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第1部 第1話 ボリビア王国とラブラド王国の二人の王子
7-2、晩餐会
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「わたしがボリビアにいくことで全てが収まるならわたしはいくわ!」
セレスが鼻息荒く息巻いていた。
気丈にもその目には覚悟がある。
部屋にはラズと二人きりである。
「セレスは駄目だ!わたしがあの男を仕留める。奴隷たちを焚き付けて美しい町を燃やし国内を混乱させて、それをあたかも助っ人面して取り成し、ボリビアの支配下におこうなんて、そんな企み許せない。
そして、お前をボリビアの王に差し出せなんて、絶対にさせない。あいつを許せない」
ブルーグレイの瞳は、今だかつてないほど激しく憤怒の炎を燃やしていた。
「いつもの悪ふざけでしていたように、あなたとわたしは入れ替わる。今夜の晩餐でボリビアの王子に接近する。その時にあいつを刺し違えても殺る!むざむざ我々の美しい都をあいつにやらない」
兄の声音にセレスは震えた。
優しい兄から人を殺めるという言葉を聞くとは一度も想像したことがなかった。
セレスには何か兄とあいつとの間に何かあったのかと訝しむが、彼とあったのは数日前が初めてのはずである。
「お兄さま、それは命がけだわ!」
「ねえ、セレス。子供のころから入れ替わって剣術やダンスをしていたのは、まるで、この時のためのだったと思わないかい?」
鏡に写したように同じ顔をした妹の顔を手のひらで包みこむ。
双子は運命を絡ませて生まれてくるという。
「あなたがボリビアの王に献上されるのも命がけだ。そんなことさせない。
わたしの片割れには幸せになって欲しい。わたしが万が一失敗しても、あなたはジュードと結婚しいずれ王妃となりラブラドを支えて欲しい。わたしか、あなたが生き残れば、それは我々の勝ちだとは思わないか?」
ラズワードは、恋をして何度もキスを交わした異国の男が、ボリビア国の王子であることを知ってしまった。
しかも密かに国内の奴隷を煽って、ラブラド国を思いのままに征服する。
彼が初めて淡い恋ごころを抱いた相手は、あろうことかラブラドの敵国の王子であった。
決起集会に彼がいたのは、用意周到にこの内部から崩壊させる策略を遂行するためだったのだ。そして、すべてを見越して身を守れといったのだ。
目論見通り、彼の計画は成功し妹をボリビア王への献上品のように扱おうとしている。
そんなことは命に替えても許せなかった。
晩餐会は広間で行われる。
沢山のかがり火とランプが、豪奢な食事と生けられた百花を照らしている。
王宮専属の音楽隊が、芸術の国らしく優雅に曲を奏で手いた。
その場にいると城下の町が焼かれたことや王族が軟禁されていることも、一筋も感じさせなかった。まるで毎晩行われている舞踏会が今夜も行われているようであった。
ラブラドの国王がボリビア国と王子、援助の兵団に感謝の意を述べる。
参加しているのは王族と、ザクセンとジュード。王国の政治の中枢の者たちと、選りすぐったきれいどころの貴族の娘たち。
ボリビア側は帯刀した王子と護衛のテーゼと軍部と騎士団の男たちの物々しい面々。
彼らの黒服は、血と汗の洗っても落ちない臭いが染み付き、きらびやかに誂われた広間に黒く広がるシミのような、禍々しさを加えていた。
娘たちの華やかさに、すでに東の兵たちは目移りするが、名高いラブラドの二粒の真珠が彼らのお目当てだった。
中原にその名をとどろかせる、美しい双子の兄妹は、並み居るものが固唾をのんで見守る中央のダンススペースへと手をとり合いながら滑るように歩みでる。
一人は、淡いシルクのベールの顔を隠す被りものに、その下は体が透けそうな薄もの。煌めく宝石の首飾りに腰飾り。
もう一人は、凛々しく装った騎士の姿。
二人は物語から抜け出して来たような美しさだった。
オブシディアンは二人に釘付けになり、身をのり出した。
金髪の騎士は、彼の探し求める娘のラズの顔だからだ。
オブシディアンはコックの言った言葉を思い出す。ラズワード王子の愛称でラズなら、この騎士が祭りのラズなのか?
だが、オブシディアンの探すのは娘のラズである。双子の片割れの、ベールの娘が双子の兄の愛称を騙った、彼の焦がれるラズなのか?
奴隷のラズを救いたい一心で、オブシディアンはこの謀略を支持した。
自分は奴隷であるといったそのラズが、本当のところは王族であるということなど、あり得るのだろうか?
オブシディアンは混乱する。
姫ならば、もしかして一滴の血も流さず別の手段でラブラドを手にいれることができたかも知れなかった。
恋する乙女の手応えを、まったく感じないわけではなかったからだ。
オブシディアンの恋ごころを全身全霊で訴えれば、婚約の申し出をはねのけ続けているというラズの心を正面から堂々と得ることもできたのではないか?
もしかしたら、婚約を断っているのも自分という存在が影響しているのではないか、なんてボルビアの若き王子は思うのだ。
彼は眉目秀麗な若き鷹。彼が本気で落とそうとして落ちない娘はいなかった。
オブシディアンは見極めようとして目を凝らした。だがそれは、彼らの美しさをいっそうその目に吸い込むことになり、心を引き離しがたく結びつけられるのみであった。
「今夜は私どもの歓迎の舞からお楽しみください」
その王子が鈴のような声で音楽隊に合図を送ると、二人は軽いステップを踏んで踊り出した。
オブシディアンも踊ったことのある、城下の祭りで踊られるダンスの、さらに洗練された優雅なラブラド伝統舞踊だった。
二人は立ち位置を巧みに入れ替りながら、しなやかな体で、村娘と男の恋の駆け引きを表現する。
次第に早く激しくなるリズム。
ふわっとベールを夢のようにまとわりつかせながら、娘は軽やかなステップを踏む。二人の同じ色の、灯りを照り返す黄金の髪が、見るものに催眠術をかけるように、妖しく波打ち弾む。
男たちは、あの黄金の艶やかな髪を体に沿わせさせたらどんなに気持ちが良いのだろうと夢想した。
ジュードは二人が手にとって舞台に現れたときから違和感を感じていた。
そして躍りが始まるとすぐにその違和感の正体がわかる。
王子はセレスで、姫はラズワード王子だった!二人は入れ替わっているのだった。
なんのために?
ジュードはラズワードの刺し違えてもボリビアの王子を謀殺するその決意を知らないが、不穏な予感におののいた。
セレスの騎士とラズワードのベールの娘は踊りの最後に離れていく。
次の曲には新たな恋人が必要だった。
セレス姫は貴族の娘の手をとり、中央に率いれる。
手を取られた娘は頬を染めた。
ベールの姫に扮したラズワードも次の恋人を探し、煌めく瞳を東の兵たちの顔をなめるように滑らせていく。
見られた男たちは胸を踊らせる。
中原の美姫の美しい瞳だった。
己の手をとってほしいと願わずにはいられない。
だが、ま白いその手が触れたのは取ったのは黒髪黒服のボリビアの王子。
ブルーグレイの宵闇の瞳が、オブシディアンの心を写しこむ。
この娘こそ、探していた奴隷の娘ラズだった!
ラズは王子を立ち上がらせて、引き寄せる。ベールに炊かれた香の香りが、オブシディアンを官能に誘う。
「踊りましょう?祭りの夜のように、、」
綺麗な指先がオブシディアンの胸に触れる。
二人は舞台に躍りでた。貴族の娘たちも華やかなドレスをひらめかせて、お目当ての東の兵や騎士を誘い出す。ダンスを踊ったことのないものも、優しい手につい誘い出されてしまう。
それは色仕掛けの饗宴だった。
リズムは先程の激しさからゆったりとしたしたものに変わっている。
自然と肩と胸が寄り添うような。
ベールの娘の手がボルビアの王子の胸を腰をおずおずと触れ、ためらいがちに滑り降りる。
まるで初めて愛を交わそうとする恥じらう娘のようだ、とオブシディアンは思う。
そのたおやかな手が腰に落ちたとき、シャンと金属の擦れる音をさせながら、オブシディアンの腕の中からベールの娘は後ろ飛びに逃れた。
その両の手には鈍く輝るボルビアの剣が握られていた。
会場に一瞬の静寂。
そして、何が起こったか理解されると、その場は、ボルビア側もラブラド側も騒然となった。
「ラズだな、やるな」
オブシディアンは感心していた。
ここまで自分に油断させ、さらに剣を突きつけるところまでできた相手はいなかった。
決起集会で見せた度胸があれば、さもありなんとも思う。流石、自分が惚れた娘であると妙に冷静に相手を賞賛する気持ちまで起こる。
テーゼが動き出そうとしているのを手で押さえた。
「兵を引かせよ!ここでお前を殺す前に!」
ラズは言う。
「あなたにその剣が使えるのか?」
とオブシディアン。
ラズワードはかっとして降り下ろそうとするが、間合いを詰められ手首を強い力で締め上げられた。
ラズは苦痛に顔を歪ませ、あっという間に中原最強の武器を落としてしまう。
歴戦を潜り抜けてきた男と、王宮でぬくぬくと守られてきた男では、武器を持つとはいえ、その勝負は赤子の手を捻るようなものだった。
そのまま、ラズワードは両手を後手に捕まえられる。
悲鳴が騎士姿のセレスからあがる。失敗した!
「お兄さま!」
「ラズワードさま!」
助けに入ろうと体当たりしようとした決死のジュードが、東の兵に押さえつけられた。
オブシディアンは目を細め、自分の体の下で腕を絞られて顔を歪ませる肌の淡く透けるベールの娘にいう。
「美しい刺客殿。そなたはラズを名乗るセレス姫なのか?それとも兄王子のラズワードか?もしくはラズワードは姫で双子は娘二人なのか?返事はなしか?
いずれにしろ父王に捧げるのはもったいない!面白い趣向で充分楽しませてもらった!宴会は終わりだ!」
晩餐会は終了する。
ラズワードはオブシディアンに捉えられた。ボリビアの憎き侵略者を殺害する計画は失敗したのだった。
セレスが鼻息荒く息巻いていた。
気丈にもその目には覚悟がある。
部屋にはラズと二人きりである。
「セレスは駄目だ!わたしがあの男を仕留める。奴隷たちを焚き付けて美しい町を燃やし国内を混乱させて、それをあたかも助っ人面して取り成し、ボリビアの支配下におこうなんて、そんな企み許せない。
そして、お前をボリビアの王に差し出せなんて、絶対にさせない。あいつを許せない」
ブルーグレイの瞳は、今だかつてないほど激しく憤怒の炎を燃やしていた。
「いつもの悪ふざけでしていたように、あなたとわたしは入れ替わる。今夜の晩餐でボリビアの王子に接近する。その時にあいつを刺し違えても殺る!むざむざ我々の美しい都をあいつにやらない」
兄の声音にセレスは震えた。
優しい兄から人を殺めるという言葉を聞くとは一度も想像したことがなかった。
セレスには何か兄とあいつとの間に何かあったのかと訝しむが、彼とあったのは数日前が初めてのはずである。
「お兄さま、それは命がけだわ!」
「ねえ、セレス。子供のころから入れ替わって剣術やダンスをしていたのは、まるで、この時のためのだったと思わないかい?」
鏡に写したように同じ顔をした妹の顔を手のひらで包みこむ。
双子は運命を絡ませて生まれてくるという。
「あなたがボリビアの王に献上されるのも命がけだ。そんなことさせない。
わたしの片割れには幸せになって欲しい。わたしが万が一失敗しても、あなたはジュードと結婚しいずれ王妃となりラブラドを支えて欲しい。わたしか、あなたが生き残れば、それは我々の勝ちだとは思わないか?」
ラズワードは、恋をして何度もキスを交わした異国の男が、ボリビア国の王子であることを知ってしまった。
しかも密かに国内の奴隷を煽って、ラブラド国を思いのままに征服する。
彼が初めて淡い恋ごころを抱いた相手は、あろうことかラブラドの敵国の王子であった。
決起集会に彼がいたのは、用意周到にこの内部から崩壊させる策略を遂行するためだったのだ。そして、すべてを見越して身を守れといったのだ。
目論見通り、彼の計画は成功し妹をボリビア王への献上品のように扱おうとしている。
そんなことは命に替えても許せなかった。
晩餐会は広間で行われる。
沢山のかがり火とランプが、豪奢な食事と生けられた百花を照らしている。
王宮専属の音楽隊が、芸術の国らしく優雅に曲を奏で手いた。
その場にいると城下の町が焼かれたことや王族が軟禁されていることも、一筋も感じさせなかった。まるで毎晩行われている舞踏会が今夜も行われているようであった。
ラブラドの国王がボリビア国と王子、援助の兵団に感謝の意を述べる。
参加しているのは王族と、ザクセンとジュード。王国の政治の中枢の者たちと、選りすぐったきれいどころの貴族の娘たち。
ボリビア側は帯刀した王子と護衛のテーゼと軍部と騎士団の男たちの物々しい面々。
彼らの黒服は、血と汗の洗っても落ちない臭いが染み付き、きらびやかに誂われた広間に黒く広がるシミのような、禍々しさを加えていた。
娘たちの華やかさに、すでに東の兵たちは目移りするが、名高いラブラドの二粒の真珠が彼らのお目当てだった。
中原にその名をとどろかせる、美しい双子の兄妹は、並み居るものが固唾をのんで見守る中央のダンススペースへと手をとり合いながら滑るように歩みでる。
一人は、淡いシルクのベールの顔を隠す被りものに、その下は体が透けそうな薄もの。煌めく宝石の首飾りに腰飾り。
もう一人は、凛々しく装った騎士の姿。
二人は物語から抜け出して来たような美しさだった。
オブシディアンは二人に釘付けになり、身をのり出した。
金髪の騎士は、彼の探し求める娘のラズの顔だからだ。
オブシディアンはコックの言った言葉を思い出す。ラズワード王子の愛称でラズなら、この騎士が祭りのラズなのか?
だが、オブシディアンの探すのは娘のラズである。双子の片割れの、ベールの娘が双子の兄の愛称を騙った、彼の焦がれるラズなのか?
奴隷のラズを救いたい一心で、オブシディアンはこの謀略を支持した。
自分は奴隷であるといったそのラズが、本当のところは王族であるということなど、あり得るのだろうか?
オブシディアンは混乱する。
姫ならば、もしかして一滴の血も流さず別の手段でラブラドを手にいれることができたかも知れなかった。
恋する乙女の手応えを、まったく感じないわけではなかったからだ。
オブシディアンの恋ごころを全身全霊で訴えれば、婚約の申し出をはねのけ続けているというラズの心を正面から堂々と得ることもできたのではないか?
もしかしたら、婚約を断っているのも自分という存在が影響しているのではないか、なんてボルビアの若き王子は思うのだ。
彼は眉目秀麗な若き鷹。彼が本気で落とそうとして落ちない娘はいなかった。
オブシディアンは見極めようとして目を凝らした。だがそれは、彼らの美しさをいっそうその目に吸い込むことになり、心を引き離しがたく結びつけられるのみであった。
「今夜は私どもの歓迎の舞からお楽しみください」
その王子が鈴のような声で音楽隊に合図を送ると、二人は軽いステップを踏んで踊り出した。
オブシディアンも踊ったことのある、城下の祭りで踊られるダンスの、さらに洗練された優雅なラブラド伝統舞踊だった。
二人は立ち位置を巧みに入れ替りながら、しなやかな体で、村娘と男の恋の駆け引きを表現する。
次第に早く激しくなるリズム。
ふわっとベールを夢のようにまとわりつかせながら、娘は軽やかなステップを踏む。二人の同じ色の、灯りを照り返す黄金の髪が、見るものに催眠術をかけるように、妖しく波打ち弾む。
男たちは、あの黄金の艶やかな髪を体に沿わせさせたらどんなに気持ちが良いのだろうと夢想した。
ジュードは二人が手にとって舞台に現れたときから違和感を感じていた。
そして躍りが始まるとすぐにその違和感の正体がわかる。
王子はセレスで、姫はラズワード王子だった!二人は入れ替わっているのだった。
なんのために?
ジュードはラズワードの刺し違えてもボリビアの王子を謀殺するその決意を知らないが、不穏な予感におののいた。
セレスの騎士とラズワードのベールの娘は踊りの最後に離れていく。
次の曲には新たな恋人が必要だった。
セレス姫は貴族の娘の手をとり、中央に率いれる。
手を取られた娘は頬を染めた。
ベールの姫に扮したラズワードも次の恋人を探し、煌めく瞳を東の兵たちの顔をなめるように滑らせていく。
見られた男たちは胸を踊らせる。
中原の美姫の美しい瞳だった。
己の手をとってほしいと願わずにはいられない。
だが、ま白いその手が触れたのは取ったのは黒髪黒服のボリビアの王子。
ブルーグレイの宵闇の瞳が、オブシディアンの心を写しこむ。
この娘こそ、探していた奴隷の娘ラズだった!
ラズは王子を立ち上がらせて、引き寄せる。ベールに炊かれた香の香りが、オブシディアンを官能に誘う。
「踊りましょう?祭りの夜のように、、」
綺麗な指先がオブシディアンの胸に触れる。
二人は舞台に躍りでた。貴族の娘たちも華やかなドレスをひらめかせて、お目当ての東の兵や騎士を誘い出す。ダンスを踊ったことのないものも、優しい手につい誘い出されてしまう。
それは色仕掛けの饗宴だった。
リズムは先程の激しさからゆったりとしたしたものに変わっている。
自然と肩と胸が寄り添うような。
ベールの娘の手がボルビアの王子の胸を腰をおずおずと触れ、ためらいがちに滑り降りる。
まるで初めて愛を交わそうとする恥じらう娘のようだ、とオブシディアンは思う。
そのたおやかな手が腰に落ちたとき、シャンと金属の擦れる音をさせながら、オブシディアンの腕の中からベールの娘は後ろ飛びに逃れた。
その両の手には鈍く輝るボルビアの剣が握られていた。
会場に一瞬の静寂。
そして、何が起こったか理解されると、その場は、ボルビア側もラブラド側も騒然となった。
「ラズだな、やるな」
オブシディアンは感心していた。
ここまで自分に油断させ、さらに剣を突きつけるところまでできた相手はいなかった。
決起集会で見せた度胸があれば、さもありなんとも思う。流石、自分が惚れた娘であると妙に冷静に相手を賞賛する気持ちまで起こる。
テーゼが動き出そうとしているのを手で押さえた。
「兵を引かせよ!ここでお前を殺す前に!」
ラズは言う。
「あなたにその剣が使えるのか?」
とオブシディアン。
ラズワードはかっとして降り下ろそうとするが、間合いを詰められ手首を強い力で締め上げられた。
ラズは苦痛に顔を歪ませ、あっという間に中原最強の武器を落としてしまう。
歴戦を潜り抜けてきた男と、王宮でぬくぬくと守られてきた男では、武器を持つとはいえ、その勝負は赤子の手を捻るようなものだった。
そのまま、ラズワードは両手を後手に捕まえられる。
悲鳴が騎士姿のセレスからあがる。失敗した!
「お兄さま!」
「ラズワードさま!」
助けに入ろうと体当たりしようとした決死のジュードが、東の兵に押さえつけられた。
オブシディアンは目を細め、自分の体の下で腕を絞られて顔を歪ませる肌の淡く透けるベールの娘にいう。
「美しい刺客殿。そなたはラズを名乗るセレス姫なのか?それとも兄王子のラズワードか?もしくはラズワードは姫で双子は娘二人なのか?返事はなしか?
いずれにしろ父王に捧げるのはもったいない!面白い趣向で充分楽しませてもらった!宴会は終わりだ!」
晩餐会は終了する。
ラズワードはオブシディアンに捉えられた。ボリビアの憎き侵略者を殺害する計画は失敗したのだった。
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