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番外編
番外編その3、秘密
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ジプサムは、赤の盗賊の供述書を読んでいて、気になることがあった。
アッシュがユーディアに飲ませたという金木犀酒。
自白剤のことである。
金木犀酒自体は珍しいものでもないし、自白作用があるものではない。
なら、一体何が金木犀酒に入れられていたのだろうか。
アルタイ山は他と関わらないことを選んだ山岳民族が、少数ではあるが生活をしている。
彼らはめったに姿を現さない。
アッシュたちが渓谷の岩場の間で動けなくなっていたその少数民族の老人を見つけたという。
老人は足を骨折して動けず、激痛に苦しんでいた。
老人は、アッシュにあるものの採取を頼んだ。
それを食べると痛みをたちどころに忘れるという。
アッシュが見つけ、火にあぶり、老人に食べさせた。
老人がいうように痛みが和らいだようで眉間は緩んだ。
老人が食べたのは、鎮痛効果に加えて、問われたことをなんでも答えたくなる衝動を誘発する、ミラクルマッシュルームだという。
「わしらの祖先から代々伝わる秘密のきのこなんじゃ。誰にも教えてはならんぞ」
老人はアッシュに念を押しながらも、その絶対に教えてはならない部族の秘密をべらべらと教えてくれたそうである。
その、ミラクルマッシュルームはオレンジ色の丸っこい傘に黄色と緑の鮮やかな斑点が散らばり、茎は太く全体的にこんもりとした形をしていて、清浄な水が流れる渓流のそばにある朽ちた楠の木の幹にのみ生えるという。
アッシュがすぐに見つけたところからすると、見つけるのはそう困難ではなさそうであった。
「きのこに毒があるものはあっても、自白剤になるわけがないんじゃないですか。アッシュの最後のあがきで我々に毒きのこを食わせてダメージを与えようとしているのではないですか。いっそのこと、それをアッシュに食べさせて本当のところを白状するか確認しましょうか」
サニジンはきのこの作用に懐疑的であった。
ジプサムやサニジンたちが忙しく盗賊の事後処理に駆け回るなか、秋晴れの続く青空の元、町の中で暇をもてあましていたジャンは、町から少し足を延ばし渓流沿いでバーベキューでもしたいなとつぶやいた。
食いついたのは、ユーディア。
数日の間、ブルースがユーディアを過保護に部屋に閉じ込めて安静にさせられ、体を動かしたくてうずうずしていたのだ。
「バーベキュー!?隠れ里の近くの森の中に、アケビやら栗やら銀杏やらいっぱいあったよ。食材なら山の中に一杯あるから、もっていかなくてもいいんじゃない?ただだよ、ゼロリラ!」
空中に指が踊り、アケビやら栗やら見つけたというところを指している。
もちろんそこがどこなのか、本人以外にはわからない。
見舞いに町の旅館に立ち寄ったジプサムは眉を寄せた。
食材を買う金にケチったことはない。
2000リラを出せる自分の前で、ただとはなんなのだ。
旅館の食堂は、他の客たちを押し退け、すっかり彼らの定位置になっているようである。
「俺は木の実よりもがっつりと肉が食いたいんだが」
騎士見習いの不満を代表し、腕を組んだサラードがいう。
「肉はもちろん狩りをする。魚が欲しければ釣りをする。そうやって狩りが成功すれば肉や魚が食べられるし、午前中に捕まえられなければ肉はなしっということでどうかなあ?」
ユーディアの挑戦に、騎士たちは受けてたった。
わいのわいのとユーディアの回りに人が集まる。
ユーディアの背中に覆いかぶさるようにして身を乗り出しているのはブルースである。
「ここがいいんじゃないか?流れも急じゃなく、川へ降りる所もあった」
ユーディアの前に広げられた地図を指でさしている。
ブルースは、おとり捜査でユーディアを救いだしてから、ユーディアと離れようとしない。
ブルースは、ジプサムの護衛兵士として来ているはずなのにである。
「ということで、バーベキューにしましょう、いいですか?王子さま?」
ユーディアはなんとなく輪に入りそこねたジプサムに顔を向けた。
王子さまというのはなんなのだ。
ふたりきりだとジプサムと呼び捨てにするのに。
危険だからとか、もうすぐ山の中の離宮にいくので都会の快適さに少しでも長く身を置きたいとか、山には不測な危険があるとか、10ほどユーディアの申し出を却下する理由がよぎった。
だが、ユーディアの期待を込めたキラキラする目を見てしまえば、ジプサムはうなずいてしまう。
もしかして、あの前代未聞のワニの解体ショーはこうやってきまったのではないかと悟る。つい、乗せられてしまうのだ。
何に対してか自分でもわからない、もやもやとする不満が消えないジプサムをよそに、バーベキュー開催が決まったのである。
アッシュがユーディアに飲ませたという金木犀酒。
自白剤のことである。
金木犀酒自体は珍しいものでもないし、自白作用があるものではない。
なら、一体何が金木犀酒に入れられていたのだろうか。
アルタイ山は他と関わらないことを選んだ山岳民族が、少数ではあるが生活をしている。
彼らはめったに姿を現さない。
アッシュたちが渓谷の岩場の間で動けなくなっていたその少数民族の老人を見つけたという。
老人は足を骨折して動けず、激痛に苦しんでいた。
老人は、アッシュにあるものの採取を頼んだ。
それを食べると痛みをたちどころに忘れるという。
アッシュが見つけ、火にあぶり、老人に食べさせた。
老人がいうように痛みが和らいだようで眉間は緩んだ。
老人が食べたのは、鎮痛効果に加えて、問われたことをなんでも答えたくなる衝動を誘発する、ミラクルマッシュルームだという。
「わしらの祖先から代々伝わる秘密のきのこなんじゃ。誰にも教えてはならんぞ」
老人はアッシュに念を押しながらも、その絶対に教えてはならない部族の秘密をべらべらと教えてくれたそうである。
その、ミラクルマッシュルームはオレンジ色の丸っこい傘に黄色と緑の鮮やかな斑点が散らばり、茎は太く全体的にこんもりとした形をしていて、清浄な水が流れる渓流のそばにある朽ちた楠の木の幹にのみ生えるという。
アッシュがすぐに見つけたところからすると、見つけるのはそう困難ではなさそうであった。
「きのこに毒があるものはあっても、自白剤になるわけがないんじゃないですか。アッシュの最後のあがきで我々に毒きのこを食わせてダメージを与えようとしているのではないですか。いっそのこと、それをアッシュに食べさせて本当のところを白状するか確認しましょうか」
サニジンはきのこの作用に懐疑的であった。
ジプサムやサニジンたちが忙しく盗賊の事後処理に駆け回るなか、秋晴れの続く青空の元、町の中で暇をもてあましていたジャンは、町から少し足を延ばし渓流沿いでバーベキューでもしたいなとつぶやいた。
食いついたのは、ユーディア。
数日の間、ブルースがユーディアを過保護に部屋に閉じ込めて安静にさせられ、体を動かしたくてうずうずしていたのだ。
「バーベキュー!?隠れ里の近くの森の中に、アケビやら栗やら銀杏やらいっぱいあったよ。食材なら山の中に一杯あるから、もっていかなくてもいいんじゃない?ただだよ、ゼロリラ!」
空中に指が踊り、アケビやら栗やら見つけたというところを指している。
もちろんそこがどこなのか、本人以外にはわからない。
見舞いに町の旅館に立ち寄ったジプサムは眉を寄せた。
食材を買う金にケチったことはない。
2000リラを出せる自分の前で、ただとはなんなのだ。
旅館の食堂は、他の客たちを押し退け、すっかり彼らの定位置になっているようである。
「俺は木の実よりもがっつりと肉が食いたいんだが」
騎士見習いの不満を代表し、腕を組んだサラードがいう。
「肉はもちろん狩りをする。魚が欲しければ釣りをする。そうやって狩りが成功すれば肉や魚が食べられるし、午前中に捕まえられなければ肉はなしっということでどうかなあ?」
ユーディアの挑戦に、騎士たちは受けてたった。
わいのわいのとユーディアの回りに人が集まる。
ユーディアの背中に覆いかぶさるようにして身を乗り出しているのはブルースである。
「ここがいいんじゃないか?流れも急じゃなく、川へ降りる所もあった」
ユーディアの前に広げられた地図を指でさしている。
ブルースは、おとり捜査でユーディアを救いだしてから、ユーディアと離れようとしない。
ブルースは、ジプサムの護衛兵士として来ているはずなのにである。
「ということで、バーベキューにしましょう、いいですか?王子さま?」
ユーディアはなんとなく輪に入りそこねたジプサムに顔を向けた。
王子さまというのはなんなのだ。
ふたりきりだとジプサムと呼び捨てにするのに。
危険だからとか、もうすぐ山の中の離宮にいくので都会の快適さに少しでも長く身を置きたいとか、山には不測な危険があるとか、10ほどユーディアの申し出を却下する理由がよぎった。
だが、ユーディアの期待を込めたキラキラする目を見てしまえば、ジプサムはうなずいてしまう。
もしかして、あの前代未聞のワニの解体ショーはこうやってきまったのではないかと悟る。つい、乗せられてしまうのだ。
何に対してか自分でもわからない、もやもやとする不満が消えないジプサムをよそに、バーベキュー開催が決まったのである。
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