日本の名家の末裔と欧州豪族

ハリマオ65

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15話:恩師、リチャードの死

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 その後、日本航空が再生するまで国営とされた。2009年、円高ドル安が、始まった。2010年1月22日、寒い日、昨年12月から体調を崩して東京大学付属病院に83歳のリチャードが、急遽入院した。

 風邪をこじらせて、インフルエンザにかかり肺炎を併発したとの知らせが入り、七郎は、急遽、彼の病室に見舞いに行った。

 マスクを着用して彼の顔を見ると青白く急に老けた様な生気のない顔に見えた。しかし、彼は、七郎に精一杯の笑顔で、大丈夫だ、じき退院すると強がっていた。

 リチャードが、君に話しておきたいことがあるんだが、話せないので秘書にメールを送らせるから読んでくれと言った。七郎は、何と言って良いのかわからずリチャードの手を握るだけだった。

 10分位して、病室を出るとき、
「リチャードが小さな声で『グッド・ラック・Good・Luck』と言った」
「そんな気がして永遠の別れが来たと直感した」
「振り返ると、我を忘れて泣き叫びそうになるので、我慢し静かに病室を出た」

 翌日、七郎商会に帰るとメールが入っていたが、開けようとしてもキーワードを聞いてくるだけで開けない。そこで、昔、リチャードが教えてくれた、秘密の合言葉「Good Luck」を打ち込んだ。

 すると、メールが開き、次の様なことが書いてあった。
「最初に、もし君が、これを読む時には私は天に召されている」
「君と会えたのは、イエスキリストのお導きがあったのだと思う」

「最初、君を見た時、すぐに何か不思議な縁を感じた」
「だから何のためらいもなく君を自分の息子のように迎え入れた」

 その数日後、私が酒を飲んで帰宅した夜、
「君に日本は敗戦国であり日本を捨てて米国人にならないかと言った」

「嫌だ、日本に、優れた文化、伝統がある」
「それが大好きだから日本人のままでいると言い切った」
「私が本当に日本は欧米に追いつけるとは思わないと言うと」
「そんな事はないとつっぱねた」

「日本人の勤勉さと正直さ結束力で、きっと追いつくと思うと語った」
「そのため、七郎は、頑張って勉強すると大声で叫んだ」

「その時、正直、頭にきて金を稼ぐというのは、並大抵の努力では、できるない」
「すごい相手と闘って勝たなければ、金は稼げないと怒鳴った」

「七郎、お前に、そんな覚悟があるか勝てる自信があるかとどなった」
「君は、勝てるかどうかわからないが、勝つために努力する」
「その覚悟は持っていると開き直った」
「その時、お前は、俺の後を継げる奴だと感じ取った」

「その時、君を抱き寄せてお前を見てると昔の自分のような気がしてならない涙を流し、この時、本当の親子になれた気がしたんだ」

「その後、君は、僕の本を片っ端から読んで、投資の勝ち方を会得してね。そしてサンノゼ州立大学にスカラシップで合格し日本を後にした」

「数年後、見違える程、立派な青年になったのを見て本当にうれしかった、帰国後、君が木下家という由緒正しき家の息子と知り僕の勘に間違いなかったと思った」

「その後、RSC家の経理の仕事を与えた。その内容は、教えてなかったが、君のことだから察しがついただろう」

「世界経済の大事件「ブラックマンデー、リーマンショクの時、RSCの財産が急に増えた事から、おおよそ、どんな仕事していたか想像できるだろう」

「しかし、僕は、君をロスチャイルド家に縛り付ける気はないだから自分の好きなように生きて欲しい」

「ただ、僕に、七郎が与えてくれた数々の事を思い出し、一緒に歩んできた人生の価値の分だけの報奨金を渡したいと思う」

「数日後、君のスイス・ピクテのプライベートバンクの口座にその金を振り込んでおくよ、君が正しいと思う事に使ってくれ」

「そして君が望むならロスチャイルド家の経理担当の七郎商会をやめても構わない、本当に長い間、楽しい時間を与えてくれてありがとう心から感謝します」

 これで、リチャードからのメールの文面が終わっていた。
「パソコンの画面を見ながら、したたり落ちる涙を拭こうともしないで読んでいた」
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