続いているのかわからない。前に見た夢できたところと同じだった。
「――あれ、また来たのか?」
僕は目を見張った。今の僕には世界一憎たらしい彼は、後ろに立ち、軽快な調子で言った。
「いやあ、あれから君がどうしたかってきになってたんだよ。なあ、落ち込んでるのか? 泣きわめいたか? 消えたくないって、無様に願ったか? 俺としては、早く記憶を取り戻してほしいところなんだが――」
「――嘘をつくな」
「え?」
僕は振り返る。目を見張った玲央をにらみつけて、僕は低い声でいった。
「嘘をつくなよ、神代 玲央。本当は記憶を取り戻してほしくなんかないくせに」
「――!」
驚く彼に詰め寄り、僕は玲央の胸ぐらをつかんだ。
そのまま感情に任せ、喉が悲鳴を上げるくらい大きな声で叫ぶ。
「お前はどうせ、來さんたちに自分がふさわしくないとか思ってるんだろ! でも、生きている限り離れられないから、会いたくなってしまうから――こうやって、僕に任せようとしてるんだろ!」
そうだ。あの時、玲央が笑った理由はそれだ。彼はあの時、自分の後任が出来たと思って安心していたのだ。
自分なんかよりも、僕のような他人のほうが、二人にふさわしいなんて思って。
玲央は苦しそうな顔をしながら、それでも、自分の顔に愛想笑いを張り付けた。
「はあ? なにをいってるんだよ。記憶を取り戻してほしくないなら、あの屋上の場所なんて教えるはずないだろ」
「ああ、そうだね。でも、言っておけば記憶を取り戻したくない僕はきっとあの屋上に近づかなくなるだろう!? 偶然の事故は防げる! お前はそういうやつだ!」
そうだ。僕はこいつの人生を追体験したからわかる。
こいつは自分を信用していない。だから、一度出した結論を何回も思い出しては考えて、思い出しては考えて、すこしの不確定要素もないように、徹底的に可能性をつぶす。
自分のシナリオを覆す可能性を。
それでも、彼は黙ったままだった。僕は舌打ちをして、彼を突き飛ばす。
うつむいたままの彼を見て、僕はふと納得した。
「なあ、お前。お前は、僕にいったよな。『君もわかっているんだろう? 自分なんか消えたほうがいいと。自分なんか必要とされていないんだと。わかっているなら早く消えてしまえ。粉々になってしまえ』」
「……」
「あれ、ずっと変だなって思ってたんだよ。確かに僕も思ってたよ、ああいうことは。でも、なんかリアルだったなあって。あれさあ、お前がずっと、思ってたことなんだろ?」
「……っ!」
彼は肩を震わせた。どうやら図星だったらしい。何も答えない玲央に、僕はまた腹がたった。
「あのなあ、お前は知ってるのか!? 來さんがお前をどんな気持ちで待ってるか――」
「知ってるよっ!」
僕は驚いた。玲央はこぶしを握り締め、感情を抑えた声でつぶやいた。
「そんな、鈍感じゃない……。知ってるよ、そんなこと。でも、いやなんだ。彼女らが俺の隣にいるのは。彼女たちには、きっともっとふさわしい人間がいる。俺なんかより、もっと」
「……」
「俺さあ、遥と來には、幸せになってほしいんだよ……」
弱弱しくつぶやかれる神代 玲央の本音。それは強い、強い愛情だった。
幸せになってほしい。
それは、僕もずっと願っていることだ。來さんと遥さん。彼女たちは素晴らしい人間で、幸せになるべき人なんだから。
でも。
僕は、暗い瞳で地面を見る玲央に、穏やかな笑みを向けた。そして、朗らかな声でいう。
「それなら、簡単じゃないか!」
「……は……?」
あぜんとした顔をする彼に、僕は胸を張り、得意げな顔で言って見せる。
「兄さんは、私の救世主なんだ」
「……」
「兄さんは小さい頃から優秀で、神代家の跡取りとして有名だったの。それに比べて、私は、勉強も運動もできないし、おまけに体も弱くて、全てにおいて兄さんより劣っていた。そんな私を一族の恥と思ったのか、みんなは私を存在しないものとして扱った。外出を禁止し、私に関する一切の情報を消去し、みんなで私がいないみたいに無視をした」
手を開き、舞台の上で演じる役者のように、白い空間に声を響かせ、來さんの気持ちを想像する。
そして、それを声にのせる。彼に、気持ちが伝わるように。
「だけど、だけどね、兄さんだけは、私を認識して、覚えていてくれたの。兄さんのおかげで、私は存在できたんだ」
「――」
「だからね、私は、私を幸せにしてくれた兄さんに、幸せになってほしいの」
そして、からっとした、雨が降った後の空のような笑みを浮かべる。
これで、僕が伝えたかったことは、そう。
「來さんは、お前といて幸せだったってよ」
「……!」
「來さんはお前にも幸せになってほしいと思ってる。お前の思いは一方通行じゃない。なあ、お前はどうしたいと思ってる? お前の幸せって、何?」
茫然としていた彼の頬に、一筋涙が流れる。それを皮切りに、彼の目には大粒の涙が浮かんだ。際限なく現れるそれを指で拭い、彼は嗚咽をしながら震える声でいった。
「幸せになっても、いいのか……?」
「ああ、そうだね。お前は今まで、人を幸せにしてきたんだから」
「でも、俺は醜くて、汚くて……あの子たちとは、釣り合わない」
「もう、うっせーな。そんなのお前が決めることじゃないし」
「でも……」
「ああああっ! もう早く言えよ!」
僕は彼の肩をつかみ、ガンガン振り回した。
彼は「ああああ」と目を回しながら、僕に問いかけた。
「なんでっ、なんで君は、そこまで記憶を取り戻したいんだっ? 記憶を取り戻したら、君は消えてしまうのに」
ピタリ、と動きが止まる。玲央は怪訝そうな顔で、こっちを見た。
僕は彼から手を放し、うつむいた。顔を覗き込んで来ようとする彼の頭をつかみ、頬を染めて小さな声でつぶやく。
「……から」
「? ごめん、聞こえなかった……いたいいたいいたい」
僕は彼の頭をつかんでいた手を放し、後ろで組んだ。
顔が赤くなっている感覚がある。
僕はそっぽをむいて、勢いに任せて叫んだ。
「そうすれば、來さんたちが笑ってくれるかなって思ったからっ!」
「はあ?」
玲央は口元を引きつらせ、本当に分からないといった風に聞き返した。
僕は唇をかみ、彼をにらんで言う。
「だって、お前が返ってきたほうが喜ぶでしょ。お前がいない間、僕は遥さんや來さんに救われたんだ。だから……恩返しがしたくて……」
「そのために、消えるのか? 君は? はははははっ! くるってるな!」
玲央さんはお腹を抱え、笑い転げた。屈辱である。
僕はむっとして、彼を指さし、真っ赤な顔で抗議した。
「そんな笑わなくてもいいじゃないか! 僕だって彼女たちには幸せになってもらいたいんだから!」
「いやいや。くるってるっていうのはそのことを言ってるわけじゃないって」
彼はひいひい言いながら、酸欠の状態で顔の前で手を振った。
僕は腕を組んで、疑い深いものを見る目を彼に向ける。
「じゃあ、なんなの?」
「いや、その理由にも少しはくるってるって思ったけどさ……。一番ひどいのは、君が、俺とあんまり変わってないこと!」
「え? いや、僕は君ほど自己否定していないよ!」
「いや、俺とどっこいどっこいだよ? 彼女たちに自分が必要ないと思ってるところとかさ。それでよく俺に説教できたな?」
「ああ? はったおすぞ」
僕が彼を強くにらみつけると、玲央は自分の身を抱えてにやけた。
「おお、怖い怖い! あの敬語野郎が、どうしてこんなになったの? 方向性が転換しすぎだろ」
「いや、いろいろ原因はあるよ? お前への怒りが限界突破してお前への気遣いが必要ないなと気づいたこととか」
「ああ、だからさっきからお前お前言ってるのか……少しは気遣ってくれよ」
「いらないだろ、お前だし。あ、でも一番の原因はあれかな」
「お? なんだよ。遥の膝で泣き喚いたか?」
にやにやしながら訪ねてくる彼に、僕はじとめで「そんなわけあるか」と返そうとしたが――。
あれ、まてよ。あれって結構それに近いんじゃないか?
彼女の柔らかい香りを思い出し、僕は顔を赤くした。
黙ってしまった僕を見て、彼は冷や汗をだらだら浮かべながら激しく動揺していた。
「え、まじでやったの? うそ? 俺の彼女なんだけど」
「今はお前いないでしょ」
「そういう問題じゃない」
「……うん、だけど、これだけは言っておこうかな」
「は? いや、原因とかよりもっと……」
「――好きな子が出来た」
そして、穏やかにほほ笑む。
そんな僕に、彼は愕然としていた。
目を見張って、くちをあんぐりとあけて――でも、その次の瞬間、口角を上げた。
「――やっぱり、君も俺と変わらないな」
「僕もそう思うよ。鳥肌が立ちそうだ。お前の事なんて嫌いだからね」
「じゃあ、両思いだな」
「うわあ」
顔をゆがめ、心底いやそうにつぶやくと、玲央はふっと笑った。
僕も、目を細める。
まさか、首を絞めてきたやつと笑いあうことになるなんて、思ってもいなかった。
あのとき、僕の気分はどん底で、消えたくなくて、頭がぐっちゃぐちゃになっていたのに。ここまでこれたのは、あの優しい少女のおかげだろう。
彼は笑いながら、幸福そうにつぶやいた。
「なあ、俺の幸せ、分かったよ」
「なに?」
「――遥と來と、ずっと一緒にいたい」
「――。そっか。じゃあ、僕は早く消えなくちゃな。感謝しろよ。僕がお前を幸せにしてやるんだから」
びしっと指差し、恩着せがましく言い放つと、彼はふふっと笑い声をあげた。
「気持ち悪いな」
「ああ!? 記憶を取り戻すのは僕にかかってるんだからな!? 言葉遣いには気をつけろよ!!」
そういうと、彼は眉を下げ、笑みを浮かべながら、透明な涙をこぼした。
「ああ、ありがとう。……君とは、もっとたくさん話してみたかったな」
「――」
世界が狭まっていく、意識が沈んでいく。
目の前がぼんやりともやがかかったかのように見えにくくなり、彼の泣き顔も薄れた。
もうすぐ、意識が覚醒する。
僕はしばらく言葉を失っていたが、やがて、彼の手をつかみ、はっきりとした口調で告げた。
「ああ、僕も、お前とはもっと話したかったよ」
――暗くなっていく視界の中で、最後に、彼が目を見張ったのが見えた。
あいつは知らない、あいつのいない間の彼女の姿を。
その事実が、とても気味がよく感じられたが、自分はそこまで鬼でもないので、あいつに伝えたいと思う。
あいつがいなかった日々を。
もし今このノートを読んでいるのが、あいつじゃなく、彼女――それか、妹だったら、あいつにこのノートを見せてやってほしい。
あと、茶色のノートと、黒のやつも。特に黒のほうは念入りに見せてやってくれ。
あいつの焦った顔が目に浮かぶだけで、顔も心も笑顔になる。
*****
家に帰ると、來さんが心配そうな顔をして待っていた。僕は彼女に「勝手に飛び出してしまってごめんなさい」とあやまった。
記憶を取り戻すための活動は、來さんの提案で今日はしないことになった。
僕は部屋にもどり、玲央のノートを読み返した。
何度も読み返した内容のはずなのに、新たな発見が次々出てくる。これは、僕が変われた証なのだろうか。
だが、ノートを読んでいくうちに、僕の中で疑問が膨らんでいった。
だって、あまりにも玲央の性格が、思っていることが。
――來さんが話していたこととかけ離れている。
前呼んだときには、混乱していて気にならなかったことだ。表面上は普通の人間が書いたように取り繕われた文章の端々から、違和感。
彼女は、玲央のことをチャラくて女遊びの激しい人間だと言っていた。だが、優しいところもあるのだと。
でも、このノートを読む限り、彼にそんな印象は受けない。
むしろ、彼は自分に厳格で、女遊びなどしない、真面目な人間に思える。
どういうことなのだろうか。玲央が周りに見せていた姿は、本当ではなかったということか。
僕はノートを閉じ、引き出しを開けた。ノートを勢いよく投げ入れると、かたっという軽い音が聞こえた。
おかしい。この分厚い作りなら、こんな薄い板にぶつけたみたいな音がするはずはない。
僕は怪しく思い、引き出しの下の部分をなでた。奥まで撫でて、その壁に変な感触があることに気づく。襖の取っ手のようにへこんでいる。僕はそこに指を当て、左にスライドさせた。
壁が横に動く感覚があった。僕はその引き出しの扉の向こうに手を伸ばした。そこに、出っ張った感覚がある。これは、取っ手だ。
僕はそれを握り、上に引っ張った。
かこっという軽快な音とともに、板が上に上がる。
僕は板の端に指をかけ、持ち上げた。
どうやら、この引き出しは二段構造になっていたらしい。
引き出しの下に、先ほどまで僕が読んでいたノートとは別の、真っ黒なノートが入っている。
僕はそれをつかみ、開いた。
汚い文字で書きなぐられている内容に、目を走らせる。
そうだ、まずは、彼女との出会いについて語ろうか。
彼女との第一印象は最悪だった。俺は遊び人のチャラ男を演じていたし、彼女は優しい人間を装っていた。
同族嫌悪というものだろうか。俺には、彼女のことがとても気持ち悪く思えた。
彼女への印象が変わったのは、彼女と会って三か月ほどたったころだ。
妹が家に彼女を呼んだときに、妹に電話がかかってきて、二人きりになったことがあった。
その時、彼女は妹に優しい笑みを浮かべて手を振った後、ぞっとするほど無表情になったのだ。それは一瞬だったが、俺の目にははっきりと、鮮烈に映った。
「なあ、君って、あの優しい笑みって演技だったんだろ」
そのほころびが苛立たしくて、思わず俺がそう指摘すると、彼女は焦りも、ごまかしもせず、しけた顔で、言ったのだ。
「ええ、そうね」
その堂々とした態度に、俺は強くあこがれた。強い人だと思った。
本当の自分を見せるなんて怖いこと、俺にはできなかったから。本当の自分を見せて嫌われたら、どうする?
だから、必死に演技をしたし、クズになって保険を掛けた。
この瞬間、俺は俺にはできないことをやってのける彼女に、強くひかれた。
次は妹のことについて語ろう。
彼女が産まれたとき、俺はとてもうれしかった。俺の周りには俺の才能しか見ていない大人しかいなかったから、純粋である妹の存在は、俺に救いをもたらした。
でも、成長した彼女は才能しか見ない大人たちに汚されそうになっていた。無視され、存在を消されていた。
だから、俺は彼女を認識し、存在させた。
彼女がいないと、俺は心を折られ、大人たちの意のままの人形になってしまいそうだったから。
俺は、自分の為に彼女を利用した。
彼女は俺のことをしたい、それからは俺の後ろをてくてくとかわいくついてくるようになった。
そこに書かれていたのは、神代 玲央の本音だった。茶色のノートにはみじんも書かれていない、本当の気持ち。
書きなぐられていた文字には、彼の自己否定と、遥さんや來さんへの愛情がこれでもかというほど込められていた。
僕はそれを夢中で読んだ。
そして、最後のページにたどり着く。僕は、汚い文字に見入った。
俺のことを、皆チャラくて、でも、優しい人間だと思っているだろう。
でも違うのだ。それは、俺が演じていたキャラクターに過ぎないのだ。
俺は、そんな好ましい人間じゃない。
本当の俺は、醜くて汚い人間だ。
君たちの笑顔を見るたび、明るい声を聴くたび、俺は恥ずかしかった。純粋な君たちを、キャラクターを演じてだますたび、罪悪感で心臓がねじくれそうになった。
そんな素晴らしいもの、俺に向ける必要なんてない。
俺のことなど、好きにならないでくれ。
なあ、君たちは、俺がどうしてチャラ男を演じているのか知っているか?
知っているはずないよな。
妹は、俺がチャラ男になることで評判を落とし、妹への評価を上げようとしていた、なんて考えているみたいだが、そんなことはない。妹は、そんなことしなくても素晴らしい人間だ。
俺がチャラ男になった理由は、君たちに保険を掛けるためだ。
もし、本当の自分をさらけ出して、嫌われてしまったら、俺はきっと生きる希望を失う。
君たちが幸せになるためには俺のもとから離れていったほうがいいのに、こんなことを願ってしまうなんて、俺は本当にどうしようもない人間だ。
ごめんなさい。俺が産まれなければ、君たちがこんなことになることはなかった。妹は努力家だから、きっと認められていたし、彼女は心中なんてすることはなかった。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
こんなことをした俺を、どうか許さないでくれ。
あと、來。
このノートを読んでいるのが君なら。
――俺のことを忘れてくれ。
僕は、ノートを握り締め、そして、地面にたたきつけた。
「ふざけるなっ!」
頭が燃え上がって、はちきれそうだった。
僕は、こんなやつのために消えてしまおうとしていたのか。こいつはなにもわかってない。
こいつは、勘違いをしている。自分を価値のない人間だと思っている。
そんなはずないのに。
……本当に望まれているのは、お前なのに!
心の中にどうしようもないむなしさが広がって、僕はしゃがみこんだ。
頭の中に、最後に見た玲央の顔が思い浮かんだ。
あいつは、笑っていた。
あいつは、なぜ笑っていたのか、その答えが今ならわかる。
あいつは、あいつは――。
僕は床にこぶしを叩きつけた。
「ふざ、けるなぁっ……!」
來さんが、どんな気持ちでお前を待っているのか、お前は分かっているのか!
生まれて初めて、お前に存在を認められた時、どれだけ嬉しかったか!
僕の耳に、妖艶な笑みを浮かべて、愛を語った彼女の声がよみがえる。
『兄さんは、私の救世主なの』
……そうだ。來さんは、こんなやつでも、大好きで、待っているんだ。
玲央がたとえどんな奴でも、僕は消えなきゃいけない。
來さんに、玲央を返すために。
僕は冷たいまなざしでノートをにらみ、立ち上がった。窓の外は、いつの間にか暗く染まっている。雪は降っていなかった。
そろそろ寝なくちゃいけない。
僕は寝る準備をして、ベッドの中にもぐりこんだ。
目を開くと、目の前には真っ白い空間が広がっていた。周囲も同じで、陰影すらなく、どこまで空間が続いているのかわからない。前に見た夢できたところと同じだった。
「――あれ、また来たのか?」
僕は目を見張った。今の僕には世界一憎たらしい彼は、後ろに立ち、軽快な調子で言った。
「いやあ、あれから君がどうしたかってきになってたんだよ。なあ、落ち込んでるのか? 泣きわめいたか? 消えたくないって、無様に願ったか? 俺としては、早く記憶を取り戻してほしいところなんだが――」
「――嘘をつくな」
「え?」
僕は振り返る。目を見張った玲央をにらみつけて、僕は低い声でいった。
「嘘をつくなよ、神代 玲央。本当は記憶を取り戻してほしくなんかないくせに」
「――!」
驚く彼に詰め寄り、僕は玲央の胸ぐらをつかんだ。
そのまま感情に任せ、喉が悲鳴を上げるくらい大きな声で叫ぶ。
「お前はどうせ、來さんたちに自分がふさわしくないとか思ってるんだろ! でも、生きている限り離れられないから、会いたくなってしまうから――こうやって、僕に任せようとしてるんだろ!」
そうだ。あの時、玲央が笑った理由はそれだ。彼はあの時、自分の後任が出来たと思って安心していたのだ。
自分なんかよりも、僕のような他人のほうが、二人にふさわしいなんて思って。
玲央は苦しそうな顔をしながら、それでも、自分の顔に愛想笑いを張り付けた。
「はあ? なにをいってるんだよ。記憶を取り戻してほしくないなら、あの屋上の場所なんて教えるはずないだろ」
「ああ、そうだね。でも、言っておけば記憶を取り戻したくない僕はきっとあの屋上に近づかなくなるだろう!? 偶然の事故は防げる! お前はそういうやつだ!」
そうだ。僕はこいつの人生を追体験したからわかる。
こいつは自分を信用していない。だから、一度出した結論を何回も思い出しては考えて、思い出しては考えて、すこしの不確定要素もないように、徹底的に可能性をつぶす。
自分のシナリオを覆す可能性を。
それでも、彼は黙ったままだった。僕は舌打ちをして、彼を突き飛ばす。
うつむいたままの彼を見て、僕はふと納得した。
「なあ、お前。お前は、僕にいったよな。『君もわかっているんだろう? 自分なんか消えたほうがいいと。自分なんか必要とされていないんだと。わかっているなら早く消えてしまえ。粉々になってしまえ』」
「……」
「あれ、ずっと変だなって思ってたんだよ。確かに僕も思ってたよ、ああいうことは。でも、なんかリアルだったなあって。あれさあ、お前がずっと、思ってたことなんだろ?」
「……っ!」
彼は肩を震わせた。どうやら図星だったらしい。何も答えない玲央に、僕はまた腹がたった。
「あのなあ、お前は知ってるのか!? 來さんがお前をどんな気持ちで待ってるか――」
「知ってるよっ!」
僕は驚いた。玲央はこぶしを握り締め、感情を抑えた声でつぶやいた。
「そんな、鈍感じゃない……。知ってるよ、そんなこと。でも、いやなんだ。彼女らが俺の隣にいるのは。彼女たちには、きっともっとふさわしい人間がいる。俺なんかより、もっと」
「……」
「俺さあ、遥と來には、幸せになってほしいんだよ……」
弱弱しくつぶやかれる神代 玲央の本音。それは強い、強い愛情だった。
幸せになってほしい。
それは、僕もずっと願っていることだ。來さんと遥さん。彼女たちは素晴らしい人間で、幸せになるべき人なんだから。
でも。
僕は、暗い瞳で地面を見る玲央に、穏やかな笑みを向けた。そして、朗らかな声でいう。
「それなら、簡単じゃないか!」
「……は……?」
あぜんとした顔をする彼に、僕は胸を張り、得意げな顔で言って見せる。
「兄さんは、私の救世主なんだ」
「……」
「兄さんは小さい頃から優秀で、神代家の跡取りとして有名だったの。それに比べて、私は、勉強も運動もできないし、おまけに体も弱くて、全てにおいて兄さんより劣っていた。そんな私を一族の恥と思ったのか、みんなは私を存在しないものとして扱った。外出を禁止し、私に関する一切の情報を消去し、みんなで私がいないみたいに無視をした」
手を開き、舞台の上で演じる役者のように、白い空間に声を響かせ、來さんの気持ちを想像する。
そして、それを声にのせる。彼に、気持ちが伝わるように。
「だけど、だけどね、兄さんだけは、私を認識して、覚えていてくれたの。兄さんのおかげで、私は存在できたんだ」
「――」
「だからね、私は、私を幸せにしてくれた兄さんに、幸せになってほしいの」
そして、からっとした、雨が降った後の空のような笑みを浮かべる。
これで、僕が伝えたかったことは、そう。
「來さんは、お前といて幸せだったってよ」
「……!」
「來さんはお前にも幸せになってほしいと思ってる。お前の思いは一方通行じゃない。なあ、お前はどうしたいと思ってる? お前の幸せって、何?」
茫然としていた彼の頬に、一筋涙が流れる。それを皮切りに、彼の目には大粒の涙が浮かんだ。際限なく現れるそれを指で拭い、彼は嗚咽をしながら震える声でいった。
「幸せになっても、いいのか……?」
「ああ、そうだね。お前は今まで、人を幸せにしてきたんだから」
「でも、俺は醜くて、汚くて……あの子たちとは、釣り合わない」
「もう、うっせーな。そんなのお前が決めることじゃないし」
「でも……」
「ああああっ! もう早く言えよ!」
僕は彼の肩をつかみ、ガンガン振り回した。
彼は「ああああ」と目を回しながら、僕に問いかけた。
「なんでっ、なんで君は、そこまで記憶を取り戻したいんだっ? 記憶を取り戻したら、君は消えてしまうのに」
ピタリ、と動きが止まる。玲央は怪訝そうな顔で、こっちを見た。
僕は彼から手を放し、うつむいた。顔を覗き込んで来ようとする彼の頭をつかみ、頬を染めて小さな声でつぶやく。
「……から」
「? ごめん、聞こえなかった……いたいいたいいたい」
僕は彼の頭をつかんでいた手を放し、後ろで組んだ。
顔が赤くなっている感覚がある。
僕はそっぽをむいて、勢いに任せて叫んだ。
「そうすれば、來さんたちが笑ってくれるかなって思ったからっ!」
「はあ?」
玲央は口元を引きつらせ、本当に分からないといった風に聞き返した。
僕は唇をかみ、彼をにらんで言う。
「だって、お前が返ってきたほうが喜ぶでしょ。お前がいない間、僕は遥さんや來さんに救われたんだ。だから……恩返しがしたくて……」
「そのために、消えるのか? 君は? はははははっ! くるってるな!」
玲央さんはお腹を抱え、笑い転げた。屈辱である。
僕はむっとして、彼を指さし、真っ赤な顔で抗議した。
「そんな笑わなくてもいいじゃないか! 僕だって彼女たちには幸せになってもらいたいんだから!」
「いやいや。くるってるっていうのはそのことを言ってるわけじゃないって」
彼はひいひい言いながら、酸欠の状態で顔の前で手を振った。
僕は腕を組んで、疑い深いものを見る目を彼に向ける。
「じゃあ、なんなの?」
「いや、その理由にも少しはくるってるって思ったけどさ……。一番ひどいのは、君が、俺とあんまり変わってないこと!」
「え? いや、僕は君ほど自己否定していないよ!」
「いや、俺とどっこいどっこいだよ? 彼女たちに自分が必要ないと思ってるところとかさ。それでよく俺に説教できたな?」
「ああ? はったおすぞ」
僕が彼を強くにらみつけると、玲央は自分の身を抱えてにやけた。
「おお、怖い怖い! あの敬語野郎が、どうしてこんなになったの? 方向性が転換しすぎだろ」
「いや、いろいろ原因はあるよ? お前への怒りが限界突破してお前への気遣いが必要ないなと気づいたこととか」
「ああ、だからさっきからお前お前言ってるのか……少しは気遣ってくれよ」
「いらないだろ、お前だし。あ、でも一番の原因はあれかな」
「お? なんだよ。遥の膝で泣き喚いたか?」
にやにやしながら訪ねてくる彼に、僕はじとめで「そんなわけあるか」と返そうとしたが――。
あれ、まてよ。あれって結構それに近いんじゃないか?
彼女の柔らかい香りを思い出し、僕は顔を赤くした。
黙ってしまった僕を見て、彼は冷や汗をだらだら浮かべながら激しく動揺していた。
「え、まじでやったの? うそ? 俺の彼女なんだけど」
「今はお前いないでしょ」
「そういう問題じゃない」
「……うん、だけど、これだけは言っておこうかな」
「は? いや、原因とかよりもっと……」
「――好きな子が出来た」
そして、穏やかにほほ笑む。
そんな僕に、彼は愕然としていた。
目を見張って、くちをあんぐりとあけて――でも、その次の瞬間、口角を上げた。
「――やっぱり、君も俺と変わらないな」
「僕もそう思うよ。鳥肌が立ちそうだ。お前の事なんて嫌いだからね」
「じゃあ、両思いだな」
「うわあ」
顔をゆがめ、心底いやそうにつぶやくと、玲央はふっと笑った。
僕も、目を細める。
まさか、首を絞めてきたやつと笑いあうことになるなんて、思ってもいなかった。
あのとき、僕の気分はどん底で、消えたくなくて、頭がぐっちゃぐちゃになっていたのに。ここまでこれたのは、あの優しい少女のおかげだろう。
彼は笑いながら、幸福そうにつぶやいた。
「なあ、俺の幸せ、分かったよ」
「なに?」
「――遥と來と、ずっと一緒にいたい」
「――。そっか。じゃあ、僕は早く消えなくちゃな。感謝しろよ。僕がお前を幸せにしてやるんだから」
びしっと指差し、恩着せがましく言い放つと、彼はふふっと笑い声をあげた。
「気持ち悪いな」
「ああ!? 記憶を取り戻すのは僕にかかってるんだからな!? 言葉遣いには気をつけろよ!!」
そういうと、彼は眉を下げ、笑みを浮かべながら、透明な涙をこぼした。
「ああ、ありがとう。……君とは、もっとたくさん話してみたかったな」
「――」
世界が狭まっていく、意識が沈んでいく。
目の前がぼんやりともやがかかったかのように見えにくくなり、彼の泣き顔も薄れた。
もうすぐ、意識が覚醒する。
僕はしばらく言葉を失っていたが、やがて、彼の手をつかみ、はっきりとした口調で告げた。
「ああ、僕も、お前とはもっと話したかったよ」
――暗くなっていく視界の中で、最後に、彼が目を見張ったのが見えた。
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