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第2部 砂漠の王者 第1話 あなたの奴隷
2.親衛隊見習い
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元パリスの隠密のバードは、指示されたトレーニングメニュー、対面しての体術、武器を持っての剣術などを楽々とこなしていた。
隣国パリスの諜報部員として働いていたのは伊達ではない。
運動神経、判断力の素早さは、ムハンマドの親衛隊の選りすぐり5名の中でも群を抜いている。
入隊希望を落とすための数々の試験は、バードには少し汗をかく程度のもののようだった。
問答も、頭の良さをひけらかさないが落とされない程度のさらっとした答えをだす。
もう一人の入隊希望者の小柄な黒髪の少年は、試験前に「駄目だ」と親衛隊長のバラーは決めつけた。
数時間前の問答を思い出す。
「理由などありすぎて、どれがどうとはいえんわ。
あげるならば、
一、体ができてない。
二、女の子である。
三、ムハンマド王子が許さない」
言われても、リリアスは必死で反論する。
ここで試験さえもできなかったら、親衛隊に入ることはできないし、三食寝る場所確保が消えてしまう。
リリアスはお金というものを持っていない。
ムハンマドはこれからバラモンの各地に行くようで、彼の側付きの親衛隊となれば、まだ見ぬ世界をみられるではないか!!
という期待も膨らんでいた。
「バラーさん、体ができていないのは認めます。
でも100%のできている方しか入隊できないのであれば、誰もいれないということではないですか!
それに、女の子は駄目といわれますが、既に親衛隊員にいらっしゃるではないですか!
ちなみに僕は男です。
ムハンマド王子は僕は何をしてもよい、自由だとおっしゃられました」
げんなりとバラーはいう。
「では、志望動機はなんなのだ」
「あの、エディンバラの火事の後の、親衛隊の皆様の活動に感銘をうけたのです。
復興、救急支援活動、、、。
それを平時の軍部の役割りであるとして重きを置くのは、国を思う優れた考えだと思いました。
そういう国を思うムハンマド第六王子に、しばらくついていこうと思いました。これで駄目ですか?」
眼を輝かせながらいうリリアスに、バラーはため息をつく。
「しばらくってなあ、、、あのなあ、お前なら別に、親衛隊なんかに入らなくても、ムハンマドと一緒に旅をしたいなら、ムハンマドに頼めばいいんじゃあないのか?」
リリアスは頑なに親衛隊にこだわった。
「僕は、一から生きることを学んで鍛えて強くなりたいんです!」
「どうする?」
バラーは次第に面倒になって、食事をしながらやけに楽しそうに見ていたムハンマドに振った。
「リリアスはわたしの親衛隊員になりたいんだ。
通常は推薦状が要るんだが、それはいいよ。わたしが保証人になる。
試験ぐらい受けさせてもいいんじゃあないか?」
とムハンマドは言った。
試験さえ受けたらかなりの上底を履かせるつもりに違いないと、バラーは思った。
そこで、ムハンマドはリリアスから片時も離れないパリスの諜報員、バードを見た。
既に顔が割れているので、堂々とリリアスの側にいる。
「リリアスが親衛隊になったら、バードはパリスに帰るのか?」
バードは即答した。
「ルージュさまの命令は、リリーを陰日向に守れ!ということでしたので、俺も親衛隊に入って、リリーを守ろうかと」
ムハンマドは豪快に笑った。
「パリスの諜報員がバラモン国の王子の親衛隊になるなんて面白いではないか!?」
ということで、樹海の少年のリリアスとパリスの元諜報部員バードは、エディンバラからの出立まえに、試験をうけることになったのだ。
バードの試験と同時進行で、リリアスの試験も行われていた。
元々田舎の樹海育ちで、豹と遊んで育った彼は、運動神経が取り分け悪いわけではない。
ただ筋肉トレーニングをしたことがなく、このところの生死をさ迷っていたことで、体力がないのだ。
体術は一瞬で組伏せられ、武器は一撃ではたきおとされる。
一方バードは群を抜く好成績である。
二人で点を足して割って合格点だな!
と主張するムハンマドの王族権力乱用の圧力により、リリアスとバードは親衛隊員見習いとなることができたのだった。
隣国パリスの諜報部員として働いていたのは伊達ではない。
運動神経、判断力の素早さは、ムハンマドの親衛隊の選りすぐり5名の中でも群を抜いている。
入隊希望を落とすための数々の試験は、バードには少し汗をかく程度のもののようだった。
問答も、頭の良さをひけらかさないが落とされない程度のさらっとした答えをだす。
もう一人の入隊希望者の小柄な黒髪の少年は、試験前に「駄目だ」と親衛隊長のバラーは決めつけた。
数時間前の問答を思い出す。
「理由などありすぎて、どれがどうとはいえんわ。
あげるならば、
一、体ができてない。
二、女の子である。
三、ムハンマド王子が許さない」
言われても、リリアスは必死で反論する。
ここで試験さえもできなかったら、親衛隊に入ることはできないし、三食寝る場所確保が消えてしまう。
リリアスはお金というものを持っていない。
ムハンマドはこれからバラモンの各地に行くようで、彼の側付きの親衛隊となれば、まだ見ぬ世界をみられるではないか!!
という期待も膨らんでいた。
「バラーさん、体ができていないのは認めます。
でも100%のできている方しか入隊できないのであれば、誰もいれないということではないですか!
それに、女の子は駄目といわれますが、既に親衛隊員にいらっしゃるではないですか!
ちなみに僕は男です。
ムハンマド王子は僕は何をしてもよい、自由だとおっしゃられました」
げんなりとバラーはいう。
「では、志望動機はなんなのだ」
「あの、エディンバラの火事の後の、親衛隊の皆様の活動に感銘をうけたのです。
復興、救急支援活動、、、。
それを平時の軍部の役割りであるとして重きを置くのは、国を思う優れた考えだと思いました。
そういう国を思うムハンマド第六王子に、しばらくついていこうと思いました。これで駄目ですか?」
眼を輝かせながらいうリリアスに、バラーはため息をつく。
「しばらくってなあ、、、あのなあ、お前なら別に、親衛隊なんかに入らなくても、ムハンマドと一緒に旅をしたいなら、ムハンマドに頼めばいいんじゃあないのか?」
リリアスは頑なに親衛隊にこだわった。
「僕は、一から生きることを学んで鍛えて強くなりたいんです!」
「どうする?」
バラーは次第に面倒になって、食事をしながらやけに楽しそうに見ていたムハンマドに振った。
「リリアスはわたしの親衛隊員になりたいんだ。
通常は推薦状が要るんだが、それはいいよ。わたしが保証人になる。
試験ぐらい受けさせてもいいんじゃあないか?」
とムハンマドは言った。
試験さえ受けたらかなりの上底を履かせるつもりに違いないと、バラーは思った。
そこで、ムハンマドはリリアスから片時も離れないパリスの諜報員、バードを見た。
既に顔が割れているので、堂々とリリアスの側にいる。
「リリアスが親衛隊になったら、バードはパリスに帰るのか?」
バードは即答した。
「ルージュさまの命令は、リリーを陰日向に守れ!ということでしたので、俺も親衛隊に入って、リリーを守ろうかと」
ムハンマドは豪快に笑った。
「パリスの諜報員がバラモン国の王子の親衛隊になるなんて面白いではないか!?」
ということで、樹海の少年のリリアスとパリスの元諜報部員バードは、エディンバラからの出立まえに、試験をうけることになったのだ。
バードの試験と同時進行で、リリアスの試験も行われていた。
元々田舎の樹海育ちで、豹と遊んで育った彼は、運動神経が取り分け悪いわけではない。
ただ筋肉トレーニングをしたことがなく、このところの生死をさ迷っていたことで、体力がないのだ。
体術は一瞬で組伏せられ、武器は一撃ではたきおとされる。
一方バードは群を抜く好成績である。
二人で点を足して割って合格点だな!
と主張するムハンマドの王族権力乱用の圧力により、リリアスとバードは親衛隊員見習いとなることができたのだった。
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