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第3話 王子と舞姫
14-3、脱出
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本当にそれで良いのだろうか?
馬車に乗り込む最後の最後で、ユーディアの足が上がらない。
こうして闇に紛れて逃亡するために、ユーディアは残ったのではない。
「やっぱり、行くにしろ留まるにしろ、ジプサムと話がしたい」
サラサは険しく眉を寄せた。
「ジプサム?ベルゼラの預かり子が、この軍と関わっているですって?」
「ジプサムは、みんなには知らせていなかったけど、ベルゼラ国の王子なんだ」
「なんですって。西を理不尽にも惨殺した国の王子」
厚い化粧の下でサラサの表情がすっぽりと抜け落ちた。
ただ見開いたその目に殺意が宿る。
ユーディアは髪を解きだした。
「ユーディア!?何をしている!?」
ブルースがユーディアの手首を掴んだ。
「ジプサムに会いに行く。このまま何も言わず行くことはできない」
「どうやって?」
「彼はディアが踊ると必ず、その手をとっていたから。ディアとして会いに行く!」
今回もジプサムは自分の手を取るという確信に似たものがあった。
「ベルゼラの王子を殺しに、報復をしに行くのですか?」
報復という響きに、ユーディアの背中が緊張する。
ブルース頬が引きつり、切れ長の目が妖しく揺れた。
ブルースの父も兄二人もベルゼラ国軍に殺されたのだ。
平気なはずがなかった。
「わたしたちは、西のモルガンの半分をぼろぼろに失い、西も東も関係なく慣れ親しんだ土地を追い立てられるのです。ここにいる全員を殺すことはできなくても、たったひとりベルゼラ国王の息子さえ殺せれば、ベルゼラ国の崩壊の足掛かりにできるかもしれない。そうすれば、目には目を。掟とおり。釣り合います」
サラサの感情を押さえた言葉は、生き残ったモルガン族の誰もが抱く気持ちを代弁したものだった。
馬車に乗り込む最後の最後で、ユーディアの足が上がらない。
こうして闇に紛れて逃亡するために、ユーディアは残ったのではない。
「やっぱり、行くにしろ留まるにしろ、ジプサムと話がしたい」
サラサは険しく眉を寄せた。
「ジプサム?ベルゼラの預かり子が、この軍と関わっているですって?」
「ジプサムは、みんなには知らせていなかったけど、ベルゼラ国の王子なんだ」
「なんですって。西を理不尽にも惨殺した国の王子」
厚い化粧の下でサラサの表情がすっぽりと抜け落ちた。
ただ見開いたその目に殺意が宿る。
ユーディアは髪を解きだした。
「ユーディア!?何をしている!?」
ブルースがユーディアの手首を掴んだ。
「ジプサムに会いに行く。このまま何も言わず行くことはできない」
「どうやって?」
「彼はディアが踊ると必ず、その手をとっていたから。ディアとして会いに行く!」
今回もジプサムは自分の手を取るという確信に似たものがあった。
「ベルゼラの王子を殺しに、報復をしに行くのですか?」
報復という響きに、ユーディアの背中が緊張する。
ブルース頬が引きつり、切れ長の目が妖しく揺れた。
ブルースの父も兄二人もベルゼラ国軍に殺されたのだ。
平気なはずがなかった。
「わたしたちは、西のモルガンの半分をぼろぼろに失い、西も東も関係なく慣れ親しんだ土地を追い立てられるのです。ここにいる全員を殺すことはできなくても、たったひとりベルゼラ国王の息子さえ殺せれば、ベルゼラ国の崩壊の足掛かりにできるかもしれない。そうすれば、目には目を。掟とおり。釣り合います」
サラサの感情を押さえた言葉は、生き残ったモルガン族の誰もが抱く気持ちを代弁したものだった。
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