プラの葬列

山田

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楊 飛龍

──3──#1

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  紙切れに書かれた地図が指し示すのは、アリーシャと再会した墓地の奥にある森の中。

  よくもこんなところに……と文句のひとつやふたつを捏ねて歩く俺を阻むような木々の枝をへし折り、伸び放題になった雑草を踏みしめる。

──『そう……僕達が知っている『アリーシャ』自体が、偽物だった可能性が高い。この記録からいくと、毎年誕生日に楠に登れる体力すらないだろう』

  マークの笑顔とは対極線上にある残酷な事実を脳裏に浮かべた俺は、どうしても当事者であるアリーシャ本人に会って当時の話が聞きたかった。例えそれが俺の望まない答えであっても、なくても──。

「あれ……お兄ちゃん?!」

  ガサガサ……ッと茂みが暴れるような音に身を翻した俺がほぼ反射のように睨み付けた先には、嬉しそうに顔を綻ばせる天使が存在した。

「久しぶりだな、アリーシャ」

  木漏れ日を写し取ったようなシルバーの髪を揺らして走るアリーシャは「ハッピーニューイヤー!」と元気よく俺の元に駆け寄って抱き付くと、ニマニマと緩んだ頰を愛らしく赤らめる。

「あぁ、ハッピーニューイヤー」

  猫みたく柔らかい彼の髪を優しく撫でた俺の声は、普段からは想像もできないほど穏やかなものだった。その声に釣られて顔を上げたアリーシャは、えへへ……っと照れたように小首を傾げる。

「まさかお兄ちゃんから会いに来てくれるなんて、僕、すっごく嬉しいな!」
「本当はもっと早く来たかったけれど、居場所を掴むのに時間がかかってな」
「そっか……でも、大丈夫。この前だってジャックおじさんが遊びに来てくれたし、今までのことを思ったら充分僕は幸せだよ」

  笑顔のみならず言葉すら健気な弟が陽だまりのように温かな雰囲気を纏い、冷淡で残虐な俺の心を融かしてゆく。その様子に涙のひとつも出そうなほど救われた俺は、声にもならないほど小さな声で「ありがとう」と呟いた。

「僕の方こそ……ありがとう……」

  俺の呟きに目を見開き、パチリと視線が合っただけで恥ずかしそうに目を伏せたアリーシャは、白いシャツの裾を握ってモジモジと言葉を紡ぐ。

「あのさ……もしよかったら……僕の家に来ない?」
「えっ?」
「あ、いや、忙しかったらいいの。でも、もし時間があったら……もう少し一緒にお話ししたいなぁって」

  コロコロと俺の様子に一喜一憂する天使は、トドメのような上目遣いで「ダメ……かな?」と窺う。

「駄目なんかじゃない。それぐらいのことなら、いつでも大歓迎だ……それに、俺もアリーシャと話したいことが山ほどある」

  彼の頭に乗せた手を頰まで滑らせて俺が笑い掛けると、アリーシャは安心したように「良かったぁ」とその手を握った。
  
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