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第6話 ベルゼラの王
49-2、霊送りの祭り 解体ショー
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ゼプシーの舞台が始まった。
ジャンは客席の階段をあがりながら、仮面をつけた者たちの中から一人を探し出そうとしていた。
ジャンが探しているのはユーディアである。
片づけをして、星の宮にまで一緒に着替えに戻ってから、ユーディアを見失ってしまった。
ゼプシーたちが来るのを楽しみにしていた様子があったので、ユーディアのことだから先にきているのではないかと思うのだが、どんな仮装をするつもりなのか教えてくれていなかった。
正体不明な者たちの身体つきと口元を見極めなければならなかった。
そろいの赤い下着姿のような女郎の集団は、ベッカムとその部下たちである。
ドレスからは筋肉がはみ出している。
その顔は化粧がきつすぎる。
隻眼で赤いドレスは似合わさなすぎで、かえって面白い。
ジプサム王子はサニジンの服を借りている。
サニジンは、オレンジのショールを肩にかけた僧侶の恰好である。
ジプサム王子はサニジンに耳打ちをする。
サニジンが細い目をさらに細め、ぐるりと客席を見回し席を立った。
客席の間の通路を左右に目を配りながら歩き始めた。
ジプサム王子もユーディアを探していると直感する。
ユーディアはどのような恰好に仮装したのかわからない。
ジャンはあきらめて後方の席に腰を落ち着けた。
「こんにちは!黒猫さん」
ジャンは熊の耳をつけているが、黒猫は許容範囲内である。
「隣いいですか?日が落ちてようやく涼しく感じるようになりましたね」
声からは若い女である。
彼女は白いマスクに巨大なウサギ耳をつけていた。
ジャンはこの場にいないユーディアのことよりも、腕の産毛が触れ合わんばかりに近づいて座るウサギ耳の女子との会話に夢中になったのだった。
ジャンは客席の階段をあがりながら、仮面をつけた者たちの中から一人を探し出そうとしていた。
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正体不明な者たちの身体つきと口元を見極めなければならなかった。
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ドレスからは筋肉がはみ出している。
その顔は化粧がきつすぎる。
隻眼で赤いドレスは似合わさなすぎで、かえって面白い。
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客席の間の通路を左右に目を配りながら歩き始めた。
ジプサム王子もユーディアを探していると直感する。
ユーディアはどのような恰好に仮装したのかわからない。
ジャンはあきらめて後方の席に腰を落ち着けた。
「こんにちは!黒猫さん」
ジャンは熊の耳をつけているが、黒猫は許容範囲内である。
「隣いいですか?日が落ちてようやく涼しく感じるようになりましたね」
声からは若い女である。
彼女は白いマスクに巨大なウサギ耳をつけていた。
ジャンはこの場にいないユーディアのことよりも、腕の産毛が触れ合わんばかりに近づいて座るウサギ耳の女子との会話に夢中になったのだった。
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