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第3話 精霊の力
17.水の行方1
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もしくは、バラモンがパリスの水資源を奪いに軍勢を向けるか。
思考を読んでノアールは続けた。
「先程のお詫びに情報をご提供いたしましょう。
わたしはバラモンの王都アルゴンからきました。
バラモンの軍部の動きを見ながら動いています。もうじき軍本体がこちらにきますよ」
悲しく笑う。
「わたしは美しいパリスの都がバラモンに侵略されるのを望まないのです。
一方的な戦ほど悲しい詩はないでしょう?」
ルージュの顔は強張る。
「、、、猶予はどれぐらい」
「おそらく、あと数日でしょう」
パリスの高齢の王の病。
国内を二分する二人の王子の跡目争い。
パリスの軍の実権を掌握している第2王子は現在国内に不在。
バラモンの国王ならば、この機を逃さず今にも攻めいり、深刻な水不足を強引に解消しようとするのも考えられる選択肢だ。
バラモンは遊牧民の国であり、地道に灌漑施設を整えたり、水の確保に近隣諸国に協力を仰ぐよりかは奪うことも躊躇しない気質であった。
そのため小競合いがパリスとバラモンの間でたびたび起こっている。
そもそもなのだが、ルージュは王位を継ぎたいとは思ったことがない。
代替わりの約定を交わしに国を空けたのも、兄王子の代理としてだった。
樹海に向かう直前では、バラモンの動きは報告されていない。
雨が例年になく少ない報告は受けていたが、エディンバラのような大きな街のオアシスが干上がるとは予測していない。
早くエディンバラとの国境の砦に守りの兵を配置しなくてはならない。
バラモンのパリス侵略の危険を知らせるすべは咄嗟に思い付かない。
自分の居場所さえまだ知らせていない。
少しのんびりしすぎたことをルージュは悔やまれた。
(、、、か、殿下、、ルージュ殿下!?わかりますか??)
(、、、念話か。バードか。遅いっっ。)
念話は声を使わない会話だ。
直接頭に語りかける。
バードの念話の範囲は5メートルぐらいだ。念話がどれぐらい離れたところからできるかは、風の精霊の加護によると言われている。
バードは隣の部屋にルージュと背中合わせにいる。
バードは密偵で諸国の動きをさぐっている一人だ。
年若いが仕事はできる。
バードの他にも加護を持つ能力者を数名パリスは召し抱え、主に軍部で活用している。
古の時代には加護を皆が使え、国を越えても会話ができ、過去の出来事をその場にいるように見ることができ、星間旅行もできたという。
樹海に残された王国の黄金時代の話だ。
今は非常にまれな能力となっている。
(申し訳ありません。殿下の様子がいつもと違っておいででしたので、面白、、いえ、声をかけるのがはばかれておりましたが、そうはいっておられなくなりまして)
(いつから私に気がついた)
(、、、エディンバラにラモス商人の馬車で着かれたときから)
(そうか。どうなっている?)
(バラモンのムハンマド王子率いる1500の一行がエディンバラにじき到着します。パリスでは、アルザス将軍が国境の砦に陣を構えました。
このままでは、ここは戦場になります。
殿下も早くここを出立し、王都に戻ってください)
(アルザス将軍に水の救援物資を用意させることは可能か?エディンバラの3000人の危機を救えるか?
用意に最低何日必要だ?兄への報告は後でも良い。議会を通すと時間が懸かりすぎる)
バードから少し間があり、返事がくる。
(一時的な水の馬車での移送は、馬車と人の準備などで最短で2日。
アルザス将軍へ今から伝令鳥を飛ばします。長期的に水路を通すのに、数ヶ月~1年はかかるかと。
ですが、大がかりな異国への水路工事は軍部の独断ではできかねます。
外交と内政にかかわります。
脅しに屈して、人的費用物資ともにすべてパリス負担は考えられません)
(そうか、わかった。ひとまず飲料可能な水の一時的な援助を進めてくれ)
(わかりました。我が忠誠は殿下に)
「ルージュ王子?」
「パリスはいつでもエディンバラの窮地を助ける体制を整える。
いったんバラモン軍を引かせることはできないか?」
「どういうことです?」
「戦争を回避したい。
バラモン軍部の司令官ムハンマド王子にパリス王子として、謁見を要請する」
思考を読んでノアールは続けた。
「先程のお詫びに情報をご提供いたしましょう。
わたしはバラモンの王都アルゴンからきました。
バラモンの軍部の動きを見ながら動いています。もうじき軍本体がこちらにきますよ」
悲しく笑う。
「わたしは美しいパリスの都がバラモンに侵略されるのを望まないのです。
一方的な戦ほど悲しい詩はないでしょう?」
ルージュの顔は強張る。
「、、、猶予はどれぐらい」
「おそらく、あと数日でしょう」
パリスの高齢の王の病。
国内を二分する二人の王子の跡目争い。
パリスの軍の実権を掌握している第2王子は現在国内に不在。
バラモンの国王ならば、この機を逃さず今にも攻めいり、深刻な水不足を強引に解消しようとするのも考えられる選択肢だ。
バラモンは遊牧民の国であり、地道に灌漑施設を整えたり、水の確保に近隣諸国に協力を仰ぐよりかは奪うことも躊躇しない気質であった。
そのため小競合いがパリスとバラモンの間でたびたび起こっている。
そもそもなのだが、ルージュは王位を継ぎたいとは思ったことがない。
代替わりの約定を交わしに国を空けたのも、兄王子の代理としてだった。
樹海に向かう直前では、バラモンの動きは報告されていない。
雨が例年になく少ない報告は受けていたが、エディンバラのような大きな街のオアシスが干上がるとは予測していない。
早くエディンバラとの国境の砦に守りの兵を配置しなくてはならない。
バラモンのパリス侵略の危険を知らせるすべは咄嗟に思い付かない。
自分の居場所さえまだ知らせていない。
少しのんびりしすぎたことをルージュは悔やまれた。
(、、、か、殿下、、ルージュ殿下!?わかりますか??)
(、、、念話か。バードか。遅いっっ。)
念話は声を使わない会話だ。
直接頭に語りかける。
バードの念話の範囲は5メートルぐらいだ。念話がどれぐらい離れたところからできるかは、風の精霊の加護によると言われている。
バードは隣の部屋にルージュと背中合わせにいる。
バードは密偵で諸国の動きをさぐっている一人だ。
年若いが仕事はできる。
バードの他にも加護を持つ能力者を数名パリスは召し抱え、主に軍部で活用している。
古の時代には加護を皆が使え、国を越えても会話ができ、過去の出来事をその場にいるように見ることができ、星間旅行もできたという。
樹海に残された王国の黄金時代の話だ。
今は非常にまれな能力となっている。
(申し訳ありません。殿下の様子がいつもと違っておいででしたので、面白、、いえ、声をかけるのがはばかれておりましたが、そうはいっておられなくなりまして)
(いつから私に気がついた)
(、、、エディンバラにラモス商人の馬車で着かれたときから)
(そうか。どうなっている?)
(バラモンのムハンマド王子率いる1500の一行がエディンバラにじき到着します。パリスでは、アルザス将軍が国境の砦に陣を構えました。
このままでは、ここは戦場になります。
殿下も早くここを出立し、王都に戻ってください)
(アルザス将軍に水の救援物資を用意させることは可能か?エディンバラの3000人の危機を救えるか?
用意に最低何日必要だ?兄への報告は後でも良い。議会を通すと時間が懸かりすぎる)
バードから少し間があり、返事がくる。
(一時的な水の馬車での移送は、馬車と人の準備などで最短で2日。
アルザス将軍へ今から伝令鳥を飛ばします。長期的に水路を通すのに、数ヶ月~1年はかかるかと。
ですが、大がかりな異国への水路工事は軍部の独断ではできかねます。
外交と内政にかかわります。
脅しに屈して、人的費用物資ともにすべてパリス負担は考えられません)
(そうか、わかった。ひとまず飲料可能な水の一時的な援助を進めてくれ)
(わかりました。我が忠誠は殿下に)
「ルージュ王子?」
「パリスはいつでもエディンバラの窮地を助ける体制を整える。
いったんバラモン軍を引かせることはできないか?」
「どういうことです?」
「戦争を回避したい。
バラモン軍部の司令官ムハンマド王子にパリス王子として、謁見を要請する」
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