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第10話 雪山離宮 襲撃
95-2、雪上訓練②
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スキーに慣れてくると、銀世界の森の中は白い毛皮のウサギや、狐や冬毛のライチョウに目を向ける余裕が生まれてくる。
かつかつかつとキツツキの幹を叩く嘴の音がいきなり響き始めて驚かされた。
悩みを忘れるほど爽快で、ユーディアに笑顔が戻る。
だが、景色を見る余裕ができると、ユーディアは異質な気配を感じた。
首筋や頬がざわざわする。
「どうした?何かいたか?」
ユーディアの異変に気が付いたブルースが、ユーディアの視線の先に目を細めた。
「白樺の間から、何かに見られている気がする」
ジプサムの顔が引き締まった。
あたりをうかがい耳を澄ます。
「俺にはわからないが、きっとリャオ族だろう。彼らは我々がとどまることを快く思っていない。アルタイ山で生きる彼らにとっては我々は山を荒らす侵略者なのだろうから」
ユーディアはリャオ族の感覚が理解できた。
「まるで、モルガン族が草原に侵入するベルゼラ人を快く思っていようなもののような、か」
ブルースの嫌味にジプサムは顔をゆがめた。
「そんなものだ。彼らを刺激しないようにしなければならない。俺たちはあくまで客人。リャオ族の生活の地に一時的に滞在しているだけだ。ベルゼラはアルタイ山をわが物にするつもりはまるでない……」
「まあ、あれを見てください。何か跳ねましたわ!銀の狐ではありませんか?」
弾んだ声が雪に埋もれる森に響いた。
声をあげたのはリリーシャ。
白樺の林間に見えた小さな影を差した。
雪の白と微妙に違う。
銀色の影。
リリーシャはユーディアを横目で見る。
リリーシャのコートと帽子は白と黒のまだらの雪豹の毛皮であるが、ユーディアは銀色に発光するような銀狐の帽子をかぶっていた。
「のんびり移動も退屈してきましたわ。代り映えしない景色ばかりで。ショウ、わたしのためにアレを捕まえなさい。手袋にでもなるでしょう」
ショウは背中からクロスボウを取って構え矢をセットする。
「狩りは止めろ」
「一匹ぐらいどおってことありませんわ。いいでしょう?」
ジプサムの制止をやんわりとリリーシャが遮りねだる。
「俺が許可する、許可しないの問題ではなくて……」
ユーディアはショウが狙う獲物をじっと見た。
ひょこりひょこりと幹の影から顔を出して動いていた。
距離があるにも関わらずくるっと大きな目とユーディアの目が合う。
それは先ほどから感じた視線の正体だと確信する。
そしてそれは、リリーシャがいうような銀狐ではない。
大きな尻尾の房を付けた銀狐の帽子をかぶる、人間の子供。
「違う!射かけないで!あれは人よ!」
「何!?」
ショウはユーディアの叫びに狙いが定まらないうちに弾みで発射をしてしまった。
白樺の幹に矢が突き刺さる。
樹冠に積もった雪の塊がぼそりぼそりと振り落とされた。
驚愕したのはいきなりクロスボウの矢を射かけられた子供。
頭上に雪を浴び、飛び上がって、逃げようとして足を絡めてつまずいた。
慌てようが本当に小動物のようだった。
額を幹にぶつけ、後ろに倒れた。
ジプサムたちは駆け寄った。
それは全身白の衣装を着て回りの景色に溶け込んだリャオ族の10歳ほどの子供だった。
かつかつかつとキツツキの幹を叩く嘴の音がいきなり響き始めて驚かされた。
悩みを忘れるほど爽快で、ユーディアに笑顔が戻る。
だが、景色を見る余裕ができると、ユーディアは異質な気配を感じた。
首筋や頬がざわざわする。
「どうした?何かいたか?」
ユーディアの異変に気が付いたブルースが、ユーディアの視線の先に目を細めた。
「白樺の間から、何かに見られている気がする」
ジプサムの顔が引き締まった。
あたりをうかがい耳を澄ます。
「俺にはわからないが、きっとリャオ族だろう。彼らは我々がとどまることを快く思っていない。アルタイ山で生きる彼らにとっては我々は山を荒らす侵略者なのだろうから」
ユーディアはリャオ族の感覚が理解できた。
「まるで、モルガン族が草原に侵入するベルゼラ人を快く思っていようなもののような、か」
ブルースの嫌味にジプサムは顔をゆがめた。
「そんなものだ。彼らを刺激しないようにしなければならない。俺たちはあくまで客人。リャオ族の生活の地に一時的に滞在しているだけだ。ベルゼラはアルタイ山をわが物にするつもりはまるでない……」
「まあ、あれを見てください。何か跳ねましたわ!銀の狐ではありませんか?」
弾んだ声が雪に埋もれる森に響いた。
声をあげたのはリリーシャ。
白樺の林間に見えた小さな影を差した。
雪の白と微妙に違う。
銀色の影。
リリーシャはユーディアを横目で見る。
リリーシャのコートと帽子は白と黒のまだらの雪豹の毛皮であるが、ユーディアは銀色に発光するような銀狐の帽子をかぶっていた。
「のんびり移動も退屈してきましたわ。代り映えしない景色ばかりで。ショウ、わたしのためにアレを捕まえなさい。手袋にでもなるでしょう」
ショウは背中からクロスボウを取って構え矢をセットする。
「狩りは止めろ」
「一匹ぐらいどおってことありませんわ。いいでしょう?」
ジプサムの制止をやんわりとリリーシャが遮りねだる。
「俺が許可する、許可しないの問題ではなくて……」
ユーディアはショウが狙う獲物をじっと見た。
ひょこりひょこりと幹の影から顔を出して動いていた。
距離があるにも関わらずくるっと大きな目とユーディアの目が合う。
それは先ほどから感じた視線の正体だと確信する。
そしてそれは、リリーシャがいうような銀狐ではない。
大きな尻尾の房を付けた銀狐の帽子をかぶる、人間の子供。
「違う!射かけないで!あれは人よ!」
「何!?」
ショウはユーディアの叫びに狙いが定まらないうちに弾みで発射をしてしまった。
白樺の幹に矢が突き刺さる。
樹冠に積もった雪の塊がぼそりぼそりと振り落とされた。
驚愕したのはいきなりクロスボウの矢を射かけられた子供。
頭上に雪を浴び、飛び上がって、逃げようとして足を絡めてつまずいた。
慌てようが本当に小動物のようだった。
額を幹にぶつけ、後ろに倒れた。
ジプサムたちは駆け寄った。
それは全身白の衣装を着て回りの景色に溶け込んだリャオ族の10歳ほどの子供だった。
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