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第3部 冬山離宮 第7話 盗賊
59-2、騒動
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その手は触れる前にブルースに手首をつかまれひねりあげられた。
通りの屋台の影からサラードと騎士見習いの三人がジプサムたちを囲んで、さらなる不意うちにそなえた。
「あ、あなたたち、すごいわ!ベルゼラにもまともな感覚を持っている若者がいるっていうことに感動したわ!いっ、たたたっ。悪気はないんだから、放しなさい。早くしないとあなたたち、殺されるわよ?」
真っ赤に燃え上がるような髪は豊かに波打つ。
ブルースがつかむのは色白の肌。
女の身に着けるものは絹地に色とりどりのはばたく鳥が刺繍された高価な衣装。
脱げて転がっていく靴にも同じ鳥の刺繍が施されている。
赤毛の女の警告した通りあらたな襲撃にそなえた見習い騎士たちの周りには、ナイフをもった長身の男たちが4人ほど取り囲んだ。
男たちに緊張が走り、にらみ合った。
食堂の横で始まった騒ぎに、先ほどよりも人々はざわめき、恐怖の悲鳴があがる。
「放せ」
ジプサムに言われ、ブルースは女を解放する。
女は手首をさすった。
「ごめんなさい。他意はなかったの。奴隷女を助けるあなたたちに感動しただけ」
ブルースは膝をつき、脱げた靴を差し出すと、ジプサムは横から赤毛の女の手を取り支えた。
赤毛の女はブルースの男髪に目を丸くしながらも、するりと優雅に靴を履く。
「あなたの物騒な獲物を手にする護衛たちを穏便に収めてもらえないだろうか?俺の仲間は剣を抜くまいと頑張っているのだから」
ジプサムの言葉に、女はあらためて周囲を見た。
「わたしは無事だから。武器を収めて」
長身の男たちは赤毛の女の言葉に従った。
それをみてサラードたちも臨戦態勢を解除するが、緊張がほどかれたわけではない。
女は改めてジプサムに向かい合った。
女はジプサムと同年代か少し上。
真っ赤な髪にまけないぐらいド派手な化粧をして、その性格がおとなしいものでないことを告げている。
その目はジプサムに据えられている。
誰がトップなのか、押さえるべきところを知っているのだ。
「わたしはマーシャン領主の娘、モデリア。はじめまして。美都に来られるのははじめてですか?失礼ながらお名前をうかがってもよろしいでしょうか。そして、我が領民を助けていただいたお礼をして差し上げたいのですが」
奴隷の女を領民という。
「龍都からきたジプサムです。出不精なもので、噂は聞いておりましたが美都に来るのは初めてです」
握手を求めた手をジプサムは硬く握った。
その場は別れたが、翌日、マーシャン領主の館に招待されたのである。
通りの屋台の影からサラードと騎士見習いの三人がジプサムたちを囲んで、さらなる不意うちにそなえた。
「あ、あなたたち、すごいわ!ベルゼラにもまともな感覚を持っている若者がいるっていうことに感動したわ!いっ、たたたっ。悪気はないんだから、放しなさい。早くしないとあなたたち、殺されるわよ?」
真っ赤に燃え上がるような髪は豊かに波打つ。
ブルースがつかむのは色白の肌。
女の身に着けるものは絹地に色とりどりのはばたく鳥が刺繍された高価な衣装。
脱げて転がっていく靴にも同じ鳥の刺繍が施されている。
赤毛の女の警告した通りあらたな襲撃にそなえた見習い騎士たちの周りには、ナイフをもった長身の男たちが4人ほど取り囲んだ。
男たちに緊張が走り、にらみ合った。
食堂の横で始まった騒ぎに、先ほどよりも人々はざわめき、恐怖の悲鳴があがる。
「放せ」
ジプサムに言われ、ブルースは女を解放する。
女は手首をさすった。
「ごめんなさい。他意はなかったの。奴隷女を助けるあなたたちに感動しただけ」
ブルースは膝をつき、脱げた靴を差し出すと、ジプサムは横から赤毛の女の手を取り支えた。
赤毛の女はブルースの男髪に目を丸くしながらも、するりと優雅に靴を履く。
「あなたの物騒な獲物を手にする護衛たちを穏便に収めてもらえないだろうか?俺の仲間は剣を抜くまいと頑張っているのだから」
ジプサムの言葉に、女はあらためて周囲を見た。
「わたしは無事だから。武器を収めて」
長身の男たちは赤毛の女の言葉に従った。
それをみてサラードたちも臨戦態勢を解除するが、緊張がほどかれたわけではない。
女は改めてジプサムに向かい合った。
女はジプサムと同年代か少し上。
真っ赤な髪にまけないぐらいド派手な化粧をして、その性格がおとなしいものでないことを告げている。
その目はジプサムに据えられている。
誰がトップなのか、押さえるべきところを知っているのだ。
「わたしはマーシャン領主の娘、モデリア。はじめまして。美都に来られるのははじめてですか?失礼ながらお名前をうかがってもよろしいでしょうか。そして、我が領民を助けていただいたお礼をして差し上げたいのですが」
奴隷の女を領民という。
「龍都からきたジプサムです。出不精なもので、噂は聞いておりましたが美都に来るのは初めてです」
握手を求めた手をジプサムは硬く握った。
その場は別れたが、翌日、マーシャン領主の館に招待されたのである。
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