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1話:山倉竜二と加藤優造の出会い

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 山倉竜二は1949年10月10日生まれで現在の相模原市川尻の農家に生まれた。江戸時代から明治時代にかけ八王子市浅川で絹織物の仲買商人をして山倉屋という大きな絹織物問屋を開いた。

 そして、秩父、甲州、信州から馬で運ばれる生糸を養蚕農家から買い取る仕事から商いを開始した。その後、金ができる大量の繭を買い加工して絹織物にしたり織物の生地の仲買をした。

 やがて元気の良い若者と番頭など総勢4~8人で商品を馬の背にのせて東京や橫浜の輸出業者に高い値で売る、うまみのある商売に手を出した。利益は大きいが、年に数回、盗賊の被害にも会う危険な商売でもあった。

 それでも生き延びて名前が売れ信用される商売人になり巨額の富を得た。しかし金が入ると、人間、贅沢をしたり、賭博、株、他の商売に手を出して、店をたたむ商人も続出。

 その中で初代の山倉吉右衛門は堅実で、店の者にも、優秀で良い仕事をした男を登用し、高い給料と十分な休みを与えたため優秀な人材が集まった。2代目の山倉仁左衛門、3代目の山倉富之助までの約70年間。

 1860年~1930年、八王子に山倉屋ありと知られ、堅実な商売を継続していた。そのため山倉一族とその分家が、八王子の浅川、鑓水地区に20軒程で集落を作り暮らしていた。中には、商売でなく、農業に従事する人達が南部の相模原市川尻地区に10軒ほど移り住んだ。

 その川尻の山倉一族の末裔の1人が山倉竜二だった。小さい頃から、わんぱくで、川でヤマメ、アユ、山菜採り、タケノコ掘り、自然の自然薯、山芋も上手だった。足が速く、力持ち、泳ぎの達人。

 今で言う、サバイバルの達人と言った男に育った。しかし人に、気を使う事が出来ず、思い立ったら突っ走り、無鉄砲で徒党を組むのが大嫌い。まるで、野生児、そのものであった。

 遠くは、清川村、道志川、相模川の山野を駆け回っていた。もちろん小学校、中学は行ったが、その後、学問には興味がなく、中学卒業して16歳になるとすぐに原付免許を取り父の原付バイクを乗り回していた。

 そんな時、近所の家で八王子駅止めの荷物を運んできて欲しいと頼まれ500円をもらった。その後、駅止め荷物のバイク配送をしていると近所の人に伝えると、徐々配送を頼まれるようになった。

 これで月に3万円程度の収入になり、頼まれごとが増えて、相模原、橋本、八王子へ行って買い物や荷物の荷受け発送を商売にした。すると中元・歳暮のシーズンは、月に5万円を超え様になり忙しく運送の仕事を続けた。

 もともと人に使われるのが嫌い。ヤマメ、アユ、山菜、タケノコ、キノコ、自然薯「じねんじょ」などと米を物々交換して、古くなった山小屋に1人で住み、自由気まま生活を送っていた。しかし、だんだん仕事が忙しくなってきた。

 幸い相模原の穀倉地帯が、近いので安く、米を手に入れやすく食べるのに困ることはなかった。16歳を過ぎた頃には、相模川にアユを釣りの釣り船の水先案内人のアルバイトをした。その他、休日、相模川の入漁料を徴収し地元の漁協に持っていき給金をもらった。

 その他、あゆ、やまめの釣れる場所へ案内したり、山菜、春のタケノコシーズンの案内人をして日銭を稼いで、普通の生活をしていた。身軽で手先が器用なので地元の人に家の修理を依頼され手伝った。

 週のうちに半分は、川尻の実家で生活し、半分は野山を駆けまわっていた。しかし日銭を貯めて16歳のうちに新しく中古の原付バイクを買って行動範囲が、ぐっと広まった。そして、遠くは上野原の温泉、七沢温泉や厚木、宮ヶ瀬の方まで行くようになった。

 その行動範囲の広さと、夏に清川村の中津川での泳ぐ姿が、竜に似ているので、みんなに、「清川の竜二」と呼ばれる様になった。そんな時、釣りに来ていた加藤優造という若者の川魚釣りの船を漕いで、釣りの指導を頼まれた。
 
 その時にアユもつれて、15時頃、彼が、小さな横笛を袋から取り出して吹き始めた。
「その優しい音色を聞いていると、すっかり聞き惚れて、竜二が、思わず、すげーなと笑った」
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