神速艦隊

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海軍のデッドレース

工業製品の規格化

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伏見宮は東京に帰還するや否や山本権兵衛の元に向かった。
「ということでありまして…」
伏見宮の話を聞いた山本権兵衛も頭を悩ませたが言った。
「中島君は工業製品の規格化さえできれば液冷エンジン搭載機の運用は可能と言ったのだな?」
「はい」
「ならやるしかあるまい」
山本は決意を固めた。


工業製品の規格化という問題は長らく議論されていた。
だが今日までこの目標が達成されていないのは生産現場が機械化されていないからだった。
日本の工業製品の大半が町工場などが下請けしておりそれは職人の手によって製造されていた。
そのため品質が安定しないのだ。
ならば機械を導入すれば解決かと言うとそうでもない。
機械を導入するには少なくない金がかかる。
その金をどこからひねり出すのか。
これが最も難しい問題であり長らく達成できなかったのだ。


「工業製品の規格化ですか…是非やりましょう!」
高橋是清大蔵大臣は山本から話を聞いた刹那にそう言った。
「だが金はどうする?我々は東京の復興にも金を使わねばならない」
これを聞いた高橋は少し考えて言った。
「でしたら、財閥にその金の全てとは言いませんが半分を拠出させては如何でしょうか?」
これに山本は興味ありげに発言を促す。
「財閥もやはり工業製品の規格化を望んでいます。質が安定した工業製品が機械で大量生産されれば自ずと製品の値段は下がり物が売れるようになる。そうなれば財閥はさらなる利益を得られるでしょう」
「なるほど…よし!では私直々に各財閥の元に出向いてこのことを言ってみよう」
山本はすぐに日程を調整し始めた。


各財閥は総理の直々の要請を断ることは出来なかった。
というよりも拒絶する理由が無かった。
工業製品の規格化は自分たちにも利益があるからである。
もしこれが”財閥が全額負担”であったならば財閥に拒絶理由が出来たかもしれないが現実は半分は国が負担するのだ。
これにより日本全国の工業製品は徐々に規格化されていくことになる。


山本の仕事は財閥への働きかけだけではなかった。
半分とは言えど機械化への金は膨大である。
これを補うために何かの予算を削る必要があった。
その筆頭が陸海軍であった。
海軍に関してはすでに大型艦の建造を行わないと決定しているためこれ以上は求めなかったが陸軍はかなりの削減が行われた。
当然陸軍からの反発が出たが陸軍にとっても工業製品の規格化は新型戦車や野砲などを開発するにあたり好都合であり陸軍はこれを飲んだのである。
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