神速艦隊

新八八艦隊計画

大戦争終結

その後の大戦争はアメリカの参戦もあり協商国がじわじわと優勢になっていった。
だが1918年にロシアもとしソビエト臨時政府が降伏しドイツ帝国は最後の攻勢作戦を西部戦線で行った。
この攻勢作戦は初期こそ成功を収めてパリまで80㎞地点まで迫ったもののアメリカ軍が本格的に前線に現れたことにより攻勢が頓挫。
すでに多大な損害を被っていたドイツ軍は急激に弱体化していき協商国による反転攻勢が始まると続々と撤退。
すでにドイツ陸軍は瓦解状態であった。
この惨状にドイツ帝国皇帝のヴィルヘルム2世は中立国オランダを通じて協商国に停戦交渉を持ちかけるも拒絶された。
そしてキールで水兵が反乱を起こしたことをきっかけにドイツで革命が発生してヴィルヘルム2世が退位。
ヴァイマル共和国が成立しアメリカと講和交渉を開始した。


「終わったか」
伏見宮は戦艦河内艦上でしみじみと言った。
「我が国は山東省の権益と南洋諸島の統治権を確保できる予定です。また技術に関しても航空技術中心に確保するようです。ですが私は航空機会社も日本に誘致すべきだと思います」
副官の思わぬ発言に伏見宮は発言を促す。
「我が国の工業技術はお世辞にも高くありません。ですので戦後は航空産業を厳しく制限されるであろうドイツの航空会社を我が国に誘致し工業技術の底上げを目指すべきです」
伏見宮は頷きその必要性を認めた。
「日本に帰還した後に東郷閣下に掛け合う。そして必ず実現する」


日本海軍は帰還する前にスカパ・フローにてドイツ大洋艦隊の降伏現場に立ち会った。
だがドイツ大洋艦隊は接収されることを危惧し一斉に自沈。
その呆気ない幕引きに日本海軍の面々は面食らった。
「世界大2位の艦隊が一瞬にして海の藻屑になってしまった」
伏見宮も思わず零した。


欧州派遣艦隊が横須賀に帰還すると出撃時の何倍もの群衆が歓声を上げていた。
水兵達は出迎えに来た家族たちと共に家へ帰った。
これは伏見宮の一種の心遣いだった。
またスカパ・フローで恋仲となった水兵達は週に1度は手紙を書きイギリスに送っていた。


「やはり時代は航空機でした」
東郷は開口一番に言われすこし動揺したがすぐに収まった。
「やはりか。それで今日は何のようだ。それを報告しに来ただけじゃないだろう」
「はい。今日はドイツの航空会社を我が国に誘致していただきたいと思い参上しました」
「私は政治家ではないぞ」
「政治家でなくても山本閣下と古くからのお知り合いでしょう。山本閣下にこのことを口利きしていただきたいのです」
東郷は少し悩んで答えた。
「やれるだけのことはやろう