樹海の宝石【1】~古き血族の少年の物語

藤雪花(ふじゆきはな)

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第2話 アゲート領の白檀

13.解放と解呪3

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白檀の濃くむせかえるような白煙が広間に天井に、床に、漂いながら満ちていく。
巫女の姿を、この世の理りを、覆い隠していく。

視界が100%真白い世界に占領させる前に、バードは風の道を作った。
大きく庭に開かれた外へ、煙を逃がし、人を逃がすための道だ。
気がついた者から外に転がりでた。

バードはさらに、煙を上昇気流に乗せて夜空に高くあげる。

あげる端から白檀の大木はとめどなく白煙を吐き出していく。

(リリー、大丈夫か!俺はここから離れなれないっっ煙が凄すぎる。
空に上げ続ける!!)

バードの呼びかけにリリアスは答えられない。
赤茶の燃える瞳に捕らえられていた。

煙がリリアスを隠すや否や、ムハンマドは呆然自失している領主や娘やバラーを置いて、御馳走が溢れるテーブルを飛び越えて、駆け出していた。

腰布腰飾りが唯一の身を隠すだけになっている舞姫をぶつかるように抱き締める。

(お前はっ!!)

言葉にならない。
愛しさと怒りと香りとで、ムハンマドはこれ以上経験することは一生ないかもと思うほど混乱していた。

「ムハンマド、、」

吐く息とともに耳元をかすめる。

王子はそのまま煙の中をリリアスを担いで足早に歩く。

広間では相変わらずサンダルウッドの大木が内側からくすぶってはいたが、大きな火がでることはない。

奴隷も貴族も、砂漠の王者に道をあける。

豪奢な自分の一室、やわからなシルクのベットに体術の落とし込み技のように奪った戦利品を投げ入れた。

ムハンマドは激怒していた。

リリアスの身を隠すのは頼りなげな腰布と腰飾りのみ。
頭の上できっちりと黒髪がまとめられているので、たおやかな首も惜しげもなくさらしている。

腕の痣も、昨夜彼がつけた所有印も、美しさを損なうというよりはむしろ、その妖艶さを増す神の演出のようだった。

「わたしを煽ったな」
ようやく声がでた。

少し怯えたような揺らぎが黒曜石の瞳にみえた。

ムハンマドはそれを合図にリリアスに覆い被さる。

「あ、やめ、」

驚いて顔を反らし手をつっぱる舞姫の顎をつかみ唇をむさぼる。
舌を強引にいれ、怯える口内を犯した。

膝を脚の間に割り入らせ、ばたつかせる脚の抵抗を抑えこむ。

片手で腰布を剥ぎ取った。
腰飾りは切れて勢いよくはじけとびベットに床に飛び散った。

ムハンマドは準備のできていないリリアスのつぼみに己の猛る雄を押しあて、察した体が縮こまるのにも構わず押し込んだ。

「や、やめて、ムハンマド!!」

リリアスの顔が痛みに歪み、涙が溢れる。

ムハンマドはその顔を間近に見ながら、緩めることなく奥まで容赦なく押し入れた。
そして収まり具合いを堪能する。
暫しの猶予に、息を止めていたリリアスがふわっと吸ったのに合わせて、ぎりぎりまでひく。

そして快楽の抽挿を開始する。

前戯なしの激しい行為にリリアスはなすすべなく突き上げられ、最奥の扉もこじ開けられ、侵略され、むさぼられ、ムハンマドの形に刻まれていく。

これは愛の行為ではなく、奪い奪われるものの、征服と服従の行為。

リリアスを残してムハンマドは達し、慾望の白濁を体の中に吐き出した。

乱れた己の呼吸を整える間のわずか間の休息の後、リリアスをうつぶせに返し、繋いだ尻を高く上げさせる。

ムハンマドの雄はもう質量を増してきている。

女のそこで名残り惜しげに浅く抜き差しを繰り返しながら、親指をリリアスのもうひとつの後の口に入れる。

何度も愛の行為を重ねながらも、未熟だからと受け入れされるのを自重していた、もうひとつの生殖器にもなれるところ。

ムハンマドは消えぬ欲望に再び大きく固くなった雄を、お互いの愛液でぬめるそれを、押し込もうとする。
入らない。

「力を抜け!」
鋭くいう。

ひるんで少し緩んだそこを指で開き、本能的に逃げようとした細い背中をベットに押し付ける。

「はうっ」

泣き声か、うめき声か、その一緒になった声がリリアスから漏れる。

「、、ごめんなさい、、許して、、」

慈悲を懇願するリリアスにムハンマドは押し入った。
それが答えだった。

「なぜに煽った。皆が見ている前で」

ムハンマドは細かく揺すり、時間をかけてリリアスの内側を自分の形に慣らしていく。

「美しい体を惜しげもなくさらして見せつけて」

「お前はわたしを煽り、他の男全員をも煽ったのだ!
あの場で男たちに犯されていてもおかしくなかった」

「許して、、」

リリアスの内側は意思とは関係なく侵略者を迎え入れようと柔らかくなり始める。

それを察して、今度はムハンマドは探り始める。

ビクンとリリアスは跳ねた。
あえぎ声が漏れる。
ムハンマドは探り当てたリリアスの気持ち良いところを責め始めた。
感じたことのない快感にリリアスはあがらいながらも、腰が揺れる。

「あ、あの娘と楽しげだったから、、」
「あの娘?」
「裸のような服だった、、だから僕も脱いだ」

ムハンマドは不意に悟った。

リリアスは、自分を狂わせる舞姫は自分の横で色目を使っていた女に嫉妬したのだ。

「嫉妬したのか」

「もう許して、、」

ムハンマドはベットに押し付けていたリリアスを起こし、膝の上にかかえた。

自分の体重で奥に入っていくのを察して、リリアスは水面へ息を継ごうとする魚のように伸びあがり、逃れようとした。

ムハンマドは優しく脇と腰に手を回して抜けきらないようにする。

リリアスは泣いていた。
体の痛みではない、心の苦しみの涙だ。

「あなたは、王子だ。
王座も狙っているという。
、、、僕は男か女かもわからない、中途半端な人間。
あなたの愛を望んで良いのか、わからない。
女になればあなたは側においていてくれるかも。
後宮??というところにいれてくれるのかも。妻になって子を産めるかも。
男になれば、僕は妻の一人にもなれず、あなたが別の女性を愛するのを指を咥えて見ているしかないのかも」

リリアスはすすり泣いていた。
「僕は耐えられそうにない」

「ああ、あなたは馬鹿だ」
ムハンマドは背中にキスをした。
キリッと傷む所有印のキスだ。

「わたしはあなたが男か女かどちらでも変わらず愛する。
どちらでもかまわないと何度言えばわかってもらえる?愛しい人」

(あ、、、)

ムハンマドはリリアスの乱れたまとめ髪をほどいた。
顔に黒髪が降り落ち、髪に顔を埋める。

「もう駄目だ。あなたの中の気持ちよさに耐えられそうにない」

ムハンマドは再度、快楽の絶頂に達し、果てた。



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