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第35話:祖父、佐藤隆一郎の葬儀

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 2011年の日本の貿易収支は21世紀発の赤字になり-2.4兆円であったが、2012年も-7兆円と最悪の年になった。また2012年は7月ユーロ危機が発生しドル円が78円台、ユーロ円が95円台に突入した
強烈な円高の時代だった。

 2012年2月20日、橫浜の薫子さんの実家の佐藤隆一郎さんが、インフルエンザで熱を出して、病院に担ぎ込まれたと連絡が入り、立山輝一と薫子さんが橫浜のKU病院に行ったが、隔離病棟に入院して面会謝絶だった。そうして翌日、肺炎を併発して2012年2月21日15時半に亡くなり享年83歳であった。

 その後、薫子は一度、伊豆長岡にもどり2月27日に葬儀が行われると連絡が入り、2月26日、朝10時に夕方からのお通夜と、翌日の葬儀に参列するため薫子と輝一が立山家を出て12時に到着して棺の祖父、佐藤直太朗さんに手を合わせ、昼食後、4時頃から親戚が集まりお通夜が始まった。

 すると、隆一郎さんが戦後の混乱期に戦争から帰って来た橫浜家具の職人を一人一人捜して、再度、釘を使わない優美な形の橫浜家具を元町で作り始めるため1950年、神奈川県需品家具協同組合に入り活動して、その橫浜家具で日本在住の外国人富裕層や田園調布に住む日本人の富裕層に販売して大儲けした。

 そして財をなして石川町の教会の近くに100坪の土地を買い家を建てた。戦後の混乱期にはヤクザに脅かされたり、だまされそうになったりして、苦労して橫浜クラシック家具を復興させて、その後、橫浜家具職人の育成に尽力して家具の学校設立にも尽力し投資したそうだと昔話に花が咲いた。

 どんな時でも毅然として、良い子とは良い、悪いことは悪いと、たいそう正義感が強い人だったようだ。ただ、橫浜家具も高価なために大量に売れる時代ではなくなり、数が減ってきたのが現状のようだ。そう言う話をして、故人を懐かしんで、夜は更けていき、床についた。

 翌日は、みぞれ交じりの寒い日で、午前10時に久保山斎場で告別式を行うためにマイクロバスで石川町から約30分の丘の上の久保山斎場に移動した。11時から告別式が行われ会場に入り回りを見ると橫浜市長、橫浜商工会議所会頭からの花輪が届いており、故人の偉大さが理解できた。

 喪主の長男・佐藤直太朗さんが、挨拶して、なき佐藤隆一郎が、戦後の混乱期に多くの皆様の助けをいただいた事と雪交じりの寒い日にこんなにも多くの方々のご列席をいただいた事に感謝致しますと挨拶した。その後、ご焼香の時には、芸能人や元議員さん、有名人の方も多く見えられていた。

 その中に昔のイズミ家具、ダニエル元町の社長の外人さも参列しているのには驚かされた。立山輝一も橫浜家具のついて調べたら、ダニエル元町本店「昔のイズミ家具」では、勉強机が25万円、書棚が43万円、イタリア製の
ソファーが60万円、特注品は100万円からと高価で豪華な家具を販売していた。

 しかし数量的には、あまり売れていないようだった。薫子さんも祖父の佐藤隆一郎さんが、ここまで偉い人だとは知らなかった様で、家の中では決して威張らず、いつもニコニコしていたが、ある時、家を訪ねてきた商人の人と大きな声で口論しているところをドア越しに見た。

 その時は、眼光鋭く、怖くなって逃げてきたことを幼い頃の思い出として思いだしたと言った。春になり、夏が過ぎても、なかなか世界経済、日本経済に明るい兆しが見えなかった。そうしているうちに2013年を迎えた。
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