30 / 104
第2次欧州大戦
第3艦隊の派遣
しおりを挟む
「やはり始まってしまったか…」
堀は残念そうに息を吐く。
すでに日本もドイツに宣戦布告しており案の定イギリスから艦隊派遣の要請が来ていた。
だがそれは先の欧州大戦のようにイギリス本土への要請ではなく地中海だった。
地中海に位置するイタリアがこの戦争でドイツ側で参戦する可能性が高かった。
ヴェルサイユ条約での厳重な建艦規制を受けていたドイツよりも制限なく建艦を続けてたイタリアの方が脅威であるという考えの元イギリスは地中海に応援を要請したのだ。
第3艦隊が出撃準備を整えている頃、欧州ではポーランドが物の1か月で降伏してしまった。
ただそれ以降は特段戦闘と呼べるものはなくまやかし戦争が続くことになる。
「君に第3艦隊を預ける。頼むぞ」
軍令部の総長室で永野は塩沢にそう言った。
「はっ!」
すでに海軍大臣である米内光政からは塩沢の第3艦隊司令の人事に承諾をもらっており永野は最後の発破として塩沢を総長室に呼び出したのだ。
前任の及川古志郎中将は軍令部第2部部長に転出していた。
そしてそれに押し出された形で堀は軍令部総長の女房役である軍令部次長に就任した。
また山本は米内の元、海軍次官となっていた。
「必ずや皇国に勝利を届けて参ります」
塩沢は確固たる決意を露わにした。
第3艦隊は呉から大々的に出撃した。
呉では町を挙げて第3艦隊を送り出した。
そして政府は新聞各社にこのことを翌日の朝刊の1面に飾らせた。
第3艦隊の出撃と言うこと自体がドイツやイタリア、そして最大の仮想敵であるアメリカへのプロパガンダとなるのだ。
「参謀長、海鷲達はどうかね」
塩沢から問われた大西瀧次郎少将は満面の笑みで答える。
「戦える時を今か今かと待っております!」
大西自身が飛行機乗りであり母艦搭乗員と気心が通じていた。
「それは良いことだ。今日にも酒をもって奴らの元に出向くことにするか」
「中将が酒を飲みたいだけでは?」
塩沢はバツが悪そうな顔になった。
「そんなことは…ない」
1939年11月13日にはスエズ運河に差し掛かかった。
寄港予定はマルタ島のバレッタ港だった。
元々はフランスのマルセイユであったがイタリアが参戦した場合に攻撃にさらされる可能性があり変更された。
「地中海というのは良いところだな」
そう言うのは慧翔飛行地長である江草隆繁だった。
彼は飛行甲板で海をぼーっと見ていた。
まだ地中海は平和ではあるがいつここが戦場になるか分からない。
江草はそのことを心に留めつつ再び海を見つめた。
堀は残念そうに息を吐く。
すでに日本もドイツに宣戦布告しており案の定イギリスから艦隊派遣の要請が来ていた。
だがそれは先の欧州大戦のようにイギリス本土への要請ではなく地中海だった。
地中海に位置するイタリアがこの戦争でドイツ側で参戦する可能性が高かった。
ヴェルサイユ条約での厳重な建艦規制を受けていたドイツよりも制限なく建艦を続けてたイタリアの方が脅威であるという考えの元イギリスは地中海に応援を要請したのだ。
第3艦隊が出撃準備を整えている頃、欧州ではポーランドが物の1か月で降伏してしまった。
ただそれ以降は特段戦闘と呼べるものはなくまやかし戦争が続くことになる。
「君に第3艦隊を預ける。頼むぞ」
軍令部の総長室で永野は塩沢にそう言った。
「はっ!」
すでに海軍大臣である米内光政からは塩沢の第3艦隊司令の人事に承諾をもらっており永野は最後の発破として塩沢を総長室に呼び出したのだ。
前任の及川古志郎中将は軍令部第2部部長に転出していた。
そしてそれに押し出された形で堀は軍令部総長の女房役である軍令部次長に就任した。
また山本は米内の元、海軍次官となっていた。
「必ずや皇国に勝利を届けて参ります」
塩沢は確固たる決意を露わにした。
第3艦隊は呉から大々的に出撃した。
呉では町を挙げて第3艦隊を送り出した。
そして政府は新聞各社にこのことを翌日の朝刊の1面に飾らせた。
第3艦隊の出撃と言うこと自体がドイツやイタリア、そして最大の仮想敵であるアメリカへのプロパガンダとなるのだ。
「参謀長、海鷲達はどうかね」
塩沢から問われた大西瀧次郎少将は満面の笑みで答える。
「戦える時を今か今かと待っております!」
大西自身が飛行機乗りであり母艦搭乗員と気心が通じていた。
「それは良いことだ。今日にも酒をもって奴らの元に出向くことにするか」
「中将が酒を飲みたいだけでは?」
塩沢はバツが悪そうな顔になった。
「そんなことは…ない」
1939年11月13日にはスエズ運河に差し掛かかった。
寄港予定はマルタ島のバレッタ港だった。
元々はフランスのマルセイユであったがイタリアが参戦した場合に攻撃にさらされる可能性があり変更された。
「地中海というのは良いところだな」
そう言うのは慧翔飛行地長である江草隆繁だった。
彼は飛行甲板で海をぼーっと見ていた。
まだ地中海は平和ではあるがいつここが戦場になるか分からない。
江草はそのことを心に留めつつ再び海を見つめた。
13
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。

連合艦隊司令長官、井上成美
ypaaaaaaa
歴史・時代
2・26事件に端を発する国内の動乱や、日中両国の緊張状態の最中にある1937年1月16日、内々に海軍大臣就任が決定していた米内光政中将が高血圧で倒れた。命には別状がなかったものの、少しの間の病養が必要となった。これを受け、米内は信頼のおける部下として山本五十六を自分の代替として海軍大臣に推薦。そして空席になった連合艦隊司令長官には…。
毎度毎度こんなことがあったらいいな読んで、楽しんで頂いたら幸いです!
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる