舞姫の君

藤雪花(ふじゆきはな)

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第11話 それぞれの道

107-2、プロポーズ②

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「ブルース、もういいいから放して」
「まだ血が止まっていない」
「この体勢は嫌」
「傷口が見えないだろ。血が止まるまでなめてやる」
「わたしは話をしに来たの、だから」
 声が上ずる。
 ユーディアの体の緊張をわからないブルースではない。
「あなたが言いたいことなんてわかってる。何年俺たちは一緒に過ごしたと思う?」

 再び唇が肌に吸い付いた。
 ブルースは時間をかけた。
 ユーディアは、それ以上動かないようにブルースの腕と頭を押さえた。
 ブルースがその気になりさえすれば、足を割られた状態ではユーディアは逃れられない。ブルースを受け入れてしまうだろう。
 ブルースを探しに来たのは、人目を避けて体を重ねるためではない。
 ユーディアには明確にしなければならないことがある。

「ブルース、わたしが話さなくてはいけないのは、わたしはジプサムと……」
「ユーディア、一生のお願いだ。もう少し、このままいさせてくれ」

 ブルースの声が揺れる。
 血を吸われる感覚が、唇を押し付けるだけのキスに変化する。
 長い、長いキス。
 ブルースはわかっているのか。
 ユーディアの体に触れられるのは、もうこれが最後かもしれないこと。
 ユーディアがルーリクを振り切ってこなければ、ふたりだけの時間など今後は持てないかもしれないこと。

 ブルースの手が、ユーディアの脚を撫でた。
 一度も触れたことのないような、触れ方だった。
 


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