話下手男の優しさ

ハリマオ65

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12話:若子の大学受験と合格

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 やがて1997年も夏が過ぎ、秋が来て、年の瀬が迫った。そして除夜の鐘が聞こえて、1998年になった。そして、氷川神社に、初詣でに出かけた時、若子も大学合格祈願の絵馬を奉納してきた。

 どうか、一橋大学に合格できますようにと、しっかり書き込んだ。寒さが増してきても、風邪にかからないように、うがい、手洗い、外出時は、必ず、マスクを着用して出かけた。

 そして、徐々に暖かくなり、3月が過ぎ、4月の高校の一斉テストで、初めて、一橋大学の合格可能性が80%になったと嬉しそうに親に報告した。5月の節句が過ぎ、梅雨を越えて、暑い夏となった。

 しかし、外出せずに、エアコンを効かせて、自分の机に向かって、一生懸命に勉強してる姿を見て、母が、若子は、小さいときから本当に頑張り屋さんだったねと父と昔を思い出すかのように話していた。

 小さいときの多くの思い出が走馬灯よのように頭の中を駆け巡った。父は、着実に成長して親離れしていくものだ。だから彼女の自由にやらせて僕たちは、彼女が協力を求めた時だけ手を貸してやれば良いのさと、ぽつりと言った。

 母が、そうねと言い、目に涙を浮かべた。すると、なんで泣いてるのと聞くと、小さい頃から、人の言うことを聞かない、おてんば娘が、自分で、自分の目標を見つけて、一生懸命努力する姿を見ると、うれしいと語った。

 そう思う反面、自分の手からだんだん遠くなる気がして寂しいのよと涙をこぼした。そして、大丈夫、彼女は、きっと大成するよと父が母の肩をたたいた。

 やがて、秋風が吹き、寒さか駆け足でやってきて、12月を迎えて、クリスマスを過ぎて、1999年を迎えた。そして、今年も氷川神社に、初詣でに家族4人で出かけた。

 今年、受験を迎える若子は、長い間、手を合わせて、じっと真剣に拝んでいた。そして、これだけお願いしたから、神様、絶対に裏切らないでねと笑いながら言うと、母が、そんな事と言うもんじゃありませんよと、叱った。

 しばらくして若子は、一橋大学の受験表を手に入れてきた。そして受験の手続きを終えて、受験日を迎えた。この日も、寒い日で、母が、若子に暖かい、格好で出かけなさいよと、言った。

 少し寒い方が、頭が冴えるのよと、口答えしながら、行く支度を終えて、中央線とバスで、受験会場へ着いた。そして若子が、ストレッチして、深呼吸して、よしといって、まるで、相撲取りがやるように軽く自分の頬をたたいて、気合いの入った顔で、受験会場に入っていった。

 受験が終了してくると、2階も見直ししたので完璧よと、言いながら、意気揚々と受験会場から出て来た。そして、お腹空いたから、八王子で、あのレストランで、食事していきましょうよと言った。

 そして、軽食をとったが、母が、ケーキを残したのを見て、入らないなら、ちょうだいといって、しっかりたいらげた。珈琲も飲んで、ベストを尽くしたから、きっと、神は、私を見放さないはずよと、みんなの前で公言した。

 その後、意気揚々と家に帰っていった。数日後の合格発表の日も元気よく、お兄ちゃん以外の3人で出かけた。構内は混んでいたが、両親が、前の方に行って、丁寧に見て回ると、若野の受験番号が見つかった。

 父が大きな声で、あったぞーと、若子に向かって叫んだ。すると、恥ずかしいから、大声上げないでよと、言った。そして3人が集まり、合格おめでとうと、言うと、神様が見放さなかったと笑いながら言った。

 母が、ほんとの良かったねと言い、若子を抱きしめると、急に若子の顔が、泣き顔に変わり、良かったと言う言葉を連発していた。そして、興奮して、涙が止まらなくなった。

 その肩を抱くように、父と母が、一緒に大学構内を出た。そして、八王子のレストランに寄ろうかと言うと、もう合格という、ご馳走で、心も、お腹も、いっぱいよと、しおらしい事を言った。

 すると、今度は、それを聞いていた母が、その若子の言葉を聞いて涙をこぼし始め止まらなくなって声を上げて泣きだした。すると女は、直ぐ感情的になるからと言い困った顔になると、でも、お父さん、お母さんを好きなんでしょと、若子が言った。
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