樹海の宝石【1】~古き血族の少年の物語

藤雪花(ふじゆきはな)

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第2話 辺境の街 エディンバラ

7.ラモス商人

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二人のバラモン国の辺境の街エディンバラへの道行は、親切な商人により快適旅行となった。

お腹の張り出した、いかにも裕福な商人は、辺境の街へ絹織物などを買い出しに行き、帰りにはエディンバラに集まる異国の品を持ち帰るという。

ラモス商人はエディンバラに続く街道を歩く二人を、初めは平民の行きだおれ寸前の二人組と思った。お金至上主義のラモスは普段は弱者を助ける活動など進んですることはないのだが、馬車が彼らの横を通った時に、自分の考えを180度変えたのだ。

身なりは旅をする為に快適さを追求したような、質素なものだ。人目に留まらないように、標準的なものを選んだような印象を受ける。
ただ砂漠の埃を避けるために被っているフードから覗く青年の白皙の美貌に目を奪われたのだ。
バランモンの民のほとんどが、強い太陽の光りに焼かれた肌色で、白い肌には憧れをいだいてしまう。

背の高い青年は同じくフードの少女を抱えていた。小さな方は見るからに気分が悪そうだった。

だから声をかけたのだ。二人の様子ではこちらからの親切な提案を断ることはないだろう。そして、しばし異国の美青年と楽しく馬車時間を過ごせるのだ。
かくして、ラモスは眼福の午後を過ごせることになった。お喋りはもっぱらラモスの一方通行ではあったが。

「お連れさんはどこか悪いのかい?」
訳あり逃避行の予感に年甲斐もなくうきうきする自分がいた。
小柄な少女は黒髪で目を閉じていた。
まだあどけなく若い。肩で切られた珍しい黒髪に、逃げ出した奴隷かもと想像が膨らむ。
出入りの館に黒髪の愛玩奴隷がいたかなと、思い巡らす。自分が彼女の主人だったら、黒髪を腰まで伸ばさせるのに、と夢想する。

「ただ悪いものを食べただけだ。乗せていただいて感謝する。、、、彼の分も礼をいう」
彼?
少女のように感じたが、とラモスは引っ掛かったが更には質問を加えなかった。
ラモスは美貌の客人に如何に身の上を話させようと、笑顔を向けた。

ルージュはエディンバラでは到着早々に、過剰に別れを惜しむ商人に丁寧にお礼を述べ、振り切った。エディンバラで滞在するのならと、自分の定宿を勧めたり、食事に誘ったり、なにかとルージュに親切にしたがるのだ。
商人の親切は、相当の見返りを要求されるのが必須だ。ルージュは過分な好意を断るのも慣れている。

ラモスの目的が果たされることはなかった。
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