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第3話 精霊の力
21.王子の密約1
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夕闇に紛れて砦から抜け出す影がある。
馬と一体になった数体は、エディンバラの街へ向かう。
エディンバラの外周を180度、取り囲んで張られたバラモンの陣営は不気味である。
街の出入り口はバラモンの兵によって封鎖されているが、手招きするものがいて隙をすり抜けて街へ入る。
手引きした女はアーシャだ。
彼女は頭まですっぽりフードの4人を目的地の彼女の食堂へ案内する。
彼女の食堂はプライバシーが守られるように個室に区切られている。
料理、従業員ともに質は良い。
入るとこんな物騒な状態ながら、従業員たちは忙しく立ち働いている。
「ノアールがお待ちかねだよ」
案内された部屋に美しく整えた吟遊詩人が待っていた。
「再び会えてうれしいです。ルージュ王子。こうしてみると、正真正銘の王子さまですね」
フードの下は略式ではあるが正装だった。
きらびやかな刺繍がパリスの手工業品の質の高さをうかがわせた。
「それに、若い側近たちですね。はじめまして」
ルージュはザイールとララを紹介する。
最少人数で動くとなるとこの二人となるのが常だ。
攻守どちらも任せられるふたりだ。
ザイールはルージュより2才年上の好青年である。ララはあまり長くはないストレートの髪をひとつ結びにしている。
彼女も若い。
油断なく、唇を引き結んでいる。
軽く握手を交わす。汗ばんだ手のひらは、緊張を隠しきれていない。
「よく来てくれたね。リリアス君」
「こんばんわ、、」
少し頭を傾けるように少年は挨拶をする。おどおどしている様子だ。
いつ戦場になってもおかしくない敵陣の真っ只中に連れてこられたのだから、当然だろう。
平然としいているルージュが特別なのだ。
ルージュはノアールを睨み付けた。
リリアスを安全なところに保護しておきたかったルージュだが、ノアールがリリアスも連れてくるならば、という条件を出して、譲らなかったのだ。
仕方なく、リリアスを同行させてはいるが、腸が煮えくり返るほどの怒りをルージュは感じている。
「本当に奴は来るんだろうな」
今夜はバラモン国王子であり兵を率いるムハンマドに、秘密裏に対面する。
ムハンマドにパリスへ侵略戦争を踏みとどまらせたら成功。
それが出来なければエディンバラとベルラードで戦になる。
戦になれば、美しいパリスは今までのような平和を享受できなくなるだろう。
「もちろん、大丈夫です。
もう数刻でムハンマド王子は来られます。私がお呼びしましたから。
約束通りリリアス君と一緒に来てくださいましたので、できるだけのことをわたしもしましょう」
それから略式正装で決めているルージュ、ザイール、ララをみる。
値踏みするようにみられてルージュは眉を寄せる。
「せっかくなので演出をいたしませんか。王子殿下とお二人はなにか得意な楽器はありますか?もしくは踊れますか?
剣の舞いはなしにしましょう。
、、、なければこれでもたたいてもらいます」
とタンバリンを差し出す。
「リリアス君は私と一緒に歌いましょう。できますね?」
妖艶な笑みをノアールは浮かべた。
馬と一体になった数体は、エディンバラの街へ向かう。
エディンバラの外周を180度、取り囲んで張られたバラモンの陣営は不気味である。
街の出入り口はバラモンの兵によって封鎖されているが、手招きするものがいて隙をすり抜けて街へ入る。
手引きした女はアーシャだ。
彼女は頭まですっぽりフードの4人を目的地の彼女の食堂へ案内する。
彼女の食堂はプライバシーが守られるように個室に区切られている。
料理、従業員ともに質は良い。
入るとこんな物騒な状態ながら、従業員たちは忙しく立ち働いている。
「ノアールがお待ちかねだよ」
案内された部屋に美しく整えた吟遊詩人が待っていた。
「再び会えてうれしいです。ルージュ王子。こうしてみると、正真正銘の王子さまですね」
フードの下は略式ではあるが正装だった。
きらびやかな刺繍がパリスの手工業品の質の高さをうかがわせた。
「それに、若い側近たちですね。はじめまして」
ルージュはザイールとララを紹介する。
最少人数で動くとなるとこの二人となるのが常だ。
攻守どちらも任せられるふたりだ。
ザイールはルージュより2才年上の好青年である。ララはあまり長くはないストレートの髪をひとつ結びにしている。
彼女も若い。
油断なく、唇を引き結んでいる。
軽く握手を交わす。汗ばんだ手のひらは、緊張を隠しきれていない。
「よく来てくれたね。リリアス君」
「こんばんわ、、」
少し頭を傾けるように少年は挨拶をする。おどおどしている様子だ。
いつ戦場になってもおかしくない敵陣の真っ只中に連れてこられたのだから、当然だろう。
平然としいているルージュが特別なのだ。
ルージュはノアールを睨み付けた。
リリアスを安全なところに保護しておきたかったルージュだが、ノアールがリリアスも連れてくるならば、という条件を出して、譲らなかったのだ。
仕方なく、リリアスを同行させてはいるが、腸が煮えくり返るほどの怒りをルージュは感じている。
「本当に奴は来るんだろうな」
今夜はバラモン国王子であり兵を率いるムハンマドに、秘密裏に対面する。
ムハンマドにパリスへ侵略戦争を踏みとどまらせたら成功。
それが出来なければエディンバラとベルラードで戦になる。
戦になれば、美しいパリスは今までのような平和を享受できなくなるだろう。
「もちろん、大丈夫です。
もう数刻でムハンマド王子は来られます。私がお呼びしましたから。
約束通りリリアス君と一緒に来てくださいましたので、できるだけのことをわたしもしましょう」
それから略式正装で決めているルージュ、ザイール、ララをみる。
値踏みするようにみられてルージュは眉を寄せる。
「せっかくなので演出をいたしませんか。王子殿下とお二人はなにか得意な楽器はありますか?もしくは踊れますか?
剣の舞いはなしにしましょう。
、、、なければこれでもたたいてもらいます」
とタンバリンを差し出す。
「リリアス君は私と一緒に歌いましょう。できますね?」
妖艶な笑みをノアールは浮かべた。
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