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第8話 勝負
74-2、勝負①
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「僕は、狩り自体、参加させてもらえるとは思っていなかったので、ルーリクさまに弓を取ることを許していただき、それからモルガン族のやり方を指導する機会を与えていただきうれしいです」
ユーディアも負けていない。
にこりととっておきの笑みを返した。
これは売られた喧嘩であり、久々に血が沸き立った。
「ユーディアさん、ルーリク、僕は留守番しておきますから……」
その場をなだめようとサンがいうが、誰も耳を貸すものはいない。
笑顔で威嚇しあう二人の間に入ったのは、ジプサム。
「せっかく盛り上がっているところ申し訳ないのだが、俺はこの場の全員を連れていくとはいっていない。今日は半分の人数で行く。大人数で誤射でもしたら大変だからな」
ジプサムが足先でゴメスをつつき、ゴメスは神妙な顔でうなずいた。
「それで、今日はサンは留守番組。ユーディアは、獲物を捌く準備をしていてくれ。むくれるな。お前の狩りの腕前は俺がよくわかっているのだから」
ジプサムがユーディアをなだめるように言う。
「お言葉ではありますが、ジプサムさまの小姓がばんぞ……草原の民であったとはいえ、狩猟の腕前が俺たちよりも上だとは思えないのですが」
「なら腕前を示したらいいのでしょう?」
「じゃあ、ルーリクと弓や体術の勝負でもするっていうのか?」
「いいですよ。最近体を動かしていなかったので、気合が入ります」
「無様に負けたら、そんなひ弱な小姓はジプサムさまのお荷物になるだろうから、自ら下山するのもいいと思っていたんだが」
クロードは、ルーリクとユーディアの対立をすっかり面白がっていて、ユーディアを煽る。
彼等も退屈をしていた。
ジプサムが連れてきた、蟄居には不要で余分な小姓の存在に内心よく思っていないのは明白である。
小姓を大事にしているジプサム王子がどう反応するか、ちらちらとその表情をうかがうが、騎士たちにとって意外なことにジプサム王子はあきれはしても勝負を止めることはしなかった。
「ユーディアさん、もういいですから。俺たちは戦うことが基本ですが、小姓のユーディアさんはそうではないのですから、勝負になりませんから。こんな危険なことを受けてたつ必要はありませんから」
ひとりおろおろとするサンの言葉は誰にも届かない。
そして翌日、ユーディアはルーリクと勝負をすることになったのである。
ユーディアも負けていない。
にこりととっておきの笑みを返した。
これは売られた喧嘩であり、久々に血が沸き立った。
「ユーディアさん、ルーリク、僕は留守番しておきますから……」
その場をなだめようとサンがいうが、誰も耳を貸すものはいない。
笑顔で威嚇しあう二人の間に入ったのは、ジプサム。
「せっかく盛り上がっているところ申し訳ないのだが、俺はこの場の全員を連れていくとはいっていない。今日は半分の人数で行く。大人数で誤射でもしたら大変だからな」
ジプサムが足先でゴメスをつつき、ゴメスは神妙な顔でうなずいた。
「それで、今日はサンは留守番組。ユーディアは、獲物を捌く準備をしていてくれ。むくれるな。お前の狩りの腕前は俺がよくわかっているのだから」
ジプサムがユーディアをなだめるように言う。
「お言葉ではありますが、ジプサムさまの小姓がばんぞ……草原の民であったとはいえ、狩猟の腕前が俺たちよりも上だとは思えないのですが」
「なら腕前を示したらいいのでしょう?」
「じゃあ、ルーリクと弓や体術の勝負でもするっていうのか?」
「いいですよ。最近体を動かしていなかったので、気合が入ります」
「無様に負けたら、そんなひ弱な小姓はジプサムさまのお荷物になるだろうから、自ら下山するのもいいと思っていたんだが」
クロードは、ルーリクとユーディアの対立をすっかり面白がっていて、ユーディアを煽る。
彼等も退屈をしていた。
ジプサムが連れてきた、蟄居には不要で余分な小姓の存在に内心よく思っていないのは明白である。
小姓を大事にしているジプサム王子がどう反応するか、ちらちらとその表情をうかがうが、騎士たちにとって意外なことにジプサム王子はあきれはしても勝負を止めることはしなかった。
「ユーディアさん、もういいですから。俺たちは戦うことが基本ですが、小姓のユーディアさんはそうではないのですから、勝負になりませんから。こんな危険なことを受けてたつ必要はありませんから」
ひとりおろおろとするサンの言葉は誰にも届かない。
そして翌日、ユーディアはルーリクと勝負をすることになったのである。
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