神速艦隊

西太平洋戦争

トラ・トラ・トラ

12月4日には一気にハワイ海域を南下しハワイを目指した。
そして12月8日午前1時30分に所定の位置に到達し塩沢は第1次攻撃隊の発艦を命令した。
第1次攻撃隊は艦戦144機、艦爆159機、艦攻175機の計478機であり総隊長は淵田三津雄少佐だった。
1時30分と言ってもそれは日本時間でありハワイではすでに薄明の時を迎えていた。
「皇国の興廃、この一戦にあり…」
塩沢は無意識に天城の艦橋でつぶやいていた。


「総隊長！ハワイが見えてきました！」
偵察手の言葉に淵田は大きく頷く。
「せや、ついに来たで！」
天候は快晴とは言い難かったがそれでも晴れはしていた。
この時、ハワイに配備されていたレーダーの1つがこの大編隊を捉えていた。
だがアメリカ海軍の懐に飛んでくる敵機がいるとは常識的に考えて思われなかった。
そのため”レーダーの不調”ということでレーダー員は片づけた。
そうしている間に淵田率いる第1次攻撃隊は真珠湾に迫っていたのである。


日本時間12月8日午前8時。
日本政府はアメリカに対して宣戦布告を叩きつけた。
これは事前に決められていたことだった。
またこの時にはすでに攻撃隊は真珠湾上空に到達していた。
「隊長！8時になりました！」
「そうか！じゃあいっちょ、かましたれ！」
偵察手は頷き攻撃隊全機に対してト連送（全軍突撃）を送信。
またここで奇襲の成功を確信し”トラ・トラ・トラ”を連合艦隊旗艦天城や第1航空艦隊旗艦迅鷲に打電した。


12月8日（日本時間）時点で真珠湾には太平洋艦隊の主力が所狭しと停泊していた。
具体的にはアイオワ級戦艦3隻（アイオワ、ケンタッキー、ニューハンプシャー）、サウスダコタ級戦艦2隻（モンタナ、ノースカロライナ）、レキシントン級巡洋戦艦4隻（レキシントン、コンステレーション、サラトガ、ユナイテッドステーツ）、ジョージア級戦艦4隻（イリノイ、コネチカット、バージニア、バーモント）、ニューヨーク級戦艦1隻（ニューヨーク）、ペンシルベニア級戦艦（ペンシルベニア、アリゾナ）
、レンジャー級空母4隻（レンジャー、ランドルフ、キアサージ、プリンストン）、ヨークタウン級空母2隻（ヨークタウン、ホーネット）以下補助艦42隻であった。
この光景を見た淵田は”敵ながら壮観”と述べたという。


午前8時4分。
山城所属の九九式艦爆9機が真珠湾上空で反転。
急降下態勢に入りそして500㎏徹甲爆弾を投下した。
この瞬間、日米両国は後戻りのできない地点に到達した。