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第十話 ダンス勝負
100-1、ダンスのペアは誰?②
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「まずは隣の人とペアを組んでください」
「適当にですか!?」
「適当でいいです。少し踊り、途中でペアは変わっていってもらいますので」
「ペアになりたい人となればいいのではないですか?」
そう発言したのはベラである。
うんうんとうなずくのは男女ともにいるようだった。
「ではそのことも少し考えておきましょう」
ロゼリアはどきどきする。
女子として男子と組むのは初めてだったからだ。
うまくいくか自信がない。
はじめのステップは男女とも同じなので、そう変わりはないと思えるのだが。
次々に隣あう者たちでペアができていく。
近くにはジルコンと、エストと、ノルと、ラドー……。
女子は、ジュリア、イリス、ロレット、クレア、ディア……
男子も女子も、ざっと見回して、その中で視線を走らせ相手の視線を捕まえようとする。
ジルコンが首を巡らしてロゼリアに気が付いた。
エストもロゼリアにしばし留まるが、ジルコンに遠慮して視線を外す。
ノルが何かもの言いたげに視線を寄越している。ロゼリアはその目を見ないようにずらした。
ノルとはアンジュだった時にいい印象はないからだ。
一瞬のうちに、無言の意思疎通が会場中で行われた。
ジルコンはロゼリアをみていた。
その目を合わせてにこりと同意の合図をおくれば、ペアになる。
ペアになれば、ロゼリアがダンスができないことがばれてしまう。
それはしょうがないことで。
ロゼリアは観念した。顔をあげジルコンを見た。
「本当にわたしはヘタなんだけれど……」
最後まで言えずに遮られた。
「ああ、どうしよう!わたしっ、あぶれてしまう!」
そう悲痛にロゼリアに縋りついたのは隣にいたロレットである。
「今日は女性が二人多わ!こういう時って、いつだってわたしがいつもあふれる役回りなの」
「女の先生が男性パートに入ってくれるはず」
ロゼリアはいうが、ロレットがロゼリアの腕を放しそうになかった。
「えっと、じゃあロレット、わたしが男子をやるのでペアになってもらえる?」
「ええ?そんなのできるの?」
ロレットはロゼリアとジルコンを見比べた。
「でもロズはジルコンさまとペアじゃあないの?」
そう言いつつもわずかに期待が込められている。
「彼女とペアを組んでやれよ。俺は別に探す」
どうでもいいとでもいうかのように素っ気なくいう。
ジルコンはイリスに声をかけている。
「わたしでよろしいですのね」
喜びをかみ殺したイリスの上ずった声。
ロゼリアはしまったと思った時はもう遅い。
一組だけ、女子と女子でのペアステップが始まったのである。
女子と男子の違いは手の重ね方ぐらいではないかとロゼリアは思う。
もしかして、苦手意識が強いだけで男子のパートが踊れるのならば、女子もそうたいして違いがないのかもしれない。
講師の合図でペアが前後にずれていく。
ロゼリアの数組前を行くジルコンは、笑顔ひとつ浮かべていない。
ジルコンは、どの女子とのレッスンも淡々とこなしている。
ジルコンは女子全般に対して冷たい表情であることに気が付いた。
もしかして、アンジュに見せた顔の方が、ジルコンにとって例外だったのかもしれないと思う。
ロゼリアは何人目かの交代で、イリスが相手になった。
「なんで姫さまが男子のパートなのよ!」と不満をぶつけてくる。
「ほかの女子たちは喜んでくれているわよ」
ロゼリアも負けてはいない。
イリスもある意味わかりやすい。男子と女子では態度がまったく違う。
女子には辛辣。権力には弱そうである。だからジュリアを立てる。ジュリアから離れない。
自分よりも弱い立場だとみなしたロレットに対しては、気持ちを弄び卑屈な態度を楽しんでいた。
ロレットという玩具と、イリスたちとの精神的なつながりを切り離したロゼリアを、イリスは徹底的に叩き潰すことで再び優越感を得ようともくろんでいた。
ロゼリアも大人しく、ララとイリスが決めたダンス勝負というものに負けるつもりはないのだが。
「でも、まるで初心者じゃないようで安心したわ。この後、講師の先生にどんな勝負がいいか聞きに行くわよ」
授業の終盤に、何か質問はないかという問いかけに対してイリスは手を挙げた。
「先生、ダンスで対決をするのならばどんな勝負がいいと思いますか」
思いもよらない質問に、壮年の講師二人は顔を見合わせた。
「ダンスで勝負というのは、ペアダンスで勝負ということですか?それだと、代表的なワルツや、クイックステップ、などの五種類のダンスで、順番を付けていくのですが、勝負を目的としてこの夏スクールの限られた時間で仕上たいとおっしゃるのなら、やり方を変更しなければなりません。それにペアを固定するほうがいいでしょう」
その答えに、会場はざわめいた。
「先生がいらっしゃる二ヶ月間の間に五種類のダンスを学ぶことは難しいですか?」
「適当にですか!?」
「適当でいいです。少し踊り、途中でペアは変わっていってもらいますので」
「ペアになりたい人となればいいのではないですか?」
そう発言したのはベラである。
うんうんとうなずくのは男女ともにいるようだった。
「ではそのことも少し考えておきましょう」
ロゼリアはどきどきする。
女子として男子と組むのは初めてだったからだ。
うまくいくか自信がない。
はじめのステップは男女とも同じなので、そう変わりはないと思えるのだが。
次々に隣あう者たちでペアができていく。
近くにはジルコンと、エストと、ノルと、ラドー……。
女子は、ジュリア、イリス、ロレット、クレア、ディア……
男子も女子も、ざっと見回して、その中で視線を走らせ相手の視線を捕まえようとする。
ジルコンが首を巡らしてロゼリアに気が付いた。
エストもロゼリアにしばし留まるが、ジルコンに遠慮して視線を外す。
ノルが何かもの言いたげに視線を寄越している。ロゼリアはその目を見ないようにずらした。
ノルとはアンジュだった時にいい印象はないからだ。
一瞬のうちに、無言の意思疎通が会場中で行われた。
ジルコンはロゼリアをみていた。
その目を合わせてにこりと同意の合図をおくれば、ペアになる。
ペアになれば、ロゼリアがダンスができないことがばれてしまう。
それはしょうがないことで。
ロゼリアは観念した。顔をあげジルコンを見た。
「本当にわたしはヘタなんだけれど……」
最後まで言えずに遮られた。
「ああ、どうしよう!わたしっ、あぶれてしまう!」
そう悲痛にロゼリアに縋りついたのは隣にいたロレットである。
「今日は女性が二人多わ!こういう時って、いつだってわたしがいつもあふれる役回りなの」
「女の先生が男性パートに入ってくれるはず」
ロゼリアはいうが、ロレットがロゼリアの腕を放しそうになかった。
「えっと、じゃあロレット、わたしが男子をやるのでペアになってもらえる?」
「ええ?そんなのできるの?」
ロレットはロゼリアとジルコンを見比べた。
「でもロズはジルコンさまとペアじゃあないの?」
そう言いつつもわずかに期待が込められている。
「彼女とペアを組んでやれよ。俺は別に探す」
どうでもいいとでもいうかのように素っ気なくいう。
ジルコンはイリスに声をかけている。
「わたしでよろしいですのね」
喜びをかみ殺したイリスの上ずった声。
ロゼリアはしまったと思った時はもう遅い。
一組だけ、女子と女子でのペアステップが始まったのである。
女子と男子の違いは手の重ね方ぐらいではないかとロゼリアは思う。
もしかして、苦手意識が強いだけで男子のパートが踊れるのならば、女子もそうたいして違いがないのかもしれない。
講師の合図でペアが前後にずれていく。
ロゼリアの数組前を行くジルコンは、笑顔ひとつ浮かべていない。
ジルコンは、どの女子とのレッスンも淡々とこなしている。
ジルコンは女子全般に対して冷たい表情であることに気が付いた。
もしかして、アンジュに見せた顔の方が、ジルコンにとって例外だったのかもしれないと思う。
ロゼリアは何人目かの交代で、イリスが相手になった。
「なんで姫さまが男子のパートなのよ!」と不満をぶつけてくる。
「ほかの女子たちは喜んでくれているわよ」
ロゼリアも負けてはいない。
イリスもある意味わかりやすい。男子と女子では態度がまったく違う。
女子には辛辣。権力には弱そうである。だからジュリアを立てる。ジュリアから離れない。
自分よりも弱い立場だとみなしたロレットに対しては、気持ちを弄び卑屈な態度を楽しんでいた。
ロレットという玩具と、イリスたちとの精神的なつながりを切り離したロゼリアを、イリスは徹底的に叩き潰すことで再び優越感を得ようともくろんでいた。
ロゼリアも大人しく、ララとイリスが決めたダンス勝負というものに負けるつもりはないのだが。
「でも、まるで初心者じゃないようで安心したわ。この後、講師の先生にどんな勝負がいいか聞きに行くわよ」
授業の終盤に、何か質問はないかという問いかけに対してイリスは手を挙げた。
「先生、ダンスで対決をするのならばどんな勝負がいいと思いますか」
思いもよらない質問に、壮年の講師二人は顔を見合わせた。
「ダンスで勝負というのは、ペアダンスで勝負ということですか?それだと、代表的なワルツや、クイックステップ、などの五種類のダンスで、順番を付けていくのですが、勝負を目的としてこの夏スクールの限られた時間で仕上たいとおっしゃるのなら、やり方を変更しなければなりません。それにペアを固定するほうがいいでしょう」
その答えに、会場はざわめいた。
「先生がいらっしゃる二ヶ月間の間に五種類のダンスを学ぶことは難しいですか?」
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