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第1部 第1話 ボリビア王国とラブラド王国の二人の王子
9、ジュード※
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名前が呼ばれている。
意識は幕がかかっているかのようにおぼろであった。
このまま底の知れないまどろみの中に沈んでいたかった。
「、、ラズワードさま、、ラズ、ラズッ!」
それを許さない切羽詰まった気配。体が揺すられ意識が浮上しようとしていた。
目覚めることを拒絶する重い瞼を引き上げると、彼のお守りのジュードが見たこともないほど悲壮で必死な顔をして、ようやく開いた視界に飛び込んできた。
(だいじょうぶ)
声をだそうにも出たのは掠れた空気のみ。だが意識が戻ったことに、目にみえてラズワードのお守りは安堵した。
体を起こそうとすると、酷く身体中が痛んだ。
頭がまだ朦朧としていた。
ジュードがあまりに辛そうな表情なので、自分の身に酷いとが起こったのだわかる。
随分昔のような、先程のことを思い出す。
途中から気を失ってしまったようだった。
既にボリビアの男は部屋にはいなかった。
だが、部屋中に、己の体に、彼の匂いがなすりつけられてた。
「だ、、大丈夫、、」
何度か唾をのみこんで、ようやく声がでた。のどはからからで大きな声を出した名残の喉の奥が痛んだ。
自分のどこが大丈夫かもわかっていなかったが、いつも一緒にいてくれる兄のようなジュードを安心させなければと思う。
ジュードの手が頬をなぜ、髪に触れる。ラズワードの普段はさらさらな髪は、汗と涙と男の吐き出した物で固まり、汚れていた。
まなじりから涙の筋が残っている。
下唇には自分で噛み締めたのか、赤い傷跡。
「体を動かせますか?風呂を準備させました。体を清めます」
ラズワードは一糸纏わぬ姿で乱れたベッドに体を投げ出していた。
その手首には捻られたアザ。
身体中に吸われた赤いあとが散らばる。
ジュードがラズの体から目を背ける。
それでラズワードは自分が思うより酷い姿なのだとわかった。
体が思うように動かせず、立ち上がれない。ジュードが脇から腕を差し入れ、しっかりと体を支えた。
「、、、わたしも一緒にはいります」
ジュードも服を脱ぎ、抱きかかえるようにしてラズワードと共に湯に浸かる。
ジュードの手が、全身を擦る。優しく洗う。
髪を、顔を、首を、腕を、腹を。
湯船の外から頭を洗うことはあっても、中に入って肌を合わせて、二人でこんな風にお風呂に入るのは初めてのことだった。
脚の間も酷く痛んだ。
オブシディアンとの出来事を鮮明に思い出していく。
自分の辛さよりも、声をあげないでジュードが泣いているのが辛かった。
「ジュード、本当に大丈夫だから」
ラズワードの背中にジュードの顔が唇が熱く押し付けられた。
優しく洗う手は、さらに下まで降りていく。脚の間も。その奥も。
ラズワードの体にたまったオブシディアンのものを、ジュードは掻き出す。
探られる感覚はボリビアの男の痛みを伴った忌まわしい快楽の記憶を呼び覚ます。
最後の方では気持ちよさに我をわすれた。
「痛い、お願いやめて、、」
深く差し込まれた指を逃れて、湯のなかで体をよじって、ジュードと向き合う。
ジュードは声もなく泣いていた。
「わたしのあなたをあんなやつに奪われるぐらいなら、こんなことになるなら、、」
「ジュード、泣かないで。わたしが辛くなる。こんなこと平気だ。イヌに噛まれたようなものだから。
わたしの体で、わたしの大事な人たちを守れるなら、それでわたしはうれしいのだから」
歪むジュードの顔を手首にアザが残る手で挟み込み、キスをする。
慰めのキス。
だが、唇が離れる前にジュードはラズワードの頭を押さえ込んで、さらに深く唇を押し付けた。
「あなたのことを愛しているのです。もう何年も前から、、」
うわごとのように繰り返しながら、堰を斬ったようにキスをする。
ラズワードは押し返そうとするが思い止まった。ボリビアに支配されたのが明白な今、二人はもう以前のような関係には戻れない。
ジュードはこうして二人でいることができないのを知った上で、ラズワードを求めている。
ここにいることさえ、彼は何かボリビアと取引きをしたのかも知れなかった。
ボリビアの侵略者に体を弄ばれるより、ジュードに抱かれるほうが良いのではないかと思う。
ジュードが好きな人はラズワードだった。彼の目を覗きこんだときに鮮やかに写っていたのは、いつも己の顔だった。
どうして気がつかなかったのだろう。
そして、こんなことでもなかったら一生、ジュードは告白することもなく、秘めた王子への感情を暴露することもなかったかもしれなかった。
体は酷く痛んでいたが、ラズワードは拒めなかった。
ジュードの腕が背中に、腰に降りて強く引き寄せた。ラズワードはジュードのそれが、固くたぎっていることを腹にあたる感覚でわかってしまう。
「いいよ。わたしを愛して」
ラズワードは大きくなったジュードのそれを腰を浮かし指で導いていく。
すでにオブシディアンを激しく受け入れたそこは軟らかくジュードのそれを飲み込んだ。
嗚咽を漏らしながらジュードはラズワードを抱いたのだった。
事を終えて二人はベッドに横になっていた。ジュードは腕を回してラズワードの肩を抱く。
窓の外は白々と空ける気配があった。
「ジュード、この国はもうボリビアとザクセン宰相のものだ。約束して。わたしを愛するように、妹を愛して。妹はわたしの半身。わたし自身でもあるんだ。妹をボリビアのヤツにも他国のヤツにもやらず、結婚して、王位相続権を得て、ジュードは新しいラブラドの王になってほしい。
そうすれば、ボリビアが何と云おうと、ラブラドはラブラドのままでいられるような気がする」
ジュードは傷ついた顔をする。
「ラズはこんなときでもラブラドの王子なのですね。
あなたが泣いてわたしにここからさらって逃げて一緒に生きてほしいというならば、この身に100の矢を受けたとしても、黒い死体の山を累々と築いてでも、どんな犠牲も省みず一切合切を捨てて、この体ひとつであなたと一緒に逃げる覚悟があるのに」
そうできたら幸せになれるだろうか?とラズワードは思う。
自分を想うジュードと二人、すべてのしがらみから逃れて新たな人生を歩めたらどれだけいいのだろうと思う。
鮮やかに脳裏に浮かんだ、ここでない笑顔のジュードと過ごす光景を、浮かんだのと同時に葬りさられなければならないのが悲しかった。
それはジュードが想い描いた光景だった。
叶えられない未来が辛かった。
ラズワードの目から涙が止めどなく溢れる。
「ごめん、ジュード。わたしはわたしの国が滅んだとしても、王子としての最後の責務を果たさずにはいられない。わたしが生き恥をさらすことで、セレスやあなたが生きて、ラブラドが存続できるのなら、喜んでそうする。
わたしはどんな形であったとしても国のためにこの身を尽くす以外の生き方を知らない」
ジュードは自分の手は、どんなにラズを愛しても捕まえられないことを知った。
愛しても、慈しんでも、奪っても手に入らない儚く美しい人だった。
そして、ジュードは知ってしまった。
唇を重ねても、その体の奥深くで繋がっても、自分の体は熱く欲望に燃え上がるが、彼の愛するラズは、愛の行為に再び固く大きくさせはしても、いつかのあの泣いて帰ってきた祭りの夜に見せた妖しく美しい赤い花をその体に咲かせることはなかったのだった。
彼を受け入れたのは、ラズが最後に与えた優しさだったのだ。
意識は幕がかかっているかのようにおぼろであった。
このまま底の知れないまどろみの中に沈んでいたかった。
「、、ラズワードさま、、ラズ、ラズッ!」
それを許さない切羽詰まった気配。体が揺すられ意識が浮上しようとしていた。
目覚めることを拒絶する重い瞼を引き上げると、彼のお守りのジュードが見たこともないほど悲壮で必死な顔をして、ようやく開いた視界に飛び込んできた。
(だいじょうぶ)
声をだそうにも出たのは掠れた空気のみ。だが意識が戻ったことに、目にみえてラズワードのお守りは安堵した。
体を起こそうとすると、酷く身体中が痛んだ。
頭がまだ朦朧としていた。
ジュードがあまりに辛そうな表情なので、自分の身に酷いとが起こったのだわかる。
随分昔のような、先程のことを思い出す。
途中から気を失ってしまったようだった。
既にボリビアの男は部屋にはいなかった。
だが、部屋中に、己の体に、彼の匂いがなすりつけられてた。
「だ、、大丈夫、、」
何度か唾をのみこんで、ようやく声がでた。のどはからからで大きな声を出した名残の喉の奥が痛んだ。
自分のどこが大丈夫かもわかっていなかったが、いつも一緒にいてくれる兄のようなジュードを安心させなければと思う。
ジュードの手が頬をなぜ、髪に触れる。ラズワードの普段はさらさらな髪は、汗と涙と男の吐き出した物で固まり、汚れていた。
まなじりから涙の筋が残っている。
下唇には自分で噛み締めたのか、赤い傷跡。
「体を動かせますか?風呂を準備させました。体を清めます」
ラズワードは一糸纏わぬ姿で乱れたベッドに体を投げ出していた。
その手首には捻られたアザ。
身体中に吸われた赤いあとが散らばる。
ジュードがラズの体から目を背ける。
それでラズワードは自分が思うより酷い姿なのだとわかった。
体が思うように動かせず、立ち上がれない。ジュードが脇から腕を差し入れ、しっかりと体を支えた。
「、、、わたしも一緒にはいります」
ジュードも服を脱ぎ、抱きかかえるようにしてラズワードと共に湯に浸かる。
ジュードの手が、全身を擦る。優しく洗う。
髪を、顔を、首を、腕を、腹を。
湯船の外から頭を洗うことはあっても、中に入って肌を合わせて、二人でこんな風にお風呂に入るのは初めてのことだった。
脚の間も酷く痛んだ。
オブシディアンとの出来事を鮮明に思い出していく。
自分の辛さよりも、声をあげないでジュードが泣いているのが辛かった。
「ジュード、本当に大丈夫だから」
ラズワードの背中にジュードの顔が唇が熱く押し付けられた。
優しく洗う手は、さらに下まで降りていく。脚の間も。その奥も。
ラズワードの体にたまったオブシディアンのものを、ジュードは掻き出す。
探られる感覚はボリビアの男の痛みを伴った忌まわしい快楽の記憶を呼び覚ます。
最後の方では気持ちよさに我をわすれた。
「痛い、お願いやめて、、」
深く差し込まれた指を逃れて、湯のなかで体をよじって、ジュードと向き合う。
ジュードは声もなく泣いていた。
「わたしのあなたをあんなやつに奪われるぐらいなら、こんなことになるなら、、」
「ジュード、泣かないで。わたしが辛くなる。こんなこと平気だ。イヌに噛まれたようなものだから。
わたしの体で、わたしの大事な人たちを守れるなら、それでわたしはうれしいのだから」
歪むジュードの顔を手首にアザが残る手で挟み込み、キスをする。
慰めのキス。
だが、唇が離れる前にジュードはラズワードの頭を押さえ込んで、さらに深く唇を押し付けた。
「あなたのことを愛しているのです。もう何年も前から、、」
うわごとのように繰り返しながら、堰を斬ったようにキスをする。
ラズワードは押し返そうとするが思い止まった。ボリビアに支配されたのが明白な今、二人はもう以前のような関係には戻れない。
ジュードはこうして二人でいることができないのを知った上で、ラズワードを求めている。
ここにいることさえ、彼は何かボリビアと取引きをしたのかも知れなかった。
ボリビアの侵略者に体を弄ばれるより、ジュードに抱かれるほうが良いのではないかと思う。
ジュードが好きな人はラズワードだった。彼の目を覗きこんだときに鮮やかに写っていたのは、いつも己の顔だった。
どうして気がつかなかったのだろう。
そして、こんなことでもなかったら一生、ジュードは告白することもなく、秘めた王子への感情を暴露することもなかったかもしれなかった。
体は酷く痛んでいたが、ラズワードは拒めなかった。
ジュードの腕が背中に、腰に降りて強く引き寄せた。ラズワードはジュードのそれが、固くたぎっていることを腹にあたる感覚でわかってしまう。
「いいよ。わたしを愛して」
ラズワードは大きくなったジュードのそれを腰を浮かし指で導いていく。
すでにオブシディアンを激しく受け入れたそこは軟らかくジュードのそれを飲み込んだ。
嗚咽を漏らしながらジュードはラズワードを抱いたのだった。
事を終えて二人はベッドに横になっていた。ジュードは腕を回してラズワードの肩を抱く。
窓の外は白々と空ける気配があった。
「ジュード、この国はもうボリビアとザクセン宰相のものだ。約束して。わたしを愛するように、妹を愛して。妹はわたしの半身。わたし自身でもあるんだ。妹をボリビアのヤツにも他国のヤツにもやらず、結婚して、王位相続権を得て、ジュードは新しいラブラドの王になってほしい。
そうすれば、ボリビアが何と云おうと、ラブラドはラブラドのままでいられるような気がする」
ジュードは傷ついた顔をする。
「ラズはこんなときでもラブラドの王子なのですね。
あなたが泣いてわたしにここからさらって逃げて一緒に生きてほしいというならば、この身に100の矢を受けたとしても、黒い死体の山を累々と築いてでも、どんな犠牲も省みず一切合切を捨てて、この体ひとつであなたと一緒に逃げる覚悟があるのに」
そうできたら幸せになれるだろうか?とラズワードは思う。
自分を想うジュードと二人、すべてのしがらみから逃れて新たな人生を歩めたらどれだけいいのだろうと思う。
鮮やかに脳裏に浮かんだ、ここでない笑顔のジュードと過ごす光景を、浮かんだのと同時に葬りさられなければならないのが悲しかった。
それはジュードが想い描いた光景だった。
叶えられない未来が辛かった。
ラズワードの目から涙が止めどなく溢れる。
「ごめん、ジュード。わたしはわたしの国が滅んだとしても、王子としての最後の責務を果たさずにはいられない。わたしが生き恥をさらすことで、セレスやあなたが生きて、ラブラドが存続できるのなら、喜んでそうする。
わたしはどんな形であったとしても国のためにこの身を尽くす以外の生き方を知らない」
ジュードは自分の手は、どんなにラズを愛しても捕まえられないことを知った。
愛しても、慈しんでも、奪っても手に入らない儚く美しい人だった。
そして、ジュードは知ってしまった。
唇を重ねても、その体の奥深くで繋がっても、自分の体は熱く欲望に燃え上がるが、彼の愛するラズは、愛の行為に再び固く大きくさせはしても、いつかのあの泣いて帰ってきた祭りの夜に見せた妖しく美しい赤い花をその体に咲かせることはなかったのだった。
彼を受け入れたのは、ラズが最後に与えた優しさだったのだ。
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