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50話:杵渕宝石店の調査

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 彼女は、いないと言ったじゃないかと言うと俺は、彼女だと思ってないけど向こうが勝手に俺のことをパートナーと言ってるだけと言った。彼女の情報を聞くと名前が杵渕珠代と言い、お父さんが東京銀座で宝石商を営んでいる。
 彼女は慶応大学を出てアメリカの大学に留学して大学行き、ウオール街でアルバイトをして、就職しようと考えたらしいが、どうしても、彼らの考え方について行けず日本に帰って来た。

 その後、お父さんの店で手伝いをして最近増えてる外人バイヤーとの交渉を彼女が担当していると言い相当のやり手で年収は2千万円と言った。何でも、かつて日本がバブルの頃に日本人富裕層が、世界中から質の良い宝石を買い集めて持っていた。彼らが、年をとり生活維持のために背に腹は変えられず、最近売りに出した。それを銀座の父の店に持って来るようだ。

 そして良い宝石を格安で買い取り、それを娘が外国人バイヤーに高く売り、大儲けしていると説明した。その店の名前は杵渕宝石店で銀座を歩けばすぐわかると言われた。その週の土曜日、佐野夫妻が銀座駅で降り、小さい路地を歩くと、すぐ杵渕宝石店を見つけた。中に入るといらっしゃいと店員の声がかかり杵渕親子が出て来て、いらしゃいと言った。買い取りですか、それともご購入ですかと聞いた。

 すると最初に商品を見せていただけますかと言うと、お父さんの方が、こちらへどうぞと言い、店の奥のショーケースの商品をみせて、どの位のものでしょうかと聞くのでダイヤモンドで200万円位というと小さいダイヤモンドを見せてダイヤは大きいものが一番と思われがちですが、実は、一番重要なのはカットなのですと言った。

 こっちの大きいのと、こちらの小さいのが同じ値段というのは解せないと思われがちですが輝きが全く違うと言った。それを聞いて、もう少し商品を拝見して宜しいでしょうかと文代さんが丁寧に聞くと、ご自由に、ゆっくりご覧下さいと言った。少ししてインド人と思しき人が入店して、娘さんが、「メアイ・ヘルプ・ユー」と英語で出迎えた。その後、奥の方へ行き、声が漏れ、聞こえてきた。

 佐野が、英語ができるので聞いていると激しい価格交渉が始まった。全部で30万ドルなら買うと言うと、いいえ50万ドルなら売りますと言うと、厳しいこと言うなーと言い、35万ドルと言い返すと、ノーと言い、嫌なら結構と言った。最後に40万ドルというとノーというと信じられないクレージーだと、お客が、わめいた。クジットカード払いで45万ドル、お客が、言うと、彼女が。笑いながら、冗談はおよしない。

 現金を振り込んだことが確認されなければ商品は渡さないと言い張った。すると少し沈黙となり、お客がちょっと待てと言い、携帯電話をかけ始めた。数分後、45万ドルを入金するから打ってくれ、お願いだと言い、彼女がわかったわと言い、こちらの口座に45万ドルを入金しなさいと告げた。また、携帯電話で口座番号を言い45万ドルを入金しろと指示した。

 すると彼女の声が急に優しくなり、ありがとうございますと言い紅茶か珈琲のどちらが、良いと聞いた。珈琲と客が答えると了解と言い、インターフォンで珈琲を注文した。数分後、珈琲が入ると別の電話がなり入金が確認されたようで、さっきと全く違う素敵な声で、彼女が、ありがとうございます、また、お越し下さいと、お客さんを送り出した。この会話を耳をそばだてて佐野夫妻が聞いていた。

 そして佐野夫妻も、また来ますと言って店を後にした。その後、近くのレストランで昼食をとりながら2人で彼女の話をすると、佐野公康が、彼女は何てきつい女だなのだろうと言った。すると文代さんが、あのやりとりだけでは解らないと言った。でも商売上手と言うことだけは確かねと言った。加えて相当金を持っていることも間違いないと言った。

 それは、時計、イヤリング、宝石など、全部会わせると、軽く高級車1台買える値段だと言い、500万円、いや1千万円以上かも知れないと言った。そして文代さんが、でも長男、鉄男のタイプじゃないわねと言い、ただ鉄男が彼女に引っ張り回されてるだけじゃないのと冷静に言った。
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