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第1部草原の掟 第1話 草原の民
4-2、新年の祭り
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西の者たちは男は上半身裸になり、傷あとを自慢げに魅せている者もいれば、空になった皿をよけて、体術を取ろうとする者もいる。
ジプサムが世話になる東の者たちは、西の者たちとくらべると随分大人しい。
ジプサムはユーディアの姿を探した。
いつの間にか、友人たちの姿がいなくなっている。
お腹も一杯になり、ちびりちびりと最初に注がれた馬乳酒を口に含む。
周囲は耳を覆いたくなるような喧騒であるが、初めて飲んだ酒のせいか瞼が重く眠気が襲う。
ジプサムは、異様な静けさに目を覚ました。
意識が飛んでいたのはほんの10分ぐらい。
クッションを抱くようにしてゼオンの背後で寝てしまっていた。
あれだけ人と料理とおしゃべりでにぎわっていた天幕は、様相を変えていた。
中央にはがらんどうの舞台ができている。
ぐるりと男たちが周囲を囲む。
先ほどの醜態をさらしていた者と同じ者たちとは思えないほど真面目な顔をして、背筋を伸ばして胡坐である。
彼らはどこに用意していたのか楽器を手にしていた。
縦笛、横笛、脇に抱えて弦をはじくシダール、足の間に挟んだ小太鼓。
細長いヒョウタンをつなげ、中に豆をいれた傾けるとしゃらららと涼し気な音を立てる楽器もある。
ジプサムの見たこともない楽器もある。
年かさの若者や大人たちに混ざり、カカ、ライード、シャビ、トーレス、ブルースの姿を見つけた。彼らも手に楽器を持っていた。
テントにいる男の中で楽器を手にしていないのは、族長たちとジプサムだけのようだった。
「……何が始まるんですか?」
ジプサムは慌てて座り直した。
この厳粛さは儀式であった。
ゼオンは口に指をたてた。
「ああ、ジプサムは新年に来たのは初めてだったな。これから舞がはじまるんだよ。みんなこの日のために練習している。年に一度の晴れ舞台でもあるんだ。圧巻だよ」
ゼオンの目元は優しい。声を落として教えてくれる。
ジプサムは、楽器を持つ男たちの中にユーディアを探した。
ユーディアだったら、真正面で大きな太鼓をたたきそうだったが、見つけられない。
男たちが多すぎて二列になっているところもある。
背後にいて影になっているのか、ジプサムには見つけられなかった。
目に見えて、場の緊張感が高まっていく。
一人の女が音もなく舞台の中央に歩みでる。
その足は素足である。
髪を高く結い上げ、袖のない真白で薄手のモルガンの衣裳に、首に腕に手首に足首に金の輪銀の輪が重ねられている。
顔は伏せられ誰だかわからない。
成熟した美しい女であることは分かった。
テントの幕は巻き上げられていた。
外にも幾重にも着飾る人々が重なっていた。
モルガン族の全員が、このテントを取り囲んでいた。
新年を祝う踊りが始まるのを、息を凝らして待っていた。
ジプサムが世話になる東の者たちは、西の者たちとくらべると随分大人しい。
ジプサムはユーディアの姿を探した。
いつの間にか、友人たちの姿がいなくなっている。
お腹も一杯になり、ちびりちびりと最初に注がれた馬乳酒を口に含む。
周囲は耳を覆いたくなるような喧騒であるが、初めて飲んだ酒のせいか瞼が重く眠気が襲う。
ジプサムは、異様な静けさに目を覚ました。
意識が飛んでいたのはほんの10分ぐらい。
クッションを抱くようにしてゼオンの背後で寝てしまっていた。
あれだけ人と料理とおしゃべりでにぎわっていた天幕は、様相を変えていた。
中央にはがらんどうの舞台ができている。
ぐるりと男たちが周囲を囲む。
先ほどの醜態をさらしていた者と同じ者たちとは思えないほど真面目な顔をして、背筋を伸ばして胡坐である。
彼らはどこに用意していたのか楽器を手にしていた。
縦笛、横笛、脇に抱えて弦をはじくシダール、足の間に挟んだ小太鼓。
細長いヒョウタンをつなげ、中に豆をいれた傾けるとしゃらららと涼し気な音を立てる楽器もある。
ジプサムの見たこともない楽器もある。
年かさの若者や大人たちに混ざり、カカ、ライード、シャビ、トーレス、ブルースの姿を見つけた。彼らも手に楽器を持っていた。
テントにいる男の中で楽器を手にしていないのは、族長たちとジプサムだけのようだった。
「……何が始まるんですか?」
ジプサムは慌てて座り直した。
この厳粛さは儀式であった。
ゼオンは口に指をたてた。
「ああ、ジプサムは新年に来たのは初めてだったな。これから舞がはじまるんだよ。みんなこの日のために練習している。年に一度の晴れ舞台でもあるんだ。圧巻だよ」
ゼオンの目元は優しい。声を落として教えてくれる。
ジプサムは、楽器を持つ男たちの中にユーディアを探した。
ユーディアだったら、真正面で大きな太鼓をたたきそうだったが、見つけられない。
男たちが多すぎて二列になっているところもある。
背後にいて影になっているのか、ジプサムには見つけられなかった。
目に見えて、場の緊張感が高まっていく。
一人の女が音もなく舞台の中央に歩みでる。
その足は素足である。
髪を高く結い上げ、袖のない真白で薄手のモルガンの衣裳に、首に腕に手首に足首に金の輪銀の輪が重ねられている。
顔は伏せられ誰だかわからない。
成熟した美しい女であることは分かった。
テントの幕は巻き上げられていた。
外にも幾重にも着飾る人々が重なっていた。
モルガン族の全員が、このテントを取り囲んでいた。
新年を祝う踊りが始まるのを、息を凝らして待っていた。
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