上 下
228 / 238
第十三話 成婚

130-2、公開告白

しおりを挟む
「そんなこと、意気地なしのレオが、できるはずがないでしょう!それに、あなたは運動神経だってあやしいんだから!」
 ベラは怒りながら叫び返した。
 ロレットとイリスを両脇に抱えて部屋に押し戻す。
 後ろ手に勢い良く閉めた。
 バタンと大きな音が響いた。姫らしからぬ騒音であるが、誰も気にしていない。その事よりも、公開告白である。

「どうするの?あんた、いま、あのおとなしかったレオに、公開告白、夜這い宣言、略奪宣言をされていたわよ!」
 イリスが自分のことのように興奮している。
 ベラは首を激しく振った。
 口を引き結び顔は真っ赤。
 大きな目には涙がにじみはじめた。

「だから、パジャンに行くのは無理なの。どうしてわかってくれないのよ、レオのくせに!」
「自分の気持ちをはっきりと伝えられるのは、意気地なしじゃできないと思うよ。レオは格好よくなったね。ベラが羨ましいぐらいだわ」
 ロゼリアはぽつりという。
「ロズこそ、羨ましいってことはないんじゃないですか?ジルコン王子はどんな風に、ロズに結婚を申し込みされたのですか?」
 ロゼリアの言葉に反応したのはロレット。
 ベッドのロゼリアに詰め寄った。
「そうよ、それが知りたかったの!」
 イリスも食い付いてきた。
 その目が輝いている。
 イリスはいつからか、ロゼリアの恋を応援する方向へ変わっていた。
「え、ひと様にいえるようなものがあるわけでもなくて……」
 ロゼリアは歯切れ悪くもごもごという。
 シーツを胸元まで引き上げた。

 友人たちはロゼリアを逃さない。
 ここにこうして集まれるのもこれが最後なのだ。

 パジャンのメンバーは明日帰路につく。
 ロレットも、イリスも、ベラも、もう王都に滞在する理由はない。
 既に旱魃の対応のために多くの者たちが帰国している状況で、今年の夏スクールは終了だった。雨が降ったからそれで終わりではなかった。旱魃の被害の現状の把握と回復のために、若者たちがしなければならないことも多いのだ。問題に対して自主的に活動することも学んだことの一つである。

「なにも言われていないの」
「はい?」
「ジルコンから結婚の申し込みはされていないわ」

 とうとうロゼリアは言った。
 嘘は言っていない。
 よくよく思い返しても、雨乞いの神事の間、ロゼリアは心を分けた妻役の代役ではあったが、ジルコンから結婚の話は出てこなかったではないか。
 あれから、ジルコンをララが足止めしていることもあり、直接会っていないのだ。

「ええ?でも王都でも、王と王妃と、王子と未来の妻アデールの姫の、雨乞いの奇跡の話で持ち切りなのに?婚約無期限延長のままだというの!?」
 レオの時の衝撃よりも、さらに大きな衝撃を受けて、ベラの涙は止まっている。
 ロゼリアは居たたまれなくなった。
 涙の混ざる鼻水を盛大にかんだのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

四回目の人生は、お飾りの妃。でも冷酷な夫(予定)の様子が変わってきてます。

千堂みくま
恋愛
「あぁああーっ!?」婚約者の肖像画を見た瞬間、すべての記憶がよみがえった。私、前回の人生でこの男に殺されたんだわ! ララシーナ姫の人生は今世で四回目。今まで三回も死んだ原因は、すべて大国エンヴィードの皇子フェリオスのせいだった。婚約を突っぱねて死んだのなら、今世は彼に嫁いでみよう。死にたくないし!――安直な理由でフェリオスと婚約したララシーナだったが、初対面から夫(予定)は冷酷だった。「政略結婚だ」ときっぱり言い放ち、妃(予定)を高い塔に監禁し、見張りに騎士までつける。「このままじゃ人質のまま人生が終わる!」ブチ切れたララシーナは前世での経験をいかし、塔から脱走したり皇子の秘密を探ったりする、のだが……。あれ? 冷酷だと思った皇子だけど、意外とそうでもない? なぜかフェリオスの様子が変わり始め――。 ○初対面からすれ違う二人が、少しずつ距離を縮めるお話○最初はコメディですが、後半は少しシリアス(予定)○書き溜め→予約投稿を繰り返しながら連載します。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

完 あの、なんのことでしょうか。

水鳥楓椛
恋愛
 私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。  よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。  それなのに………、 「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」  王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。 「あの………、なんのことでしょうか?」  あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。 「私、彼と婚約していたの?」  私の疑問に、従者は首を横に振った。 (うぅー、胃がいたい)  前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。 (だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。

しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。 次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。 破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。

処理中です...