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第1章 ソロキャンパー、大地に立つ(異世界の)
15、ソロキャンパー、海を楽しむ。
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結果として宿は空いていなかった。
大人数だが今日も野営、いいんだけどね、好きだし。
てなことで、いつものようにサイトの構築。今回は砂浜、ビーチである。
砂浜はちょっと厄介で、タ―プを設営する時にペグがさせない。
なので大きめの石を砂に埋めたり、流木を十字に組んでペグの代わりにするんだけど、穴掘りがめんどくさいのだ。嫌いじゃないけど。
人数も増えたので、リゼルさんが持ってきていた天幕を拝借。
これ、要するに地球でいう『モノポールテント』なのだ。こいつを先に設営。
昨今流行りの『ディルノスク』のキャンバステントみたいでちょっとオシャンティー。
さっきも言った様にペグの代わりにロープで結んだ石で固定。だいぶ大きめの石で固定したので潮風で飛ぶ事は無いだろう。
で、そこに重ねる様にタ―プを張る。『オガワ張り』ってやつだね。
勿論風の抜けを考え潮風に負けないサイトを構築したさ。天気は晴れ、いまは地球時間で15時過ぎくらいだろうか。
火床まで準備した僕はある物を取りに行く。
「ジャジャーン!つ~り~ざ~お~」
どこかの猫型ロボットの真似をしながら釣竿を掲げる。
宿に売ってあったのだ。道糸やハリス、釣り針なんかとセットで大銀貨3枚。
狙うのは近くの磯。釣りやすい根魚を狙う。
ガラカブ(僕の住んでる地域では「カサゴ」の事をこう呼ぶ)に近い魚がいるんじゃないかと思ってさ。カワハギみたいのがいればもっといい。
食べられるかどうかは「サーチ」をかけてみれば分かるみたいだし、気楽に頑張ろうっと。
****
「お、また釣れた!」
7匹目だ、見た目は普通のカサゴに近いけれど色が青い。さっきも釣れたので一応サーチをかけたら「青カサゴ:食用・美味」と出た。
日本語に翻訳された名前は見た目のままだった。
他にも「クロハギ:食用・美味」だったり、「ニセベラ:食用・不味い」や、「ラルフグ:食用不可・猛毒・痺れる」が釣れた。
で、不味いらしい「ニセベラ」と、猛毒らしい「ラルフグ」は逃がしたさ。「ラルフグ」なんて持ったらホントに少し痺れたからね!
「釣れますか?」
「! エッ!?」
驚いて振り向くと青髪の男が立っていた。
釣りに集中していたとはいえ、気配を感じることなく声をかけられたのだ。
「釣れますか?」
「ま、まあ、そこそこですねぇ。夕飯のおかずになる位には釣れました」
「そうですか、今の内に楽しんでくださいね」
「?? そ、そうですね」
「それでは・・・、はぐれ人君」
「は、はい。失礼します」
最後の方は良く聞こえなかった。
それにしても気配が薄い男の人だった、ゆ、幽霊かな?
・・・それはないか。
「おお!?また来た!で、デカいっ!」
****
皆の夕飯分は釣れたのでサイトへ戻ることにする。途中の岩場にムール貝に似た貝がいたのでサーチ。
「黒鱗貝:食用・美味」10枚程採取する。
・・・これは、あれが作れるかな?
でも、パンがないな。「タック」のフライパンで代用するか。
今日のメニューを考えながらサイトに戻ると、皆は浜辺で遊んでいた。
!?!?
「え?ちょっと?なんで皆そんな恰好してるの?」
「「え?なにがですか~?」」
皆が皆、肌着、というより下着である。
確かに今日は暑かった、初秋に良くある夏日和だった。だからといって、年頃の女性達がこんなんで良いのか?いや良くない。
うん、これを止めるのは良くないな。僕の健全な精神に良くない。断じて良くない!
・・・眼福眼福っと。
アイーシャもタラちゃんも素晴らしいものをお持ちである。レッドアイは少々控えめだが肌の色も相まって中々に扇情的、リゼルさんは・・・希少価値だね、うん。
素晴らしい光景をバックに僕は夕飯の準備に取り掛かる。
今日はシーフード、主菜は2種類だ。
*********
【1品目:異世界の魚介を使ったパエリア】
材料:水2カップ・米2カップ、ボア肉100グラム程度、青カサゴ3匹・黒鱗貝5枚
トマト缶1缶、異世界の野菜類、にんにく1片(みじん切り)
オリーブオイル適量(多めが良い)、サフラン0.5g、塩コショウ適量・コンソメ
1、フライパンやパエリア鍋を火にかけて熱し、オリーブオイルを入れて広げます。
2、ボア肉を入れて塩コショウし、色が付く程度に炒め、いったん取り出します。
3、青カサゴ・黒鱗貝を入れて塩コショウし、色が付く程度に炒め、いったん取り出します。
4、オリーブオイルを足し、にんにくを入れて焦がさない程度の弱火で炒めます。
5、異世界の野菜を入れて中火で炒めます。
6、米を入れて炒めます。(インディカ米)
7、トマト缶と水、コンソメを加えます。
8、沸騰してきたら焦げないようにかき混ぜながら、サフランを加えます。
9、お米が半透明になってきたら海老とボア肉、青カサゴ、黒鱗貝をきれいに並べます。
10、15分から20分程度、様子を見ながら、スープが無くなるまで中火にかけます。
11、火を止めてからアルミホイルやフタをかぶせて5分程度蒸らして、できあがり。
*本来ならば鶏肉を使いますが、今回はなかったのでボア肉。
*インディカ米を研がずに使うことで、べちゃつかないように。
*イカやエビがベストですが、今回はなかったので青カサゴ。
*ブイヨンがなかったので、今回はコンソメ。
*********
次は・・・。
*********
【2品目:異世界の魚介で作る贅沢アクアパッツァ】
材料:モッコロ鯛1匹、クロハギ2匹、黒鱗貝5枚
にんにく2片(みじん切り)、白ワイン150cc、オリーブオイル大さじ2
異世界の野菜類、ハーブ類
1、モッコロ鯛に塩胡椒をふって下味をつけておく。
2、焚火の上にダッチオーブンみたいな鍋を置きオリーブオイル大さじ1を熱し、鯛の両面をかるく焼く。
3、一度鯛を取り出し、オリーブオイル大さじ1を加えてにんにく、加えて弱火で炒める。香りが出たら異世界玉 ねぎを加えてさっと炒める。
4、鯛を戻し入れ、周りに黒鱗貝と他の野菜とを並べ、白ワインを注ぎます。アルコールを飛ばし、蓋をして弱火 で黒鱗貝の口が開くまで20分くらい蒸し焼きにする。
5、塩胡椒で味をととのえて出来上がり。
*アンチョビがあればベスト。手順3で使いましょう。
*本来なら魚は1匹ですが今回は多目に使います。
*********
今回は、公都で調達した野菜やワインが大いに役立ってくれた。
ちなみにモッコロ鯛は最後に釣れた魚、緑と紫のボーダー柄だった。もちろん「食用・美味」色はともかく大物だったさ。
併せてボア肉をステーキにする、大喰らいの肉食系がいるからね。
やはりタラちゃんの『無限収納』はとても便利、量を気にせずに持ち運べるというのもだけど、生ものが腐らない、これがすごくいい。
「皆~!御飯が出来ますよ~!!」
そう呼びかけると、浜辺で遊んでいた皆がそのままの格好で帰ってくる。
「ちょ、ちょっと何か着てください皆さん!!」
「? なんですかぁ?」
『『なんでじゃ?』』
いや、なんでじゃなくて!
「その恰好でご飯食べちゃうんですか!?」
「え?いけないんですかぁ?」
「あたしも普通だと思うけど、ねえリゼルさん?」
「ええ、そうですね」
『『・・・ユズル、さてはお主・・・クフッ』』
イタズラを思いついたような顔でタラちゃんが笑う。
『『のう、ユズルよ』』
すっと、腕に柔らかい部分を押し付けてくるタラちゃん。圧倒的な質量が僕を襲う。
「ちょ、ちょ、ちょちょちょっと!」
『『おや?いきり立っとるようじゃの?クフフッ』』
ナニがじゃ!じゃなくて!
「それ以上イタズラしたらご飯抜きますよ!!」
タラちゃんがスッと腕から離れる。ちょっと名残惜しいがそこは我慢だ!
『『アイーシャよ、ちょっと来い』』
「なんですかぁ?」
ヒソヒソ話が始まる。
『『今のかんじ・・・ユズ・・・思い切っ・・・いけ・・・と』』
「そ・・・ですか・・・なら・・・思いき・・・押し倒・・・」
また不穏な言葉が聞こえるが、とにかく夕飯だ!
****
どうも、こちらの世界の人の羞恥心は地球に比べて薄めみたいだ。下着程度なら見られてもかまわない感じ。
直接肌に触れるのはやっぱり恥ずかしいみたいだったけどね。
今は皆から少し離れた場所で、コーヒーと合わせて久しぶりの煙草を嗜んでいる。
気分を落ち着かせる儀式のようなものだ。別に他の物でもいいだろうけど、何となく揺れる紫煙を見つめるのが好きなので結局煙草を燻らせる。
「はぐれ人と冒険、そして幸せか・・・」
多分アイーシャがいう幸せは結婚なのだろう、違うかもしれないが。
周りの反応を見るにそんな感じだ。
アイーシャは素敵だと思う。一目惚れするほどの容姿だし、性格もいい。
ただ、まだ深い想いを抱くほどは付き合ってきていないし、何よりここは異世界だ。
実際日本に未練があるかと言ったらそこまである訳ではない、家族は5年も前に事故で死んだ。唯一の肉親だった伯父さんはこちらに骨を埋めた様だ。
それでも、まだ戻れるならば戻りたいという思いがあるのだ。同じくらいこの世界にも居たいと思うのだけども。
どちらにしても、僕がここに呼ばれた原因を突き止めないと前に進めない気がしている。
だからまずは原因探し、原因が分かってどちらの世界にも問題が無いようなら、こちらに骨を埋めてもいいかなと考えている。
そこまで進めば自分からのアイーシャへの想いも深まるかもしれないしね。
「まあ、なるようになるかな・・・っと」
明日は始発の船で海を渡る予定だ。
今日も早く寝ないとね。
日本の夜空より遥かに濃い星空と、その星空に浮かぶ三つの月を眺めながらそんな事を思うのだった。
『『ッ!! いかん!!避けるのじゃっ!ユズル!!』』
・・・え?
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