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第1部 第1話 ボリビア王国とラブラド王国の二人の王子
6、王宮占拠
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ラズワードとジュードが決起集会に潜入した夜からそう遠くない日のことである。
ラズの父である王はザクセン宰相、ハルマン騎士隊長、警察隊の隊長と話をしていた。ただならぬ緊迫した空気が王宮中に流れていた。
父は首を振り、ザクセンは声を荒らげる。
どちらも己の考えをゆずるつもりがないことは傍目にも明らかである。
王宮はここ数日、市中に広がる革命の足音にざわついている。
セレスも落ち着かないようで、人心つけれるラズの部屋に来ていた。
「お父様とザクセンはあれは何を言い争っているの?」
心配げにセレスがジュードに訊く。
「王さまは奴隷の制度改革を。ザクセン宰相は奴隷の暴動を押さえるために、友好国の援助を訴えています」
「友好国って、、」
「ナミビアとか、アラゴナとかその辺り」
セレスはそれを聞き、一層眉を寄せた。
「すべて、わたしが結婚をお断りしたところだわ!
こんなことなら、アズワールとでも結婚でもしておいた方が良かったかしら」
ラズワードはイライラする妹の手を優しく握った。
「セレスには幸せになってほしいから、そんな自暴自棄なことは言わないで!
結婚するより、落ち着くまでのしばらくの間は別の城か他国に避難でもしている方がよいかも」
セレスは激しい気性そのままに、ラズワードの手を振り払った。
「ばか言わないで。お兄さま。わたしだけが安穏としていられる訳がないでしょう?!わたしはここに残るわ!」
セレスは熱い目でジュードを見据える。
セレスが残る最大の理由は、宰相の息子、ジュードであるのは双子にはまるわかりである。
言葉にしないことまで通じてしまう。
セレスが部屋を出て、二人きりになると、ラズワードはジュードに向かい合った。
「ジュード、セレスと結婚してほしい」
ラズワードがセレスに幸せになってほしいという言葉には嘘はない。
「わたしと結婚するより、セレスさまはもっとよい使い道があります」
ジュードはあくまで冷静である。
「そんな、物のような言い方は嫌だ。
王族だって人を好きになる感情がある。世間では奴隷解放というが、王族にも自由がない。
結局は、どこの誰に生まれても自由などないのではと思わない?」
ラズワードはジュードに探るような目を向ける。
ジュードも自分の役割に縛られて叶えられないものを抱えているのではないだろうかと思う。
「あなたはセレスが好きなんでしょう?」
それを聞くやいなやジュードは固まった。
「わたしがいつ、セレスさまが好きだと言いましたか?」
彼に似合わない激しい物言いがかえってくる。ラズは慌てた。
「え?てっきり、あなたのセレスを見る目が優しいので、セレスのことが好きなんだと思っていた、、、」
ジュードが好きなのは、王子としての形容詞としてはいかがなものかとは思うが、勝ち気か感情が全面に押し出されているセレスよりも、花のようなたおやかな心優しいラズワードの方である。
心を込めてお仕えしているが、その気持ちは全く伝わっていない。
もっとも伝わっていたとしても、どうすることもないのだが。
「わたしがお慕いしているのはセレスさまではございません」
「では誰を??」
「、、、わからないのですか?」
「わからない」
ラズワードはジュードの瞳を覗きこむ。
覗きこめば答えがそこにあるように。
セレスではなかったら、ラズワードにはこれと思いあたる人はいなかった。
最近はしかめっ面が標準顔になってきたこの頼りになる兄のような友人の顔が緩むわずかな時間は、自分とセレスを相手にしている時のみだからだ。
10の時からもう8年。
ラズワードは誰よりも良くジュードのことを知っていると思っていた。
だけど、ジュードの心に秘めた想い人が誰なのかわからない。
ラズワードが思うよりもジュードは複雑な想いを抱えているのかもしれないとよぎる。
その時、ラズワードの部屋の戸がいつもと違うリズムで叩かれた。
トントトントン。
二人は弾けるようにして、立ち上がった。
最近は肌身離さず持っていた剣を瞬時に鞘ごとつかむ。
そのリズムは緊急事態が起こったことを知らせる時の叩き方。
二人が構えたとたん、ドアが盛大に蹴り破られぶっ飛んだ。
開いた入り口には扉を守る騎士が、屈強な男に床に押さえつけられていた。
黒い甲冑に身を包む、異国の戦士達がラズワードの部屋に雪崩れ込んだ!
「ラズワード殿下ですか」
土足で踏入ながら異国の戦士は、武器を手にするラズワードに言う。
臭いが違う。血と汗と、蒸せ返るような男たちの臭いが彼らと共に雪崩れ込む。
向けられる刃など気にも止めていなかった。
「町で暴動が起こりました。王宮でも一部騒ぎが起こっています。剣を納めてください。我々が守りますので速やかに避難ください」
「あなたがたはなぜにここにいる?」
ジュードは体で王子を庇いながら凍りつくような低い声で聞く。
黒い甲冑のリーダー格の男はジュードに一瞥するが、構わずラズワードの前に膝をつく。
「ザクセン宰相の要請を受けて助太刀に参りました。
私はボリビアの騎士団長のキムです。
あなた方には助けを求めるところは我々以外にはございません。安全なところにお連れいたします」
一介の騎士団長には有無を言わさない迫力があった。彼は腰の剣の柄に手をかけているが抜いてはいない。人を殺すことを厭わない眼力があった。
「それは命令か?」
眉を寄せてジュードは言う。その剣先はキムをまっすぐ狙っている。
「お願いです。素直に来てください。暴れると拘束しないといけなくなります」
キムの丁寧ながらも最後通告をだす。
「ジュード、彼らに従うから剣を納めて」
ラズワードはジュードの肩に安心させるように手を置き、その背中から歩みでる。
騎士団長のキムやボルビアの男たちは、花の都の、まだ若く蒼白ながらも見目よい王子の姿に息を飲んだのであった。
ギリッとジュードは奥歯を噛み締める。
父のザクセンは他国に援助をと訴えていた。
まさか、侵略をすすめている当のボリビアを、王宮に手引きするなんて思いもしなかったのだった。
裏切りはジュードの父、王の従兄によって王宮の最奥からなされた。
その事実に王宮中の全ての者が驚愕しその結果に怖れおののいたのだった。
王族と貴族たちは広間に集められる。
王と王妃とセレス、ラズワード。
それに彼らと離れようとしないサラとジュード。
王宮は黒い甲冑の軍勢に占拠され、頼りの騎士団も警察隊も踏み込めない。
ザクセン宰相がボリビア男の隣にいた。
ボリビアの男におもねるその様子を見て、王はわなわなと憤怒し、その顔は怒りに真っ赤である。
「ザクセン!お前がボリビアの兵を手引きしたのか!なんてことを」
慇懃に、囚われの王にザクセンは頭を下げる。
「王さま、町でも奴隷たちの暴動が始まりました。
王宮内、騎士団、警察隊にまで奴隷はおります。
彼らはいつ歯向かうかわかりません!
何度も申し上げたように、力のあるボリビアに入っていただくのがラブラドの生き残る道なのです」
ボリビアの男は意気揚々にいう。
「そういうことだ。あなたの国の内乱が落ち着くまで、高貴な方々は我らが守らせて頂く。
ラブラドの皆さま方々よ!ご安心ください」
「お前は誰だ」
王は聞く。その声は怒りを通り越し、その顔は赤から青くなっている。地響きのような震える低い声を唸りだす。
「わたしはボリビアの第一王子オブシディアン」
ボリビアの男はさらりと名乗った。
呆然と成り行きを見守っていたラズワードは、その声を聞きようやく気がついた。
いつもと違う雰囲気だったので全くわからなかった。
黒の帷子の男は祭りで何度も会っていたあの男、シディではないか?
ジュードも気がついた。
さりげなくボルビアの男からラズワードを自分の体の後ろに隠す。
サラも健気に同様にセレスを隠した。
「こんな時にではあるが、あなたの姫は中原に名をとどろかす美姫という。
わたしの父が会いたいと申している。
落ち着いたらボリビアに来ていただけないだろうか?」
セレスは息をのみ身をこわばらせる。
姫を差し出す代わりに、王族の安全や王権を保証するというこれは取引の提案だった。
「断るといったら?」
唸るように王はいう。
ボリビアの王に娘をやるつもりはない。
噂では、ボリビアの王は征服した国の美しい姫や后を側室にしているという。
「残念ながら、断るという選択肢はない。
もしくはそれ相当の何かを差しだすというならば、考えなくもないが」
その時、王の側仕えの男が物陰から飛び出した。その手には抜き身の剣が両手で握られ、まっすぐボルビアの第一王子を狙って剣を突き立てる。
だが、その刃は狙った相手に届かせることはできなかった。
すぐさま、オブシディアンの横にたつ護衛のテーゼが剣を抜き、冷静に大きく振りかぶって叩き下ろした。
側仕えのラブラドの剣はゴキンと鈍い音を立てて、粘土細工の剣のように真っ二つに折れた。
ああ、、
見るものから諦めのタメ息が漏れる。
ラブラドの鉄剣を真っ二つに破壊したボリビアの剣は鈍色に輝いていた。
中原中の国家の武器と比べて素材の堅牢度が格段に優れた最強の鋼である。
しなやかさと固さを同時に併せ持っていた。
この強い素材の鉄剣を門外不出の技法で作り出し、ボリビアは他を圧倒する力を得た。
戦えば他を圧倒し百戦錬磨というのも当然だった。
鋼鉄の製錬技術の秘密がボルビアの中原一の強さを底支えしている。
「我が王よ、ボリビアに守ってもらう選択肢しか我々にはございません!
内部の土台が崩壊しかけている今、これ以外に我々が生き延びることはできないのです」
ザクセン宰相は王にいう。
息子のジュードから向けられる怒りに燃える目を、強い目で見返したのだった。
既に政治の実権はザクセンが時間をかけて握っていた。
もはや、国王にできることは何もなかった。
ラズの父である王はザクセン宰相、ハルマン騎士隊長、警察隊の隊長と話をしていた。ただならぬ緊迫した空気が王宮中に流れていた。
父は首を振り、ザクセンは声を荒らげる。
どちらも己の考えをゆずるつもりがないことは傍目にも明らかである。
王宮はここ数日、市中に広がる革命の足音にざわついている。
セレスも落ち着かないようで、人心つけれるラズの部屋に来ていた。
「お父様とザクセンはあれは何を言い争っているの?」
心配げにセレスがジュードに訊く。
「王さまは奴隷の制度改革を。ザクセン宰相は奴隷の暴動を押さえるために、友好国の援助を訴えています」
「友好国って、、」
「ナミビアとか、アラゴナとかその辺り」
セレスはそれを聞き、一層眉を寄せた。
「すべて、わたしが結婚をお断りしたところだわ!
こんなことなら、アズワールとでも結婚でもしておいた方が良かったかしら」
ラズワードはイライラする妹の手を優しく握った。
「セレスには幸せになってほしいから、そんな自暴自棄なことは言わないで!
結婚するより、落ち着くまでのしばらくの間は別の城か他国に避難でもしている方がよいかも」
セレスは激しい気性そのままに、ラズワードの手を振り払った。
「ばか言わないで。お兄さま。わたしだけが安穏としていられる訳がないでしょう?!わたしはここに残るわ!」
セレスは熱い目でジュードを見据える。
セレスが残る最大の理由は、宰相の息子、ジュードであるのは双子にはまるわかりである。
言葉にしないことまで通じてしまう。
セレスが部屋を出て、二人きりになると、ラズワードはジュードに向かい合った。
「ジュード、セレスと結婚してほしい」
ラズワードがセレスに幸せになってほしいという言葉には嘘はない。
「わたしと結婚するより、セレスさまはもっとよい使い道があります」
ジュードはあくまで冷静である。
「そんな、物のような言い方は嫌だ。
王族だって人を好きになる感情がある。世間では奴隷解放というが、王族にも自由がない。
結局は、どこの誰に生まれても自由などないのではと思わない?」
ラズワードはジュードに探るような目を向ける。
ジュードも自分の役割に縛られて叶えられないものを抱えているのではないだろうかと思う。
「あなたはセレスが好きなんでしょう?」
それを聞くやいなやジュードは固まった。
「わたしがいつ、セレスさまが好きだと言いましたか?」
彼に似合わない激しい物言いがかえってくる。ラズは慌てた。
「え?てっきり、あなたのセレスを見る目が優しいので、セレスのことが好きなんだと思っていた、、、」
ジュードが好きなのは、王子としての形容詞としてはいかがなものかとは思うが、勝ち気か感情が全面に押し出されているセレスよりも、花のようなたおやかな心優しいラズワードの方である。
心を込めてお仕えしているが、その気持ちは全く伝わっていない。
もっとも伝わっていたとしても、どうすることもないのだが。
「わたしがお慕いしているのはセレスさまではございません」
「では誰を??」
「、、、わからないのですか?」
「わからない」
ラズワードはジュードの瞳を覗きこむ。
覗きこめば答えがそこにあるように。
セレスではなかったら、ラズワードにはこれと思いあたる人はいなかった。
最近はしかめっ面が標準顔になってきたこの頼りになる兄のような友人の顔が緩むわずかな時間は、自分とセレスを相手にしている時のみだからだ。
10の時からもう8年。
ラズワードは誰よりも良くジュードのことを知っていると思っていた。
だけど、ジュードの心に秘めた想い人が誰なのかわからない。
ラズワードが思うよりもジュードは複雑な想いを抱えているのかもしれないとよぎる。
その時、ラズワードの部屋の戸がいつもと違うリズムで叩かれた。
トントトントン。
二人は弾けるようにして、立ち上がった。
最近は肌身離さず持っていた剣を瞬時に鞘ごとつかむ。
そのリズムは緊急事態が起こったことを知らせる時の叩き方。
二人が構えたとたん、ドアが盛大に蹴り破られぶっ飛んだ。
開いた入り口には扉を守る騎士が、屈強な男に床に押さえつけられていた。
黒い甲冑に身を包む、異国の戦士達がラズワードの部屋に雪崩れ込んだ!
「ラズワード殿下ですか」
土足で踏入ながら異国の戦士は、武器を手にするラズワードに言う。
臭いが違う。血と汗と、蒸せ返るような男たちの臭いが彼らと共に雪崩れ込む。
向けられる刃など気にも止めていなかった。
「町で暴動が起こりました。王宮でも一部騒ぎが起こっています。剣を納めてください。我々が守りますので速やかに避難ください」
「あなたがたはなぜにここにいる?」
ジュードは体で王子を庇いながら凍りつくような低い声で聞く。
黒い甲冑のリーダー格の男はジュードに一瞥するが、構わずラズワードの前に膝をつく。
「ザクセン宰相の要請を受けて助太刀に参りました。
私はボリビアの騎士団長のキムです。
あなた方には助けを求めるところは我々以外にはございません。安全なところにお連れいたします」
一介の騎士団長には有無を言わさない迫力があった。彼は腰の剣の柄に手をかけているが抜いてはいない。人を殺すことを厭わない眼力があった。
「それは命令か?」
眉を寄せてジュードは言う。その剣先はキムをまっすぐ狙っている。
「お願いです。素直に来てください。暴れると拘束しないといけなくなります」
キムの丁寧ながらも最後通告をだす。
「ジュード、彼らに従うから剣を納めて」
ラズワードはジュードの肩に安心させるように手を置き、その背中から歩みでる。
騎士団長のキムやボルビアの男たちは、花の都の、まだ若く蒼白ながらも見目よい王子の姿に息を飲んだのであった。
ギリッとジュードは奥歯を噛み締める。
父のザクセンは他国に援助をと訴えていた。
まさか、侵略をすすめている当のボリビアを、王宮に手引きするなんて思いもしなかったのだった。
裏切りはジュードの父、王の従兄によって王宮の最奥からなされた。
その事実に王宮中の全ての者が驚愕しその結果に怖れおののいたのだった。
王族と貴族たちは広間に集められる。
王と王妃とセレス、ラズワード。
それに彼らと離れようとしないサラとジュード。
王宮は黒い甲冑の軍勢に占拠され、頼りの騎士団も警察隊も踏み込めない。
ザクセン宰相がボリビア男の隣にいた。
ボリビアの男におもねるその様子を見て、王はわなわなと憤怒し、その顔は怒りに真っ赤である。
「ザクセン!お前がボリビアの兵を手引きしたのか!なんてことを」
慇懃に、囚われの王にザクセンは頭を下げる。
「王さま、町でも奴隷たちの暴動が始まりました。
王宮内、騎士団、警察隊にまで奴隷はおります。
彼らはいつ歯向かうかわかりません!
何度も申し上げたように、力のあるボリビアに入っていただくのがラブラドの生き残る道なのです」
ボリビアの男は意気揚々にいう。
「そういうことだ。あなたの国の内乱が落ち着くまで、高貴な方々は我らが守らせて頂く。
ラブラドの皆さま方々よ!ご安心ください」
「お前は誰だ」
王は聞く。その声は怒りを通り越し、その顔は赤から青くなっている。地響きのような震える低い声を唸りだす。
「わたしはボリビアの第一王子オブシディアン」
ボリビアの男はさらりと名乗った。
呆然と成り行きを見守っていたラズワードは、その声を聞きようやく気がついた。
いつもと違う雰囲気だったので全くわからなかった。
黒の帷子の男は祭りで何度も会っていたあの男、シディではないか?
ジュードも気がついた。
さりげなくボルビアの男からラズワードを自分の体の後ろに隠す。
サラも健気に同様にセレスを隠した。
「こんな時にではあるが、あなたの姫は中原に名をとどろかす美姫という。
わたしの父が会いたいと申している。
落ち着いたらボリビアに来ていただけないだろうか?」
セレスは息をのみ身をこわばらせる。
姫を差し出す代わりに、王族の安全や王権を保証するというこれは取引の提案だった。
「断るといったら?」
唸るように王はいう。
ボリビアの王に娘をやるつもりはない。
噂では、ボリビアの王は征服した国の美しい姫や后を側室にしているという。
「残念ながら、断るという選択肢はない。
もしくはそれ相当の何かを差しだすというならば、考えなくもないが」
その時、王の側仕えの男が物陰から飛び出した。その手には抜き身の剣が両手で握られ、まっすぐボルビアの第一王子を狙って剣を突き立てる。
だが、その刃は狙った相手に届かせることはできなかった。
すぐさま、オブシディアンの横にたつ護衛のテーゼが剣を抜き、冷静に大きく振りかぶって叩き下ろした。
側仕えのラブラドの剣はゴキンと鈍い音を立てて、粘土細工の剣のように真っ二つに折れた。
ああ、、
見るものから諦めのタメ息が漏れる。
ラブラドの鉄剣を真っ二つに破壊したボリビアの剣は鈍色に輝いていた。
中原中の国家の武器と比べて素材の堅牢度が格段に優れた最強の鋼である。
しなやかさと固さを同時に併せ持っていた。
この強い素材の鉄剣を門外不出の技法で作り出し、ボリビアは他を圧倒する力を得た。
戦えば他を圧倒し百戦錬磨というのも当然だった。
鋼鉄の製錬技術の秘密がボルビアの中原一の強さを底支えしている。
「我が王よ、ボリビアに守ってもらう選択肢しか我々にはございません!
内部の土台が崩壊しかけている今、これ以外に我々が生き延びることはできないのです」
ザクセン宰相は王にいう。
息子のジュードから向けられる怒りに燃える目を、強い目で見返したのだった。
既に政治の実権はザクセンが時間をかけて握っていた。
もはや、国王にできることは何もなかった。
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